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異世界転生したので精一杯頑張ります  作者: 辻本ゆんま
第4章 夏の魔術祭
48/165

At48.頑張ったからそれでいいよね?

お待たせしました。

今回ちょっと短いです。

 魔術祭3日目は想像にしない形で試合を終わらせた。

 試合結果引き分け。引き分けの下される判断は基本両者ともにそこで敗退。しかし、決勝戦で同様の事態が発生した場合は再度試合を執り行う。まだ、試合の数を残している3日目ではこの試合で引き分けになった村正とユウキは残念ながら敗退となってしまう。


 「てなわけで、残念だったわね。」

 

 控室で伸びている村正の所に現れたイブ。彼女はいつになく上機嫌である。村正達の試合前はシギーに叱られてかなりへこんでいたが、今はその影をのぞかせない。


 「何でそんなに嬉しそう何ですか?」


 村正は、イブのことを邪魔に思いながらもその顔を見てなんとか声を出す。


 「別に、そんなこと思ってないわよ。」


 嘘つけ、その顔は絶対に嘘だ。必死に隠してるけど顔のゆるみを全くもって隠しきれてない。


 「それで、何の用ですか?」

 「ん、決まってるでしょ。」


 イブは村正の手を掴むと椅子に座る村正を強く引き上げる。そのままの勢いで部屋を飛び出すと村正をどこかへ連れて行こうとするイブ。村正がイブにどこへ連れて行くのかと聞くもイブは、「秘密」としか言わず、そのままの状態で走り続ける。

 イブは村正を競技場から連れ出し学園の方へと走る。まだ、本日の試合の余韻を残す競技場を抜けながら走る。所々で声を掛けられるが、イブとの今の状況を見られてると思うと、急に恥ずかしくなり下を向かずにはいられない。


 「なんで、こんな恥ずかしい思いをしてるんだ?」

 「どうかした?」


 村正は赤面しながら「なんでもない」とぼそりという。素直になれない村正を見てさらに機嫌がよくなっていくイブ。そのイブの様子を見た村正は対応を間違えたと感じる。

 イブに手を引かれたまま学園校舎の自分の教室へと連れ込まれた。教室には既にユウキが来ていた。ユウキは村正を見て驚く。どうやら村正が来ることを伝えられてなかったようだ。

 村正はイブに背中を、トン、と押され教室に入れられる。


 「お、おわ!?」


 トトトと、転倒しないように注意さながら村正は教室に入る。何事かとイブの方を振り返る。イブはにこりと微笑む。


 「じゃ、ごゆっくり。」


 ピシャリと扉を閉めるイブ。


 村正とユウキは驚いて扉を開けようとするが細工をされたらしい。扉がびくともしない。


 「え、ちょと、イブさん?」


 反応がない。そもそも、この教室には()()()()鍵が存在しない。


 「どうしたのよ?」

 「いや、なんか、閉じ込められた。」


 ユウキが村正の所へ駆け寄り、ともに状況を確認する。ユウキも確認のため扉に手を掛けるが、村正の言う通り、どうやっても扉はびくともしない。他に出口はないかと、教室の中を確認した村正とユウキの目に映ったのは驚きの光景。


 「おっと、どういうことかな、これは?」


 村正は軽いノリのように語るが、状況はかなり大変なことを示している。


 「どうもなにも、どう考えても、この空間だけ隔絶されたと考えるのが普通でしょ。」


 そのくらいの判別は村正にもつく。村正の言いたいのはそう言うことではない。なぜ、イブが彼らをこのような状況下に置いたのかである。

 イブのことだから、またくだらないことだろうと考える村正。


 「それは分かってるよ。あの人(イブ)が何を思ってこんなことしたのかって話。」

 「知らないわよ。マサ君よく絡んでるじゃない、何か心当たりないの?」


 何かと言われても、いつもその場の思い付きで行動してそうなイブの考えなどわかるはずもない。そもそも、なぜイブが村正をこの世界へ誘ったのかすら不明のままだ。

 

 「よく絡んでるかって知ってるわけじゃ。」

 「そう、なんだ。」

 

 だが、どうにかしないとずっとこのままなんだろうな。ごゆっくりと言った以上すぐにここから出す気はないんだろうな。一定時間が経過したら出してくれるかも分からないけど。


