第75話(最終回):明日の空は、何色か
## 第75話(最終回):明日の空は、何色か
それから、さらに数十年後。
世界から「仮〇ラ☓ダー」という言葉が、日常の会話から消え、教科書の中の伝説へと変わりつつある時代。
かつての荒野は緑に覆われ、第101層まで突き抜けていた地割れは、美しい湖となっていた。
湖のほとりにある小さな家。そこには、白髪混じりになった老人が一人、椅子に座って夕日を眺めていた。**一条レン**である。
彼の身体は、かつての無理な変身の代償で、今では杖なしでは歩くことも難しい。それでも、その瞳はあの頃と同じ、澄んだ輝きを失っていなかった。
「おじいちゃん! またあのお話してよ! 昔、空が金色に染まって、銀色の騎士様が飛んだ時のお話!」
近所の子供たちがレンの周りに集まってくる。レンは皺の刻まれた手で、一人の子供の頭を優しく撫でた。
「ああ、いいとも。……でもね、その騎士様は、魔法を使ったわけじゃないんだよ。みんなと同じ、痛いと泣いて、お腹が空くと怒る、ただの人間だったんだ。……ただ、少しだけ、誰かのために一生懸命だっただけなんだよ。」
子供たちは不思議そうな顔をしながらも、レンの語る「伝説」に目を輝かせる。
レンがふと空を見上げると、そこには管理された偽物の青空ではなく、移ろいやすく、しかしどこまでも高い、本当の空が広がっていた。
「……ハルカ、海斗、ギル。見てるか。……世界は、まだ続いてるぜ。」
レンはそっと胸に手を当てた。そこにはもうドライバーはない。だが、かつて共に戦った仲間たちの鼓動と、救った命の温もりが、今も確かに刻まれている。
夕日が地平線に沈み、星が瞬き始める。
それは200年前、ドクター・ストリクスが恐れた「闇」ではなく、明日を迎えるための安らかな「夜」だった。
レンは静かに目を閉じ、深く、満足そうな息を吐く。
一人の青年が駆け抜けた200年の孤独と愛の物語は、ここで静かに幕を閉じた。
あとに残ったのは、風に揺れる草の音と、子供たちの笑い声だけだった。
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