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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第4章『3年生』
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第37話 危機



 ──ガチャン!!!!


 大きな音を立てて、屋上の扉が開く。

 私と湊くんは、そこから入ってきた人物を見て驚く。




「直登?どうしたの?」


 すると直登は、物凄い勢いで湊くんの前に立つ。


 はっ!!もしかして、隠れて二人でご飯食べてたから怒ってここまで来ちゃったの!?

 ま、待って待って!!湊くんは何も悪くな──





「──井上が……いないんだ」




 その言葉に、私は首を傾げる。凪沙がいないことが、そんなにも重要な事なの?

 あの子は、結構マイペースだから、急にいなくなることなんて結構あるけど……。

 そう考えていると、湊くんがすっと立ち上がる。



「どういうこと?」



 湊くんは、ひどく冷たい声で直登にそう尋ねる。

 え、何、この空気。私だけが全くついていけないんですけど。

 何で湊くんは、そんなに厳しい目で直登のこと見てるの?直登も珍しく弱々しいし……。


「ちょっと離れた隙に──」


 と直登が呟いた瞬間、湊くんが彼の胸ぐらをガッと掴んだ。


「離れんなって言ったよな?俺の忠告聞いてなかったのか?」


「ちょっ、湊くん、お、落ち着いて──」



「──瀬戸さんは黙ってろ」



 湊くんは、直登を鋭い目付きで睨み付けたまま私にそう言い放つ。その威圧感に、私はそれ以上何も言えなかった。


「ちゃんと説明しろよ」


「……悪い。……反省してる」


「謝罪の言葉なんていらねぇんだよ。説明しろって言ってんだろ」


「……ちょっと、可鈴の話しててさ……それで井上泣いちゃって。今は、側にいない方が良いと思って、自動販売機まで飲み物買いに行ったんだ。……それで帰ってきたら……教室からいなくなってて……弁当も……床に散らばっててっ」



 直登がそこまで言った瞬間、湊くんは走り出していた。

 私と直登も慌てて彼の後を追いかける。


 気になることは、いくつもある。

 まずは、私の話をして凪沙が泣いてしまったこと。直登は、凪沙に何を話したのだろうか?

 次は、お弁当が床に散らばっていたこと。凪沙の身に何か危険な事が起こってしまったのかもしれない。

 最後は、湊くんがここまで焦っていること。

 私が知らないうちに、凪沙はとんでもない闇を抱えてしまっていたのかもしれない。




***



 ガラララッ───!!!!


 大きく音を立てて扉を開け放つ湊くん。私と直登も、すぐにその扉から空き教室の中に入る。

 そして、大きく目を見開いた。


 いつもなら、部屋のすみにまとめられている机も、何台か倒れているし、お弁当の中身は無惨にも床に散らばっている。


 この状況に、誰一人として声を出すことが出来なかった。

 一体、凪沙の身に何が起きたのか……想像するのも怖くて出来なかった。



「──樋野は?」



 湊くんがボソッと呟く。



「……樋野くん……?」



 その言葉に、心臓の音が先程よりうるさくなった。



「……樋野は……どこにいるんだ……?」



 何かとてつもなく嫌な予感がして、私は空き教室を飛び出した。

 走りながらスマホを取り出すと、凪沙に電話をかける。

 呼び出し音が……1回……2回……3回……数が増すごとに不安も大きくなっていく。

 出ない……。私は、諦めて通話終了ボタンを押すと、続けて樋野くんの番号に電話をかける。

 1回……2回……3回……。……やっぱり出ないっ……!!諦めて、電話を切ろうとしたその瞬間──





『──もしもし?』





 その声に、私の足は自然と止まっていた。



『──あれっ?もしもーし?』



 電話の先からは、いつものように癒しの声が聞こえてくる。



「あっ、もしもし樋野くん?」


『うん。急にどうしたの?』


「あっ……いやっ……そのー」


 まさか電話に出るとは思っていなかったので、言葉が出てこない。そう思っていると、私の手からスマホがスルッと抜けた。

驚いて、そちらに目を移すと湊くんがスマホを耳に当てている。



「──樋野か?お前、今どこにいる?」



 そうだった。私が聞かなければいけなかったことは、樋野くんの居場所だ。

 あまりにも普通に電話に出てきたから、驚いて何も聞けなかった。




「教室ってどこのだよ?……はあ?お前、本当のこと言わねぇと」




 そこまで言ったところで、湊くんの言葉は止まった。私と直登は彼の様子を見て、その視線の先に目を移す。すると、そこにはスマホを耳に当てた樋野くんが教室から顔を覗かせていた。

 そして、そのままこちらに向かって歩いてくる。



「……どうしたの?そんなに息切らせて。僕何かした?」



 きょとんとした様子の樋野くんに、湊くんは冷静に尋ねる。



「何かしたんじゃねぇのか?」



「……桐谷くん。何か今日雰囲気怖いね。何をそんなに焦ってるの?」



「──井上さんと会ってたんだろ」



 その一言に、場の空気が一変したような気がした。その異様な雰囲気を感じ取ったのか、廊下を歩く生徒も少なくなった。


 樋野くんは、驚いた顔をしていたが、次の瞬間フッと笑う。






「──何?見てたの?」









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