 「どうする、じっとしてる?多分ずっとこのままと言うこともないだろうし。」

 「まあ、それでもいいわよ。なんか今は何もする気も起きないし。」


 ユウキも村正の意見に賛同する。今の2人には試合を終えた直後と言う共通の物がある。いまだ、疲れを払拭しきれてない2人にこれ以上の何かをする気力が残っていない。

 机を向かい合わせに2つ、くっ付ける。


 「マサ君、今何時かわかる?」

 「うーん・・・」


 村正は教室に掛けられた時計を見る。時間は、

 

 「ああとね、うん、時計止まってる。」

 「え~。」


 この教室に備え付けられている時計は割とこの世界では高価な物である。高価、と言うのは物が良いということ。この世界では魔力で時計の針が進む。

 この教室が外界と隔絶されてしまったことにより、魔力の供給が途絶えてしまい時計の針が止まった。


 「でも、まだこの状況になってからそんなに時間経ったわけでもないし、ほぼ時計通りじゃん?」

 「じゃあ、今は夕方の5時過ぎか。」


 この3日目の試合の開始時間が午後からであったのもあり、試合の終了の時間が夕方になったのだ。村正達の試合が終了したのは4時半。

 そこから暫くしてから、村正はイブにこのこの教室に連行された。


 あれ、僕はイブさんにここまで連行されてきたけど、ユウキは何でここにいたんだ?


 「ユウキは何で教室にいたの?」

  

 ユウキは僕に手紙を差し出してきた。差出人は何故か僕だった。おい、誰だよ勝手に人の名前使いやがったのは。それに、本当に僕からの手紙かどうかも確認せずにこの教室にユウキもユウキだけど。

 文面には、僕からユウキにこの教室に試合が終わったら来てくれと言う内容だった。この手紙をイブさんに試合前に渡されていたという。またあの人かよ。本当に何がしたいんだあの人は。

 頭の中で呑気に手を振ってるイブさんが浮かんで来るが即刻削除させていただいた。


 「この手紙のこと疑いはなかったの?」

 「渡してきた人が人だしね。」


 確かに、あの人の本性知らなかったらまあ、疑いは持たないか。差出人も僕だっていえばユウキはまず疑問は持たないだろうし。

 

 「これ、渡されたのいつなの?」

 「試合が終わった後よ。」


 手を回すのが早いのが実にイブらしいと村正は感じながらもイブが何を思ってこの空間に閉じ込めたのか、その真意がいまだに理解できない。常に突拍子もないことをしでかすイブだが今回は特に急だ。

 試合が終わった直後に村正達をこの教室に連れ込んだと思えば閉じ込める。さらに、村正にはイブが扉を閉める直前に放った言葉も頭に引っかかってる。


 「なんなんだよ、ごゆっくりって。」

 「さあ、言葉通りゆっくりとしましょうよ。」


 ユウキは椅子に腰かけ村正にも座るように促す。村正も特にすることもないのでとりあえず座ることにした。

 

 「これからどうするよ?」

 「別に、出してもらうまでこの状態でいいんじゃない?」

 「流石にそれは厳しくないか?」

 「そーお?もう私たちの試合は無いんだし、この魔術祭が終わるまでこの状態でも誰も困らないんじゃないの?」


 ユウキは呑気なことを言っているがイブさんがもしもこの魔術祭が終わるまでこの状態にする気だったら僕は嫌だよ?この魔術祭最短でもあと1日は残ってるんだし、場合によっては2日もある可能性もある。この空間には僕らとこの教室しか存在が確認できていない。扉や窓は固定されていて外部に出ることも不可能だ。さらに外部に連絡もできない。完全に孤立した空間となった。

 この空間に留まるとなるとしてご飯どうしよう。


 「でも確か魔術祭の予定って10日確保されてるよ?」

 

 その言葉にユウキは言葉を詰まらす。今年の魔術祭は例年に比べると、ハイペースで進んでいる。最も10日確保されているのは、過去の夏の魔術祭で10日が最長だったから。早く終了したからと言って、その分の予定は消されない。早く終了してしまった場合は、そのまま休みになる。元々その予定でカリキュラムも組まれているので、魔術祭の期間中に出張に出ざるを得ない先生も居るので、先生が不在、と言う事もあるのだ。


 特に会話もない状態が小1時間続きお互い気まずい空気になって来た。


 会話がないってこんなに気まずいのか。あれ、そもそも普段部屋でユウキと何話してたっけ?


