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こんにちわ、マリア Je vous salue, Marie  作者: すずめのおやど


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うつされた学園 -sodródó tanterem-・9

ううむ。


目の前に現れた三人の西方のおなごたち。


貴娼という身分の者ですが、娼婦というよりは、どっかで見た…それも、よく見た姿ですよ。


「とりあえず警務騎士服を着てもらったんだけどね」


ええ、彼女たちは「ルーン大陸の教会に司祭が二人も必要となる」事態を解消するために、その能力をリュネ族の戦士へと近づけるための人体実験に志願したのです。


で、彼女たちが属する貴娼という身分の説明を一応、しておきましょうか。


西方諸族または四族という分類の人ども、かつてはリュネ王国のあった土地の西に住んでおりました。


ものすごくおおざっぱにリュネの世界を分けると、こんな感じになります。


(実際には西方諸族の領土はリュネの倍以上。そして魔族大陸はリュネの地と西方領を合わせた分の半分より大きいくらいです)

 _______  ___

|    |   | |   

|西方族 |リュネ族| |魔族   

|____|___| |___  


そして、この配置でお分かりになりますでしょうか、西方族とリュネ族の力関係。


そうです…西方族は、農耕で得た作物や家畜、リュネに貢納する立場だったのです…。


つまり、リュネ族が堰となり城壁とならねば、一瞬にして魔族に蹂躙されてしまうのが西方族。


一方、戦闘民族とやらに分類されておるリュネ族でも耕作はしておりましたが、その数は西方に比較して圧倒的に少数だったのです。


(更に言うと西方との混血者で戦士の力がいちじるしく低い者はこの農地送りでした…)


あ、そうそう。


リュネ世界でも馬車に該当する「運搬車」を使役することや、農耕に家畜を使うことはやってましたよ。


しかし、それは飛べない西方族の乗り物としたり、あるいは作物やら何やらを運ぶためであって、いくさに使う戦車としては甚だしく不向きでした。


ええ、馬などに牽かせる戦車とやらが過去に存在したこともありましたが、魔族と比較するとのこのこと現れるようなもの。


馬を食い殺されるか、乗員ごと餌として持ち去ってくれと言ってるに等しいようなものだったのです。


ですから、そうした家畜類の使役は西方族や混血者の農奴に任せて、わたしどもリュネの者はいくさを最優先して国の体制を整えておったのです。


ええ。


皆様の世界でいう、人種差別というもの。


リュネの世では避けて通れませんでした。


ですが、だからといって西方を弾圧しておったわけではありません。


いえ、魔族が毎日のように餌を求めて飛んで来る時に、のんきに西方人をいじめておる余裕があるような者は非国民でした。


それよりは、魔族の脅威を目にさせて「リュネの方々に守って頂かねば」という思いを一つにしてもろた方が、よほどお互いのためになるでしょう。


そして実際に、魔族はリュネを標的にするだけではなく、西方族をも標的にしていたのです。


いえ…むしろ、リュネ族の守りがあってなお、積極的に狙っていました。


そりゃ、南米でも他の土地でも、人が家畜を飼っている場所に来て仔をさらっていくとか、あるいは暗黒大陸のように草を食う獣の群れからはぐれたり群れの端にいる獣を襲う獰猛(どうもう)なしろもの、おりますでしょう。


あれ以上に狡智(こうち)に長けた種族なら、弱い西方族を襲わないはずがないのです。


何せ、魔族の飛行速度は私どもリュネの者と変わりません。


痴女皇国の方々に教えて頂きましたが、空襲という飛行機での侵攻に近いものがあったのです。


それも、まずは囮を兼ねて海岸沿いの防砦やリュネ王城付近を襲い、私どもが防衛に戦力を回すとみるや、別働隊を飛ばして来るのです。


そして、西方との境すら時に越えて村々を襲って人を連れ帰るのです。


雅美さんに見せて頂きましたけどね、無限の拳を放つような戦いをしておる物語の中に、人さらい船のようなものを出して人間をさらっている敵…しかも翼があったりするじゃないですか、あれに近い感じの大型魔族を使役して、がっつり(さら)われて行ったりしたんですよ。


ですから、私どもは割と本気で防衛してました。


西方の民の数を大きく減らされては、食い扶持が減りますから。


しかし、強力で速度も速い魔族の侵攻にあっては、なかなか西方全域の防衛に手を回せない事情もあったのです。


そこで、リュネの秘術を用いて西方民の数を旧に復することも行われておりました。


といっても、簡単と言えば簡単なのです。


まずは、リュネの男と西方女を用意して、魔毒抜きのアレをしてもらいます。


そして、孕んだ子の出産や育児を早める魔法というか、魔術を仕掛けるのです。


この魔術、当然ながら痴女皇国の支配下に置かれた後で解析されました。


そして…ぷらんとちゃんばーとかいう、灸場(きゅうば)に置かれた大掛かりな機械仕掛けですとか、あるいは魔族の苗床技術の転用の後では「これやばい。封印しよう」となってしまったのです。


