第60話:剥き出しの記憶、ヴォックス・アウト
---
## 第60話:剥き出しの記憶、ヴォックス・アウト
「化け物め、これ以上近づくな!」
作業用メカの重機アームがレンの胸部装甲を叩く。火花が散るが、レンは反撃しない。海斗とギルも、必死に敵の攻撃をいなすことに徹していた。
「……レン! このままじゃ装甲が持たないぞ!」
「……いいんだ。拳じゃ、この人たちの『不安』は壊せない。」
レンはアーク・ヴォックスの出力を最大に引き上げ、胸部のコアを解放した。銀色の波紋が、戦場全体を包み込んでいく。
**『――VOX-OUT: MEMORY-RESONANCE(ヴォックス・アウト:記憶共鳴)――』**
それは、言葉や映像による説明ではない。レンが今まで体験してきた、喉を焼くような戦いの恐怖、仲間を失う痛み、そして、それでも誰かの笑顔が見たくて立ち上がった時の「心臓の熱」――。
レンの**「人生の重み」そのもの**を、神経直結のドライバーを通じて周囲の人々の脳内へ直接ストリーミングする禁断の機能だった。
「……あ……ああ……ッ!?」
重機を操っていた父親たちの動きが止まる。
彼らの視界に流れ込んできたのは、英雄の華々しい姿ではない。夜中に一人、ボロボロになった身体を抱えて震えるレンの姿。管理局の非道に怒り、血を吐きながら叫んだ記憶。
「……この男……こんなに、ボロボロになりながら……俺たちのために……」
人々の目に涙が浮かぶ。エルムの綺麗な「嘘」よりも、レンの不格好な「真実」が、彼らの心を震わせた。
だが、その感動を切り裂くように、天から無慈悲な光の雨が降り注ぐ。
「――やはり、君は害悪だ。一条レン。」
上空に現れたエルムの旗艦。彼は、レンの説得を逆手に取り、人々の心がレンに傾いた瞬間を狙って**「証拠隠滅」**の広域爆撃を開始した。
「レンに惑わされた哀れな民草よ。君たちの魂も、私が第101層で救済してあげよう!」
「エルム……貴様ぁッ!!」
降り注ぐミサイルの群れ。レンは瞬時に液体金属を巨大な傘のように広げ、自分を殺そうとしていた人々の頭上を覆った。
「ぐ、あああああッ!!」
背中に爆風を受け、装甲が剥がれ落ちる。だが、レンは一歩も引かない。
その時、レンを庇うように、海斗とギル、そして先ほどまで敵だった重機たちが一斉に動き出した。
「お前らが、レンさんを……これ以上傷つけるんじゃねえ!!」
---