 村正が頭の中で混乱している中ユウキも村正どうようにこの状況に不安とも違和感とも取れないなにか、得体の知れない感覚に襲われていた。そして同じ状況に陥っていることを互いに察した2人はこの空間が何か異常な空間であると考える。


 「この空間に長く留まるのはよくないと思う。」

 「私も同意見よ。この空間は何かが変ね。」

 

 実はこの空間イブによって細工が施されている。

 

 「どうやってこの場から脱出するか。」

 

 村正が外に出る方法を考えると、ユウキが案を示してきた。

 

 「この空間を破壊するのは?」

 「僕等にも影響が出る可能性も捨てきれない。」 

 「時間が経つのを待つ。」

 「この空間のに飲まれるかも知れないよ?」

 「外部に連絡を取るのは?」

 「伝言魔法含め全て駄目だった。」

 

 ユウキの出す案にどれも決定打に掛けるもがあった村正は中々ユウキの案に賛同できるのが無い。

 

 「どうにかして、外に出れないかしら?」

 「それは、この空間の外ではなく、純粋にこの教室の外でいいの?」

 

 互いに向き合ってユウキが色々と案を出す。それに対し村正が次々と否定していく。そんな中、ユウキが提示したのはこの空間ではなく、普通にこの教室から出ると言うもの。


 「うん、もしかしたらこの教室の外にこの空間から脱出方法がわかるかも知れないと思って。」

 

 確かに、ユウキの方法も一理あると思う。だが、この外のあの暗い場所が安全かどうかだ。もし、危険ならこの教室に留まってる方が安全ではある。

 

 「でも、あそこが危険だったら。」

 「危険を冒さずして、先には進めないぞ!」

 「何それ、迷言?」


 危険を冒さなくてもこの状況を打破することはできると村正は思いつつも、ユウキの外に出てみるというのが釈然としないが一番手っ取り速そうに思えたのでどうにかして外に出る試みをする。

 

 「試して見るか。」

 「どうするの?」

 「こうする。」


 村正は杖を窓に向ける。


 「イン・フィール!」


 ボボボと杖から火球が発射され窓に当たる。音を聞く限り窓ガラスが割れた気配はない。つまり、完全にこの教室が閉ざされた空間であることが証明された。

 この間にも村正達には妙な感覚が迫ってきており、時折頭に中がボーっとする感覚に襲われる。


 なんだ、考えが集中しない。あれ、ユウキ?


 ユウキが物凄い目線で村正を睨みつけている。ただ、そう見えているのは村正の錯覚である。実際のユウキは村正のことを心配するように見ている。

 

 「これ、精神魔法の類ね。」

 

 ユウキが独り言のように呟いてから自分のおでこを抑え、意識を安定させる。

 明らかに自分よりも様子がおかしい村正のことを安じるユウキは自信と村正に意識を安定的に保たせる保護魔法を掛ける。

 

 「カバー」

 

 ユウキが保護魔法を使ったところをイブは教室の外でモニタリングしていた。


==============================================


 「ふふ、その程度の保護魔法で私の傑作は防げないわよ。」

 

 楽しそうに村正達のことを観察していいるイブ。その様子からはとても教師の1人とは思えまい。と言うより、やる行動がどこか子供じみている。そのことで一体何度娘のシギーに怒られてきたことか。


 「あ、あのう。」


 ニタニタ笑いながら観察しているイブに声を掛けたのは村正の契約精霊であるシロ。普段は常に村正と行動を共にしている彼女が何故か今回はイブの横にいる。


 「どうかしたの?」

 「どうして、私はここに取り残されたのですか?」


 おどおどとしているシロにイブはしゃがんで目線を合わせると一呼吸置いてから優しくシロにこう告げた。


 「シロちゃんがあっちに行っちゃうとすぐにこっちに戻って来ちゃうじゃない。」


 確かに、シロにはあの空間からの脱出方法がわかる。すぐにでも2人を連れてこの場に舞い戻ってこれるだろう。だが、それでは意味がないのだ。

 常に村正の剣と言う形で肌身離さずに持ち歩かれているシロがいつ村正から引き話されたのかと言うと、村正が教室に入れられるときにイブが村正の剣を抜き取ったのだ。そのことに村正はまだ気付いていない。


