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本当の君を好きになる  作者: 瑠音
第2章『みんなの想い』
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第15話 告白



「──そんなに瀬戸さんの事泣かせるのが楽しい?」



 移動して、いきなりそんな事を言われ俺の思考は停止する。可鈴を……泣かせる……?


「悪いけど、何を言ってるのか分かん──」


 そこまで言った所で、俺は急に胸ぐらを掴まれた。まさかの出来事に、相手の手を掴むことしか出来ない。桐谷の腕はプルプルと震えているが、目は冷静さを物語っている。



「とぼけたこと言ってんじゃねぇぞ?お前が嘘ついて、瀬戸さんの想いを弄んだんだろ。そんなに女を騙すのが楽しいか?自分の美貌で、相手を騙すのが楽しいのか……!?」



 そういう事か。俺が、告白の事を嘘ついたから……。

 可鈴も可鈴なりに傷ついてたんだな。そうだよな。


「……楽しいと思ってやった訳じゃない。でも……俺も俺なりに考えたんだ。どうすれば、可鈴に少しでも負担がかからないか、迷惑をかけないか」


「考えた末であの結末か……?笑わせんなよ」


「それが可鈴の為だと思ったんだ。それに……今の可鈴にはお前がいるだろ」



「……は?」



 桐谷は、俺の言葉を聞いて固まった。何でお前がその事を知ってるんだ?っていう顔か?



「……昨日聞いたんだよ。あの空き教室で二人で話してるところを。そこで、可鈴がお前に告白してるのも聞いた。……可鈴が好きなら仕方ないだろ」


「……何だよ……そういうことかよ……」


 そう言うと、桐谷は俺から手を離した。ようやく解放され、俺もひと安心する。しかし、その安心も一瞬だった。





「──だったらお前、なおさら最低だな」





 その言葉は、俺の心にグサリと突き刺さる。

 は?俺が最低?どういうことだ……?


 桐谷は、冷たい目で俺の事を睨み付ける。俺も、眉をしかめて桐谷の方を見る。




「手短に言えば、お前が聞いた言葉は全部お前に向けての物だ。お前からの告白の返事を、ずっと練習してたんだ……!!確かに、名前は俺の事を呼ばせてたよ。その方が雰囲気出るからって。全部、お前の勘違いのせいじゃねぇか……!!」



「……え?」



「最後までちゃんと聞いてたのか?一部分で全てを知ったような言い方しやがって……。それで、瀬戸さんの為に嘘をついた?まじで笑わせんな。結局、お前は逃げただけだろ?フラれるのが怖くて……瀬戸さんと気まずくなるのが怖くて……。瀬戸さんの為の嘘でも何でもない。お前自身を守るための嘘だったんだよ」



 色々な情報が入りすぎて、俺の頭はパンクしそうになる。どういうことだ?つまり、可鈴は俺の事が……。それなのに、可鈴の返事を聞く前にそれをシャットアウトして、俺は逃げたんだ……。



「……二人の為に潔く身を引いたつもりだったけど、やっぱり無理だ」


 俺が黙っていると、桐谷は続けて話し始める。







「──もう遠慮なんてしない。お前がそこまでフラフラしてるんだったら……彼女の事全力で奪うから」







 桐谷は、それだけ言うとその場を立ち去った。

 体育館裏に、一人取り残された俺は、少しの間動くことが出来なかった。




***




 空き教室に行ってみて私は驚いた。何か話をする時は、いつもここなのに……。他の空き教室も探してみたけど、どこにも見当たらなかった。

 一体どこに行ってしまったんだろう……?


 二人のあの様子。危険な香りしかしなかった。湊くんが直登を呼び出したのは、絶対に私が泣いたからだ。きっと、私の代わりに気持ちを代弁しようとしてくれているんだろうけど……。何か嫌な予感しかしない。


 と、その時、私は後ろから何かに包まれた。

 フワッと香る優しい香り。抱き締める強さ。

 それが、湊くんだということにすぐに気がついた。



「──瀬戸さん、ごめん」


 耳元で響くその声に、私の体はビクッと震える。


「……俺、嘘ついてた」


「……え?」


「──俺、瀬戸さんの事が好きだ」


 まさかの一言。私は固まってしまう。

 何を言ってるの……?湊くんは、直登の事を陥れようとして私に告白しただけで、何の気持ちも無かったんじゃ無いの?どういうこと?どこからどこまでが嘘なの?待って、訳が分からない。


「……男の子は……嘘しかつけないの……?」


 私が、そう呟くと抱き締める力が強くなった。私は、湊くんの手に触れる。


「……ごめん。本当は最初から好きだった。……でも、瀬戸さんとアイツの事を考えて身を引いたんだ……。だけど、今のアイツには瀬戸さんの事を任せられない」


 後ろから抱き締めたまま、私の手を両手でギュッと握る湊くん。






「ごめん。好きなんだ。……どうしようもなくっ……瀬戸さんの事が好きなんだっ……!!」






 ──キーンコーンカーンコーン。



 朝の会が始まる合図の音。

 私は、その場に立ち尽くす。湊くんも、私から離れる様子はない。



「……湊くん……ありがとう」



 私は、そう言うと湊くんの手を握り返した。



「その言葉だけで、私には十分すぎるよ」



 そして握った手を離すと、その腕から逃れる。そのまま、後ろを振り返ると湊くんは目に涙を浮かべていた。


「……泣かないで……。せっかくの綺麗な顔が台無しだよ……?」


 私はそう言って、ハンカチを手渡す。湊くんは、それを受け取るが、涙を拭おうとはしない。


「……ねえ、瀬戸さん」


「……何?」


「これからも一緒にいても良い……?」


 弱々しく呟く湊くん。私は、出来るだけニコッと笑って答えた。


「もちろん。むしろ、こちらこそお願いします──」




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