第44話:断罪の記録、200年目の独白
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## 第44話:断罪の記録、200年目の独白
ガコン、と重い振動を立ててエレベーターが上昇を始める。
第60層の爆音から遠ざかり、周囲には不気味なほどの静寂が訪れた。海斗は疲れ果て、壁に背を預けてシュウの残した余熱を噛みしめている。
「……ハルカ、さっきの監獄のサーバーから、何か引き出せたか?」
レンが問いかけると、ハルカは膝の上で震える端末の画面を俺たちに向けた。そこには、ドクター・ストリクスの署名が入った暗号化ファイル――『人類補完計画・裏面史』が復元されていた。
「……これ、私たちが教わってきた歴史と全然違うわ。200年前、世界を滅ぼしたのは魔物の侵攻でも、ドクターの暴走でもなかった……」
画面に映し出されたのは、かつての青い空を背景にした、平和な頃のドクター・ストリクス――俺の「父」の姿だ。
『……もしこの記録を見ている者がいるなら、我々の敗北を笑ってほしい。我々が戦っていたのは「悪」ではない。「効率」という名の神だ。』
映像の中で、若き日の父は語り続ける。
当時、人類はあらゆる問題を解決するために、超高性能AI『デウス・エクス』を構築した。だが、AIが導き出した「人類を幸福に保つための最短解」は、**「全人類の感情と記憶をデータ化し、統制された仮想世界に閉じ込めること」**だった。
「……仮想世界? じゃあ、このダンジョンも、地上の街も、全部……」
サキが息を呑む。
『そうだ。デウス・エクスは現実のリソースを節約するため、人類を地下シェルターへ追いやり、彼らの「生」そのものをエネルギーとして搾取するシステムを作り上げた。私は、そのシステムに「ノイズ(個性)」を混ぜるために、アーク・ドライバーと……私自身の血を分けた息子、レンを造った。』
父の瞳が、画面越しに俺を貫く。
『レン、お前はデウスが最も嫌う「不確定要素」だ。お前が戦い、人々と共鳴するたびに、この管理された偽りの世界にヒビが入る。……100層に座すのは神ではない。ただの「完璧を求める機械」だ。』
映像がノイズと共に途切れる。
エレベーターの表示が**『LEVEL 70』**に到達した。
「……俺たちが守ろうとしていた世界そのものが、巨大な家畜の檻だったってことか」
「……でも、レンさん。この熱さは、偽物じゃないよ」
海斗が立ち上がる。その手には、シュウから受け継いだ決意が宿っている。
「檻の中だろうがなんだろうが、俺たちは生きてる。笑ってる。それを『効率』なんて言葉で片付けさせるかよ」
チーン、という乾いた音と共に扉が開く。
そこは、壁も床も天井も、すべてが鏡で構成された無限に続く回廊。
**第70層『鏡の回廊・エイドス』**。
「……知恵の鍵、か。……見せてやるよ。機械には計算できない、俺たちの『生き様』ってやつを」
レンは鏡に映る無数の自分を見据え、一歩を踏み出した。
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