その方法たるや、放射せんとかいう光を当てて、子の成長をうながすため、奇形も生まれやすい危険な方法だという理由で…。


ええ、しくじって、使い物にならない子が生まれたりするのです。


もちろん、そういう子は海岸村送りです。


人としてはまともでなくとも、生きておれば苗床の餌にはなる…のよね、魔王にロッテ。


(だな…お前たちにとっては欠陥品であっても、人は人だ…それに、まともな人生を送れぬばかりか口減らしに惨殺されるような結果よりは、我らの方がよほど苦痛なく始末できたからな…)


そう、魔族は基本、人を食います。


しかし、いくさの場で見境なく人を食われては、当の魔族も困るのです。


そこで、苗床で人を溶かし、滋養を培養するのですよ。


そして、溶けた人は溶けながら生きて魔族として再生されてしまうことも…。


ええ、ロッテの言い分には詭弁(きべん)ってものも入ってると思いますけどね。


とにかく、魔族の方もわしらを焼き殺したり食い殺すような凶暴凶悪な戦い方をする兵隊魔族を一定以下にしておかないと、自分たちが困る事情があったとお考え下さい。


この話を聞いた雅美さんやフランシスカさんは「それはぷろれすの八百長みたいなものだ」という感想を持っておられましたけど、それにしても魔族は割と本気で火炎を吐いたり、強力な四肢の攻撃を放つのです。


ええ、魔族だって、黙って私たちに焼き殺されたり斬り殺されるのは嫌でしょうから、少なくとも兵隊魔族、真剣に殺しに来てました。


ですから、こっちとしても手加減はしておれなかったのです。


魔族を見つけるや遠距離からの炎撃、それも一人ではなく一派の集中攻撃で殲滅しないと、次にはこっちに向かって襲ってきますからね。


そして連射能力のない戦士は次射か三射程度の発炎しかできませんから、後方に後退して回復と魔毒抜き、となったのです。


あー、思い出すなー…わしが聖剣の炎撃を撃ち込んでも殲滅されんように兵力を分散配置してくるから、まずはエマネが爆炎剣で広域に始末しないと、撃ち漏らしがあったんですよねぇ…。


(というかおばさまが聖剣の威力を誤るとこっちも含めて被害甚大なんですっ。ですから向こうは向こうで兵隊の制御役がおるから、そいつをおばさまが狙うとかしてもらわんとですね…)


(ところがよエマネ。実際にはさ、そいつらが陽動部隊で、その迎撃の隙に人さらい魔族が飛んで来てたわけじゃない…だから私は初射初撃の後で魔毒抜いて、後方の西方領付近まで急行して人さらいを止めさせるとかしてたのが常套だったでしょ…)


お分かりでしょうか。


ロッテの性格が良いかどうかはともかく、割と意地の悪い攻められ方してたんですよ、わたしら。


ええ、恨みには思ってませんよ。


当時はお互い、必死だったですからね。


(イリヤは私を認識してたかどうかはともかく、本気で殺しに来てた。間違いなく一撃で殺る威力の炎撃、何度撃ち込まれたか)


(ロッテさん。それ、こっち(リュネ)でも問題になってました。どうせ囮でぜってー本隊が人さらいにどっかから来るのわかってんだから、おばさまもそっちの迎撃のために力を残すべきなんだから手加減して撃てやって言ってたんですよ、反省会の時にみんな…)


(エマネ、無能な働き者は有能な敵よりも敵となるとは言うが…あのなイリヤ、先に言っとくぞ。お前が本気で魔族大陸を消し飛ばすほどの勢いで聖剣炎撃を撃ち込もうとしてたのも、魔王様にはストレスだったんだからな…)


(で、一応言っときますと、なんでおばさまが全力射撃入れてるのにリュネ世界が無事だったかって言いますと、あまりに強力な剣撃ぶっ放すと本当にリュネ世界そのものが壊れますから、聖剣自らが威力を落としてたんです。これは私の爆炎剣でも同じ制限が入ってますけどね…ですから連邦世界の他の星とか、痴女皇国世界の赤玉砂漠あたりでないと聖剣の真の力は出せと言っても出してくれなかったでしょ?)


