うつされた学園番外編・その名はサンジェルマン・11
(それと、だ…)
声を潜めたかのように心話を伝えてくる、ロッテ。
(マリア様に繋いで頂いているから聞いておられるとは思うが、お前、あのサン=ジェルマンって御仁、どう思う)
(まぁ、私としては言ってること、全て信じられるかと言えば…ほら、ミサキ事件の当時の一件があったでしょう。あの当時のサン=ジェルマン氏の発言と、今の話に食い違いがないかと言えば、ほら)
https://ncode.syosetu.com/n6615gx/73/
ええ、雅美さん経由で伺いましたよ。
あの人物は、信義に値するのかを。
(ええとね、発言じゃなくて結果。あのおっさんの提供物や、こちらの依頼した件の成果で判断して。あれの言ってることを一から十まで真に受けたらえらい目に遭うから)
やっぱり。
これはもう、私ではなくマリア様経由の方がぜってーに、ぜってーに、ぜってーに間違いがないと思うのです、仮にあのサン=ジェルマンという御仁と交渉する何かしらの出来事が起きたとしても、ですよ。
(でもさぁ、仮にイリヤさんやロッテさんに聞くんだけどさ、あたしが詐欺師の部類だったとしたらどうすんのよ)
マリア様。
それ、愚問です。
(えええー、な、なんでよ…)
(だってマリア様自らおっしゃられたじゃないですか。サン=ジェルマン氏なら当人の言動じゃなくて成果で判断した方がいいって…)
つまり、繰り言百万よりも、我らリュネならリュネに対して頂いた施しの中味で、どういう人となりなのかを決めるべき。
(そりゃマリアちゃん、リュネの人ってリアリストばかりと思うわよ…そもそも騙して何かを得られるかっていうと、考え込むものがあるわよねぇ)
(ま、それはあたしらだって同じだよ…お尻に火がついてるっちゃついてるわけだからね…)
ああ、ちたま人をどうするかって問題、ですよね。
ですが…受け入れられるのでしょうか。
もっと厳しく申し上げますと、私どもなら私どもリュネを制圧支配してでも、自分たちの居場所をお作りになろうとはしないか。
痴女皇国の仲裁がなくば、絶対に共存はあり得ないとすら思えるのですよ…。
(だから切り離しておくんだよね…それとさ、NBでも痴女種による支配体制を整えて行ってるでしょ…ただ、これはあくまでも今後の世界の舵取りのための必要に迫られてやることであって、人類の進歩や発展を阻害しないように慎重に進めてる件なんだよね…)
そうですね…男衆を完全に種付けの獣として扱わずに、一定以上の水準のおつむの持ち主であれば女官と組んで動くようにしておる件とか。
つまり、淫化で申すとクシ帝やクシー、そしてこちらではフレデリック様辺りが該当するかと存じますが、もはや男の体力や体格、地域によっては不要となってしまうのです。
ただ、偽女種になると細かい分類に当てはめておかないと、人間としての男に期待すべき諸々が失われる。
これも、フユキがそうされております関係で、痛いほどよくわかるのです。
可能ならば、偽女種状態にするのは控えた方が良いとも言われておりますしね…。
で、現在は外観可変状態となった秘書娘の全面協力の下で進めております、西方族のだーくえるふ化の実験の件。
秘書娘の息子いわく。
(なるべく母様の面影がある方が…)
と、ゆうとるのですっ。
この要望に愕然としているのが、雅美さん。
「ええええええ…美形のダークエロフの方がいいと思ったのにっ」
まぁまぁ。
で、秘書娘や雅美さんの立ち会いの下で、わしは息子に聞いてみました。
「このイリヤのような身体に近づけること自体はいいのかしら…」
で、このひありんぐに際して、万全を期すためにも本宮のダリア統括騎士団長・副将軍がお越しです。
(肩書きがえらうなっても、仕事あんま変わってへん気がしますねん…)
で、ダリア統括にお願いして、秘書娘の体をその場で変えながら、息子の反応を窺うことになったのです。
ただ、息子には朗報があります。
いわゆる、れんぽう世界のエルフとやら。
あれ、耳、真横に尖っとることが多いですよね。
しかも、めっちゃ長いのもありますし。
ですが、リュネ世界の私どもは斜め上に尖っておる上に、あんなに長くありませんよ、耳。
ま、指の爪ひとつ分くらい尖ってる感じで。
そして、好都合な事にですね。
西方族の耳。
わしらに近いんですよっ、形がっ。
つまり、耳さえちょちょいと形を整えれば、あとは肌の色のみ。
すでに秘書娘、それなりの体型になっとりますからね。
そこで、微調整を入れたり、髪の毛の長さを変えたりなどなど雰囲気をなるべく「だーくえるふ」に近づけながらも、秘書娘の顔を大きく工事せずに完成形にしていこうとなったのです。
で、秘書娘の息子が「うちの母ちゃんが一番」という反応を示したのが、ですねぇ。
体型だけいじったような感じ。
あと、髪型とか。
そそ。
これは私どもリュネ族も同じなのですが、痴女皇国のお世話になってからこちら、見た目で大きく躍進したことがあります。
それは…お化粧です。
と申しますのも、灼熱の戦場で顔に何か塗ったりしていれば、汗で流れたりして大惨事となります。
ですから、緊急危急の事態に備える必要があったリュネでは、すっぴんが基本だったのです。
むしろ、西方族の方が口に紅引いたりとかやってたんですよっ。
が…しかし。
今の痴女皇国の女官は、まずは自分でお化粧するか、してもらいます。
そしてその時に「どう見えているか」という他者の視点の情報を聖環に記録させるとですね。
なぁんと、わしならわしがすっぴんでも、他人様からはお化粧しとるように見えるのですっ。
もちろん、本当に化粧をしても良いのですが、ただし…。
「リュネの人はやめとく方がいい。特に炎剣使う人は…」という勧告が出てもうたのですっ。
ですが、この問題は簡単に解決しました。
そういう事情を抱えた女官でも化粧の効果を発揮させたいという矛盾した状態、リュネと痴女皇国が手を結ぶ遥か前から、問題となっておったのです。
で、黒薔薇騎士団の変装能力や誤認能力を一般女官にも下ろす形で、例えばフユキがわしを見ている際に実際のわしがすっぴんだったとしても、顔面の工芸細工ばっちりのよそ行きイリヤさんという風に見える視覚誤認の術が解禁されたのです。
ただ、この術を用いる際には「必ず一度は実際に化粧しなくてはならない」という問題がつきまといます。
そこで、顔の塗り工事に慣れぬ女官を慣熟者が塗ってやるとか、あるいは本宮に来た際に女官寮2階の美容室に寄ってやってもらうとかいう事になりましてねぇ。
何せ、顔の見栄えをちゃんとしておかないと、淋の森に立った時に困るだの、色々聞かされてますし。
ええ、わしの化粧顔も、フユキには評判がよろしいのです。
そして「ここまで化けられる」という恩恵の評判、リュネ族はもちろん、多少の顔の装いが慣わしであった西方の者にも伝わっております。
なんせ今、西方民は何らかの魔尼派聖母教会の荘園で働くか、さもなくばどこかの施設の専属娼婦となるかという状態。
男受けする必要性があるのですよ…。
で、そのついでに、わしからの要望というか、意見を雅美さんやマリア様にお伝えします。
「しかし、そうなりますと魔尼の尼僧服。これも大概な助平の気分を誘う装いかと存じますが、西方民の働き場所によっては、自由な装いをさせてやっても良いのではないでしょうか…」




