第7話:ギルドの理不尽と、孤高の咆哮
---
## 第7話:ギルドの理不尽と、孤高の咆哮
暴走の傷が癒えきらぬ翌日。
ハルカの工房に、招かれざる客がやってきた。
「一条レン! 管理局の許可なく、未踏破エリアの拠点を占拠し、さらには『危険な魔力暴走』を引き起こした罪で同行を願おう!」
現れたのは、新宿ダンジョン管理局の『精鋭騎士団』。
黄金の鎧を纏った魔法使いの一団だ。その中心には、卑屈な笑みを浮かべたカイトの姿もあった。
「……管理局にチクったのは、お前か」
俺が睨むと、カイトは騎士の影に隠れながら叫んだ。
「当たり前だ! あの力は危険すぎる! 魔法の理を乱す異端の力だ、没収して解析すべきなんだよ!」
騎士団長が厳かに杖を掲げる。
「一条。お前の『ベルト』をこちらへ渡せ。無能な探索者が持っていい代物ではない。これは人類の共有財産として、我々エリートが管理する」
ハルカが俺の前に立ちふさがった。
「待ってください! そのベルトはレンさんの身体の一部みたいにリンクしてるんです! 無理に引き剥がしたら、彼の命が――」
「黙れ、職人。無能を庇うなら同罪とみなすぞ」
騎士団長の手から放たれた拘束魔法が、ハルカを弾き飛ばそうとする。
――その瞬間。
俺の体が、思考よりも先に動いた。
バキィッ!
魔法の鎖を、生身の拳で叩き割る。
「……っ!? 魔法を、素手で……?」
「いい加減にしろ。俺はあいつ――『ハデス』を追わなきゃならない。お前らと遊んでる暇はないんだ」
俺は腰にベルトを当てた。
だが、昨日の暴走の影響か、アーク・ドライバーは重く、鈍い音を立てる。
**『――SYSTEM ERROR: STABILITY LOW(安定性低下)――』**
「ははは! 見ろ、壊れてるじゃないか! さあ、騎士団の皆さん、やっちゃってください!」
カイトが勝ち誇ったように叫ぶ。
だが、俺は止まらない。
ボロボロの体を引きずり、愛車『ストライカー・ウィーラー』に跨った。
「ハルカ、行くぞ。……あいつらを振り切って、第6層へ」
「レンさん……! はいっ!」
ハルカがバイクのリアシートに飛び乗る。
俺はアクセルを全開にした。
「逃がすか! 追え! 全員、追尾魔法を展開せよ!」
騎士たちが一斉に空飛ぶ魔法の絨毯や、迅速魔法で追いかけてくる。
狭い洞窟内での高速チェイス。
背後から降り注ぐ火炎球や氷の矢を、俺はバイクの超絶的なスラロームで回避していく。
「レンさん、これを使って!」
ハルカが俺に手渡したのは、徹夜で改造したという新しいデバイスだった。
「バイクの出力と、ベルトの『残響魔力』を直結させたわ! 30秒だけ、音速を超えられる!」
「……最高だ」
俺はそのデバイスをハンドルユニットに叩き込んだ。
**『――GEAR CHANGE: SONIC DRIVE!!――』**
キィィィィィィィン!!
爆音と共に、バイクの周囲に円錐形の衝撃波が発生する。
「なっ、速す……!?」
追跡していた騎士たちの視界から、俺の背中が一瞬で消えた。
そのまま俺たちは、第5層の底にある巨大な奈落――第6層『煉獄の回廊』へと飛び込んだ。
気温が急上昇し、視界が赤く染まる。
背後の追手たちは、あまりの熱気に足を踏み入れることすらできない。
「……あいつら、狂ってるのか!? 生身で第6層に入るなんて、自殺行為だぞ!」
遠ざかるカイトたちの罵声を聞きながら、俺は灼熱の風の中にいた。
ここから先は、魔法の加護すら届かない、真の地獄。
そして、俺が「真の王」として覚醒するための試練の場所だ。
---




