第61話:アカシック・バレイ、忘れられた遺言
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## 第61話:アカシック・バレイ、忘れられた遺言
地割れの底に広がっていたのは、無機質な機械の街ではなく、巨大な水晶の柱が乱立する、幻想的で静謐な空間だった。第101層――通称**『アカシック・バレイ』**。
ここはデウス・エクスが演算の邪魔になるとして切り捨てた、200年前の「人類が最後に流した涙」や「整理しきれなかった感情」が、高密度のデータ結晶として蓄積された場所。
「……何、ここ。空気が……痛いほどに優しいわ。」
ハルカが端末をかざすが、あまりの情報量に計測不能の文字が踊る。
レンたちは、その最深部にある、かつての『ストリクス計画』の中枢室へと辿り着く。そこには、エルムの手によって既にハッキングされた形跡があった。
「遅かったな、一条レン。私は一足先に、神がこの世界を『リセット』するためのコードを手に入れた。」
玉座のようなコンソールの前に立つエルム。その手には、世界を再び無に帰し、純粋なデータのみで再構築する**『終焉のプロトコル』**のキーが握られていた。
「だが、その前に……君に教えておこう。なぜ君が『ストリクス』に選ばれたのかを。」
エルムが操作すると、空間に200年前のホログラムが浮かび上がる。映っていたのは、若き日の**ドクター・ストリクス**。彼は、死を目前にしたようなやつれた顔で、カメラを見つめていた。
『……もし、この記録を再生している者がいるなら、謝罪させてほしい。仮〇ラ☓ダーストリクスは、救世主ではない。……それは、来るべき「感情の死」に抗うために、一人の人間に**「世界のすべての痛み」を肩代わりさせるための生贄システム**だ。』
「……生贄……だと?」
レンの声が震える。
『適合者は、世界中の絶望と共鳴し、それを自分の命で燃やし尽くさなければならない。……一条レン。君を選んだのは、君が誰よりも優しかったからではない。誰よりも「絶望」をエネルギーに変える効率が良かったからだ。』
ドクターの言葉は、レンのこれまでの戦いを、ただの「高効率な処理」として突き放すものだった。
「ハハハ! 聞いたか、レン! 君の正義も、仲間への愛も、すべては200年前の狂った学者が計算した『燃焼効率』に過ぎなかったのだ!!」
エルムが哄笑と共に、リセットのカウントダウンを開始する。
レンのアーク・ヴォックスが、ショックで激しくノイズを走らせた。
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