マリアたちの選ぶ途 -Le choix du saint-・2
そうです…氷河期を回避したとしても、聖院地球や痴女皇国地球の根本的問題である「埋蔵資源量が少ない」件は全く解決されないのです。
仮に氷河期を耐えおおせるか、回避できたとしても、今度は人類による文明社会が衰退しない保証は全くないでしょう。
いえ、衰退し絶滅するか、野生動物同然の存在に後退してしまう可能性すらあるでしょう。
では、対策は。
これも、はっきりしています。
氷河期と付き合うか、地球を捨てるかの二択です。
で…痴女皇国側と、聖院側では異なったアプローチで、この問題に対処しようとしているのは以前から双方の金衣血統または痴女皇国皇族はもちろん、幹部の間でも話題に上っていました。
つまり、痴女皇国側が主な実験であり実践地だったのですが、飛躍的な速度で可住候補惑星の表面に居住環境を整えてしまう技術が、既にあたしたちの手にあります。
ルーン大陸…いえ、NB本星で行っている可住面積拡大事業なんて、まさにそれなのです。
で。
今の今まで、NB本星の詳細な地形や地理情報を明確に地球側に公開していなかった理由は、痴女皇国と紐つけされた側のNB本星で、そのルーン大陸と名付けられた陸地を例にとればはっきりしています。
オーストラリア…だけでなく、地球と、瓜二つなのです…。
しかし、この情報を公表すれば、絶対確実に地球、特に連邦地球から移住を希望する方々は「最低でも同じ場所」を希望することでしょう。
または、もっと条件の良い場所や、民族間あるいは勢力間紛争を有利にするための移住候補地をあげてくるはずなのです。
ええ、痴女皇国側の連邦地球で、ある意味では不良債権とされた人々をことごとくグァンタナモやボロブドゥール、あるいは各地の苗床に送り込んで再生あるいは作り替えの対象としていたのは、このためもあったのです。
そして、痴女皇国世界の中原龍皇国や、天竺国を明確に痴女皇国傘下に置いてこなかった事情も。
これら2つの…後に人口では確実に大国となる地域では、そもそも既に文明が相応に発達しておりました。
そして、この2つの地域に共通することがあります。
細かい分類の民族や種族が多数、居住しています。
そして統一を目標に、抗争を繰り返していたのです。
なぜ、仏教発祥の地である天竺で、仏教が普及しなかったのか。
そして、中原龍皇国でも仏教信者が、必ずしも有力勢力とはならなかったのか。
連邦世界では、仏教徒の数は全世界で五億人と言われてます。
しかし、インドと中国の人口を足してみてください。
第三次世界大戦の大惨事の後で数を減らした連邦世界ですら、ざっと、両国だけで二十億人はいるのです。
この二つの国に仏教が普及していれば、少なくとも全世界の仏教徒の数は二桁億人に限りなく近づいていたはずですよね?
そして、キリスト教徒にしても然り。
宗派や管轄教会・教派は違いますよね?
唯一神を崇める預言者が開祖の宗教でも、宗派が存在します。
そして、必ずしも仲良くはないのです…。
つまり、宗教必ずしも「人類の結束を高める絆として有効ではない」と言えると思うのです。
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で、幹部会を終えて、痴女皇国側の面々が帰って行った後の聖院。
アレーゼおばさまに呼ばれたあたしは、マイレーネさんと二人しておばさまの居室に伺います。
「姫様…やはり、ここは聖院規範に則るのが正しき歩みかと存じます…」
「同感だなマリア…痴女皇国の方針は我ら聖院とは似て異なるもの。向こうの私は向こうの私で、あちらのマリアを支える存在ではあるが、もしも献策を求められれば、やはり無理からに連れて行く必要はないと言うつもりだそうだ」
「まぁ、痴女皇国はその気になれば苗床に放り込んで処理しちゃえますからねぇ」
つまり、現時点での聖院の方針としては…。
まず、こちらの世界と繋がっている方の連邦地球については、聖院地球同様、冷えるに任せるつもりなのです。
そして、この聖院地球についても、もちろん、氷河期を食い止めるような手立ては打たない方針です。
では、人についてはどうするのか。
仮に、聖院規範の通りに「助けを求むるをこれ助くべし」としても、助けて欲しいという人の数が多すぎる場合は、どうすれば良いのか。
仮にNBに連れて行くとしても、そもそも文化や文明水準が違い過ぎるのですよね…。
ただし…これは、黒マリの協力が必要なのですが、なんとかする方法はあります。
なんとかできます。
ただ…聖院地球が独自の道を進む、という方針からは全力で逸脱するのが悩みの種なのです。
(確かに聖院世界と痴女皇国世界で共通して存在する人物なら苗床に溶かして融合すればさ、1人の人間としてニコイチで再生できるぜ?だけど数億の人間を一度に処理できるかってぇと…その案を実施するにしてもさ、時間をかけてやるしかないだろ…)




