【5/10】スーパーで、ぜったいカゴを取らない人
「この白線から落ちたら、死ぬ」と歩道の白線の上を歩きながら、下校していたのが45年ぐらい前。ルールは開示されてこそ、ゲームスタートとなる。
そうでなければ、白線の上を慎重に歩くマヌケにしか見えない。百歩譲って、子どもだからまぁ何か遊んでるんだろうなとなる。
子どもが大人や社会から理解しがたいことに夢中になっていても、それは「遊び」と自動変換される。
そのまま大人になったのだろうか? と思う案件が1つ。
スーパーでカゴを取らない人のことだ。特定の人ではなく、スーパーに行くと必ず目にする。
千秋楽の舞台俳優並みに両手にパック肉やらジャガイモやら、ビールやら抱えている。最後に冷凍食品を乗せるあたりは、体温で溶けないようにとの気配りだろうか。
レジでざざざぁと得意げに両腕から解き放つ。さしずめ、隣の村から食料品を強奪してきたような小悪党感すら漂う。
カゴがあるじゃないか。重ければ、カートもあるじゃないか。なぜ、カゴを使わない。自分の両腕をそこまで過信するのだ。落としたら、悲劇だって起こるのに。
カゴを手にしない人、老若男女問わずであるのが興味深い。そりゃぁ、1つ2つの買い物なら、いちいちカゴは手にしないさ。だが、バランス感覚が問われるほどの量を抱えるのなら話は別だ。
先日、柿の種とビールを抱えて店内を回遊する高齢のご婦人がいた。背は低い、腰はすっと伸びている。柿の種を3袋ほど、ビールを1缶単位で4から5缶ほど。飲むんだね、良い買い物だ。足取りがヨチヨチ。前から歩いてくると、狭い店内は接触しそうで怖い。
店員にそのご婦人が「タマゴどこにあります?」と問う。
(常連ではないのか、タマゴ売り場を知らないのだから)
待て!
その状況で、タマゴを1パックを積み上げるとは、逆ジェンカも甚だしい。
店員も店員でカゴを渡す素振りもなく、こちらですとタマゴ売り場に誘導する。
面白そうなので後ろを歩いて行くと、
1000円以上ご購入の方、タマゴ1パックまで10個入り・198円!とPOPが!
そりゃあ買うだろう。場所まで聞いてるんだから。とはいえ、もうホールドする力はないだろう。カゴが必要だ。だがご婦人は、クルリと踵をかえした。
再びタマゴ売り場に戻ってくるのを待つ。ご婦人が幾分か身軽だ。柿の種をいくつか棚に戻したのだ。タマゴを安定的に抱えられるようにするためか。
なおも、カゴを手にしない。これは、あの「白線から落ちると死ぬ」ルールに通じるものがあるのか? 相手は高齢のご婦人だ。大人の後半戦を生き抜いている方だ。そんな子どもじみたゲームに興じているわけでもなかろう。
断固として、カゴを手にしないのは、なぜか?
・いろんな人が触っているから、カゴが汚いと思っている
・カゴを手にすると、まっすぐ歩けない
・カゴをカートに乗せると、制御できない
・カゴは有料だと思っている
・会計後カゴにいれたまま持ち帰り忘れたトラウマがある
ご婦人も危険を察知しているのだろう、タマゴを一番上に積み上げたあとは、一目散にレジに向かった。
ピタリと後ろで見ていると、
・柿の種:250円ぐらいを1袋=250円
・ビール:120円ぐらいを4缶=480円
・タマゴ:178円
合計:908円に消費税で、980円だったと思う。
とにかく、1000円に達していなかったのだ。レジ前のチョコレートを手にして、コレも! とご婦人が素早く動く。
1000円達成!よかったね。
レジでは、購入済みのカゴに移される。ご婦人がポツリ
「カゴ、入れんといて」と。
あぁ、そうか。
カゴが嫌いなのだ。犬が嫌いとか、ピーマンが嫌いとか、あのタレントが嫌いとか、そういう次元で「カゴが嫌い」なのだ。ご婦人はサッカー台の下にある段ボール箱に戦利品を詰め込んで、抱えて店を出た。
きっと、買い物袋も嫌いなのだろう。




