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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第4章『3年生』
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第36話 大切な人





「──瀬戸さんの事、好きだから心配なんだよ」






 湊くんの突然の発言に、私は何も言えずに彼の目をただただ見つめていた。私の目が、それほど驚きを物語っていたのか、湊くんはフッと笑う。



「今、引いたでしょ?まだ好きでいたのかって」


「そっ、そんなこと……」


「まあ、仕方ないじゃん。好きなんだから」



 かなりあっさりと告げられ、私は目をぱちくりさせるばかりだ。


 こんな私の事を、ずっと好きでいたって何の意味もないのに……?

 私は、直登と付き合ってるのに……?

 そもそも、私のどこに好きになる要素があるんだろうか?


 頭の中が?マークで埋め尽くされる。

 湊くんは、青く澄み渡った空をボーッと眺める。





「どうして瀬戸さんじゃないとダメなんだろう……?」





「……へ?」





「……諦めるならとっくの前に諦めてる筈だし、井上さんの事も好きになれれば好きになってる。……でも、瀬戸さんが俺の事好きじゃないって知ってても、振り向いてくれることはないって分かってても……好きなんだよなぁ……」



 その言葉は、彼にとって独り言だったのかもしれない。ただの呟きだったのかもしれない。

 それでも、私の胸をひどく締め付けて、苦しめる。


 「ごめんね。」なんて、偉そうな事は言えない。


 かといって「ありがとう。」なんて優しい言葉もかけられない。


 本当に、とうして私のことなんか……。

 そんな事を考えていた時、頭をわしゃわしゃと撫でられた。驚いて、彼の方を見るといつもの優しい笑顔。




「何、暗い顔してんの。笑いなさい」


「……はあ」


「女の子は笑ってるのが一番可愛いんだから」


「……何それ?」



 湊くんの言葉に、私は呆れながら尋ねる。



「とくに好きな人の笑顔は特別でしょ?幸せそうに笑ってる姿とか見たら、こっちまで嬉しいんだよ」


「……まあ、それは……分かる」


「だからこそだと思うよ?俺が瀬戸さんの事諦めきれないのは。瀬戸さん、本当に毎日幸せそうなんだもん」


「……そっか……」


 湊くんの言葉は、胸にすーっと染み渡る。

 確かに、好きな人の笑顔って特別だよね。他の人とは比べ物にならない。何か、特別な魔法がかかってるようなそんな感じ。

 そう考えると、自然に口角が上がるのが分かった。



「ちょっとー、何ニヤニヤしてるんですかぁ?気持ち悪いからやめてくださいよー」


「なっ!?そ、そっちが笑えって言ったんじゃ……!」


「ニヤニヤとニコニコは違うからね。それは変態に見えるから止めようね」


「もー!!うるさいっ!!」




***





 何があってこうなったんだっけ?


 私はこれまでの事を、一つ一つ思い出していた。

 確か、お昼休みになった途端に、可鈴が逃げるように教室を出ていったんだよね。

 もちろん、幸坂くんは可鈴の事を追いかけようとした。

 でも、桐谷くんはそれを止めた。

 「今は俺に任せて。」そう言い残して、私たちの前からいなくなった。

 そこから、幸坂くんと二人になってしまったんだ。

 そうだった、そうだった。



 そう自分の中で納得はしたものの、幸坂くんと二人きりという状況は慣れず緊張してしまっていた。

 どこか上の空の彼だが、二人の事が気になって堪らないのだろう。それは、私だって同じだ。



「何かあった?」



 幸坂くんが突然そう口を開いたので、私はビクッとして、隣に座る彼を見る。


「な、何かって……何も」


「可鈴に話せないことでもあるんじゃねぇの?」


「……え?」


「最近のお前らの関係性、何か薄っぺらいもんな」



 空き教室で誰もいないからか、彼の言葉は荒々しい。いや、彼はいつも通りに喋っているだけで、私にとって図星な話過ぎてそう感じるだけかもしれない。



「……可鈴には……迷惑かけたくないから……」


「……そ」


 幸坂くんは、軽くそう返事をするとペットボトルに口をつける。



「迷惑ってさ、人が決めることで自分で決めることじゃないだろ」



「……へっ?」



 お茶を飲み干したところで、幸坂くんはそう告げる。



「もっと可鈴の事頼れよ。アイツは……井上の事本当に大切に思ってるから」


 そう言って、頭をポンポンと撫でてきた。

 その言葉と優しさに、私の目から涙がブワッと溢れる。



「飲み物買ってくるわ」



 そう言って、幸坂くんは教室を出ていった。一人になった教室で、私は涙を流し続けた。多くは語らない幸坂くんだけど、節々に優しさを感じる。


 それと同時に、私が可鈴にしていた行動を思い返す。大切な人に、頼ってもらえないって……思ったよりも残酷なのかもしれない。迷惑をかけちゃいけないと思いながら、可鈴を苦しめていたのかもしれない。


 話してみよう。可鈴に。

 大切だから。大切な人だからこそ、頼ってみよう。


 そう覚悟をして、涙を拭った瞬間、教室のドアがガラララと開いた。


 思っていたよりも、帰ってくるのが早かったな。


 そう思って顔を上げた瞬間、私は固まった。




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