 「それで、何が狙いなんです?」


 イブのこのたくらみが一体に何なのかを問いただすシロ。だが、イブはその質問に曖昧な返答しか返さない。いつまでたってもこの企みの真意を話そうとしないイブにシロも頭を抱える。ならばと、質問を変えてみる。


 「どうやったら、お兄ちゃんたちを解放してくれるんですか?」

 「あの子たちが素直になったらよ。」


 素直、と言われてもさっぱり意味が分からないシロ。今も一生懸命に出ようとしている村正達のことをただ見守ることしかできないのが歯がゆいシロであった。


 「そういえば、この空間どんな細工がされているんですか?」

 「知りたい?」

 

 イブが怪しげな笑みを浮かべながらゆるりと体をくねらせてシロに詰め寄る。シロはそっと身を引くも好奇心が勝ってしまい首を縦に振る。


 「それはね、ひそひそひそ・・・」

 「ええっ!?」


 何を聞かされたにか急に顔を真っ赤にするシロ。そんなシロの様子を見たイブはさらに上機嫌になった。

 

 「さ~て、これからどうなるか楽しみね。」

 「はい、楽しみです。」


 イブに何を吹き込まれたのかシロまでもがこの先の行く末に興味を示し始めた。


===============================================


 「何なのよここ。保護魔法があんまり効いてないじゃない。」

 

 自分の体に起きている異変が緩和していないことを悟ったユウキはこの空間がかなり上級の魔法によって管理されているという結論に達した。

 先ほどから見るからに様子のおかしい村正をどうにかしなくては思い、軽く村正の頬をビンタしてみる。しかし、「ふにゃ~」といい全く効果が無いように見えたユウキがキレた。


 「いい加減、目を覚ましなさーーーーーい!!!」


 耳元でユウキに大声で騒がれる村正。そのユウキの声は波となって村正の体をそこから振動させる。何事かと村正は周囲を見渡す。傍には腕を組んで仁王立ちしているユウキいる。


 「目覚ました?」

 「え、あ、うん。多分。」

 「多分?」

 

 ユウキの村正を見る目が一層厳しくなり、村正はそのことに身の危険を察知する。今度は今以上の何かが襲ってくると。


 「大丈夫、大丈夫です。はい。」

 

 慌てて返事をし直す村正。ユウキは若干村正の返事を疑いながらもそれがいつもの村正であるとが確認できると表情を緩める。


 「で、何?」

 「何じゃないわよ。この空間からどうやって出るのよ?」


 まだ、この空間からの脱出方法が確立されていない状況では正直、この先の行動方針を立てようがない。さらに、精神に直接得体の知れない何かが干渉してくるなど最悪な状況である以上早々にこの場から立ち去りたい2人である。

 

 「イブさんの真意がわかればここから簡単に出れそうな気もするけど。」

 「でも、分からないんでしょ。」

 

 どうしようもない状況にあることを再認させられる村正。さらにここに来て大事なことに気付く。


 

 「あれ、え、嘘?」

 「どうしたの?」

 「シロがいない。」


 ようやく、村正はシロがこの空間にいないことに気付くのであった。村正がそのことに気付くの要した時間はこの空間に入ってから15分以上が経過した時だった。


===============================================

 

 「シロちゃん、今気づいたみたいよ。」

 「お兄ちゃんったら、全くです。」


 今まで気付いてなかったことに不貞腐れるシロ。かなり機嫌を損ねたようで、


 「お兄ちゃんだけ閉じ込めてもらっても全然かまいませんので。」

 「あら、良いの?」

 「今日はみっちり反省してもらいます。」

 「でも、契約のこともあるでしょ?」

 「だからです。」


 村正はシロとの契約で片時も離れることを許されない。それなのにシロのことを忘れていたのでは彼女の怒りに触れてしまうのも仕方ないだろう。


 「シロちゃんって意外と嫉妬深いのね。」

 「それとこれとは別です。」


 シロがