第三十七話 信念
第三十七話になります。
序章のところからココまで読みにくいところがあったと思います。
駄目出しでも勿論構いませんので、感想を頂けたら幸いです。
PM5:40
「よっしゃー! いつぶりだこの達成感!」
アレスを除くこの部屋の全員が口をぽかんと開けて呆気に取られている。
彼らはもともとアレスに何らかの目的があり、それを絶対に成し遂げようとする強い心が、気絶寸前まで追い込まれた彼の意識を繋ぎ止め、メルスに一矢報いることを可能にさせたのではないかと推論を立て、本人に確かめにきた。
それがどうだろう。自分たちの推論を聞くや否や、アレスはどうしても確認したいことがあると真剣な眼差しでメルスと向かい合いながら殆ど一方的に話を進めていった。
そして、確認が取れたと思いきや子供の様に嬉しそうな笑みを浮かべている。
自分たちの推論が正しかったことはもはや一目瞭然なのだが、ここまで彼を喜ばせる内容だったのかと、興味が湧いてくる。
「ア、アレス。もしよかったら私たちに教えてくれない? 何を目標にしてたの?」
「うん? 別に目標って程じゃないさ。ただ『自信』が欲しかったんだ」
「自信?」
「あぁ、これからエキストラ戦士として戦っていくための自信を」
「「「っ!」」」
アレスは笑みを残したまま、しかしどこか寂しさを感じさせるような悲しい表情で自分の中に溜まった気持ちを吐き出すかのように悠々と語り始める。
「ビエラさんの部屋で話し合ったとき、俺は自分の意志でエキストラ戦士になることを志願した。でも、俺にはまだなんの力もないし、もし天牙が俺を認めてくれたってのが単なる勘違いだったら、もし俺に全く素質がなくていつまでも覚醒出来なかったら。周りからは絶対批判されるだろうし、俺自身挫折してしまうかもしれない。だから、そうならないための自信が欲しかったんだ」
「アレス……」
「アンタ、そんなこと考えていたのね……」
センナ達は今更ながらにアレスの心の中にあった不安と恐怖の感情を理解した。
たしかに、戦士になるかどうかを決めるために、彼には一時間の考える時間が与えられた。しかし、戦士になるという事は即ち、戦場に出て、命を懸けて戦うということだ。
たとえまる一日考える時間を与えられたとしても、心の中に積もってくる怖いという感情は抑えられるものではないだろう。
アレスは恐れていた。これから自分は力を覚醒するために修行を行い、覚醒すれば『リガード』や『イラ』と戦わなくてはならない。
それも、模擬戦とは違う。負ければ魂が壊されてしまう。死ぬのではく永久に消えて無くなってしまうのだ。
アレスはこれまでの人生の中で、『死生観』というものを考えたことがなかった。しかしここからは己なりの考えでなぜ自分が戦うのか、その答えを『信念』として生きなければならない。
その答えが分からなければ、なぜ自分が努力しているのか分からない。きっとこのままでは、いつか自分は挫折をしてしまう。アレスはそれをずっと恐れていたのだ。
しかし、そんなときアレスはセンナとミキから聞いた。自分が現れるまではメルスが剣聖の可能性を秘めた最有力候補者だという事を。
最有力候補者という事は、皆からそれだけ実力を認められているという事だ。
それほど強い相手に覚醒どころか、訓練一つしていない状態で一発決められたという実績を残しておけば、それは紛れもなく己の大きな自信になると、模擬戦が始まる前から彼は考えていたのだ。
「ありがとうメルス、勝手な俺の自己満足だけど、これで自信を持てたよ」
「…………一つ聞きたい」
「なんだ?」
「キサマはなぜ戦士になった? 初めて出会ったセンナだって、まだ一日も経っていないだろ? 命を懸ける理由はない筈だ」
「……ビエラさんの部屋で言った通りセンナやミキ、命を救ってくれた人たちに恩返しをしたいという気持ちは本当だよ。でもそれだけじゃない。他に救いたい人たちがいるんだ」
「救いたい……誰をだ?」
「もしも俺が剣聖の力を本当に受け継いでいたとして、その力を使わなかったせいでレース・ノワレがまた攻め入ってきたら、センナ達が守れる死者たちの人数には限りがあるんじゃないのか?」
「「「っ!」」」
「もしもまた伝説の時のようにめちゃくちゃ強いレース・ノワレが襲ってきたら、大勢の死者たちが壊されるかもしれない。だから神帝教会はずっと剣聖の力を欲していた。そうだろ!?」
「アレス……」
アレスの言葉は正確に的を得ていた。神帝教会は伝説の剣聖が消えてからずっと警戒している。また再び六道の世界が襲撃されるのではないかと。またあの悪夢が訪れるのではないかと。だからこそ、神帝教会はずっと優秀な人材をより強化するために剣聖候補という制度を作り、強い戦士を少しでも増やそうとした。しかしそれでも心の中に残る恐怖は消えることはなかった。だから、四千年間もの長きの時を経て、剣聖が残した遺産『天牙』を使いこなせる戦士をずっと探し求めてきたのだ。
ここまで詳しい話はアレスにはしていなかった筈だが、自身の考えだけで彼は神帝教会の真意に気付いていた。
「俺なりに考えたんだ。神帝教会や六道が破壊されたら、死者たちは助からない。でもそれは今を生きている生者たちも同じなんだ」
「「「…………」」」
「『死』は誰の許にも訪れる。でももし死んだあと、既に六道が破壊されていたら……」
アレスは続きを敢えて話さなかった。言う必要がなかった。この場にいる誰もが、彼の言おうとしていることを理解していたから。アレスが言おうとしていた内容は、神帝教会が最も恐れる最悪の展開なのだから。
「だから俺は戦う。センナ達のためだけじゃない。俺を育ててくれた両親、祖父母、友達、先生、みんなを助けたいから。俺が『本当の意味で死者になった』とき、また会いたいから……」
誰も言葉を発することが出来なかった。彼の戦う理由がこれほどのものだったなんて誰も分からなかったから。
言葉を失うほどにアレスの戦う理由は妙妙たるものだった。
暫く沈黙が続いた後、一番に動き出したのはメルスだ。毅然とした振る舞いで颯爽と部屋の出口へ歩いていく。
「メルス……やっぱり俺を認めてくれないのか?」
アレスは引き止めるつもりはなかったが、やはり自分の戦う理由を聞いても尚、仲間として認めてくれないかという事に寂しさが溢れ、言葉になって口から零れてしまった。
メルスは彼の声を聞き、歩みを止める。振り返ることはしなかったが、アレスにも聞こえるような声で呟いた。
「…………俺の訓練は甘くないぞ! アレス」
(俺のって、しかも今初めて俺の名を!)
アレスは嬉しさのあまり声を高ぶらせながら答えた。
「おう! よろしくな。メルス!」
メルスは何も言わず部屋を後にした。
―――アレスの言葉を聞き、メルスの口端が僅かに釣り上がっていた事は誰も知らない話―――
読んで頂きありがとうございました。
新人作なので、「明らかに書き方おかしいだろ」
と思われる所もあると思います。
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信念がある人はどこの世界でもカッコいい(自論)!