ううううう。


エマネの言うことは確かに正しいのですが、なんかムカつきます。


そしてロッテですよ。


もうちょっと攻めるのも手加減して、私に殺られてくれよって思ってましたよ、ええ。


(というか本気で消し飛ばされかけた事も何度もあるぞ…私は魔族だからそもそも怒りとか興奮とかは人に比べてあまり出ないんだけどな、それでもあのアマを今度は絶対殺ろうっって幹部魔族みんな怒ってたからな…ぶっちゃけて言うと、剣聖陣に最初に猛撃撃ち込まないとお前は逆にこっちに突撃してたろ…剣聖陣が標的にされてたってお前は言うけどな、過去の剣聖の中で一番血の気の多い撃ち込み、お前だったって魔王様も言ってるし私も同意見だからな…)


ええ、私はその時、真剣に涙目でした。


(で、付け加えておく。あのエイモンが生まれる件の発端となった豚鬼族の一件もな、時の剣聖がお前に近い性格でぼかんぼかんと炎撃撃ち込んでくる好戦的ないくさ好きで、しかも「豚の丸焼きや〜!」とか言って豚鬼族を狙い撃ちしてたって裏話があるんだが、それ聞かされたら豚鬼族にも同情の心が芽生えるとは思わんか…)


ええと、ロッテ。


怨恨は水に流すって協定、結んだわよね。


それと豚鬼族に剣聖が犯されかけた件も、双方の恥だから封印しようって言ったわよね。


(ともかくも、イリヤは血の気が多い。この点だけは私は譲る気はないんだ…)


(お口の恋人にしに行くわよ…)


(その件だってな、お前との喧嘩両成敗じゃないか…あれで一時期、お前も私を咥えないと死ぬようにされたろ…)


ええ。やはりお互い、言わなくて良いことは言わないようにしましょうね、ロッテ。


と言うかさ、あんたと話すると絶対喧嘩になるんだけど。


(おばさまが負けず嫌い過ぎるんですよ…)


(エマネには、エマネだけには言われとうない…)


-------------------------------------


で、長く続く戦をしておりましたリュネの世ですが、魔王にも思うところが大きいのでしょう。


しきりにロッテと私の口舌激しい言い争いに乱入して来ようとしてましたけど、マンコラのレプタ嬢や当のロッテに「魔王様はちょっと黙っといて」と言われてしゅんとしてましたから。


つまり、魔王は魔王で過激な性格だったのです。


で、そのいけいけ魔王な性格の魔王ですが、餌がなくなるのはさすがに困ると言うわけで、今は私らに泣きつく立場です。


しかし、私らとしても苗床と魔毒は欲しいので、土下座してきた魔王の頭を足でふんづけてぐりぐりするような行為は間違ってもできません。


それに、逆に魔王の方が、ことによったら私の頭をぐりぐり踏んづけたかったでしょうから。


で、試作改造された西方族の改良にも手を貸すところ大の魔王いわく。


(要はあれや、みりょくてきなお母さんというこんせぷとをマサミどのやまりやどのからきかされてな、まっさきに思いうかんだのはクシーとジャムジュナ、そしておまえとフユキくんやねん)


つまりですね。


あまり、いくさ向きではなかった西方族の見た目をカイゼンしたのがまずは大きい。


魔王はそう、言いたいようです。


(それとやな…うちの魔族にひゃくしょうさすねんから、男もおんなも見ためじゅうしでええやろっていわれてたしな…で、フレデリックはんのからだもみせてもろたり、フユキくんのからだとか、こっちであずかっとるアグネスはんやクリスはん、そしてべらこはんのからだもさんこうにしてな…)


(フレデリックです。イリヤさん、今後の西方族の生計にも関わる事ですが、ミセス田中…雅美さんから話を頂く方が良いと思います…)


で、雅美さんからのお話ですが。


(長く、西方族は農耕民族にしてリュネ族の魔毒抜き要員としての立場を余儀なくされてきました。そのためにリュネ世界の内乱を起こしたものの早期に鎮圧できたのは、ひとえに彼らに組織を築く知能はあったものの、戦争のノウハウが欠けていたところも大きいと思えます。ただ、今後は…精気供給要員兼、妊娠要員として魔尼派聖母教会の監督に入ってもらうわけですけど…西方族の自立を促し、やる気を起こさせるためにも、今まで以上に娼夫や娼婦めいた扱いを強化しなくてはならないでしょう…)


そうです、これが貴娼とか賤娼とか言われる、西方族内の新たな…女体化作戦実施後の階級制度設立に繋がっているんだそうです。


そして、貴娼階級の更に上に来るのが、聖母教会の司祭以上の地位者となることを…。


(ですから西方族が身を立てるためには聖母教会の幹部尼僧に取り立てられるための勉学も必要、とさせてもらったのよ…そうよ…単にアレだけしてたらいいってわけでもない運用なのは、痴女皇国世界の荘園と同じでしょ?)

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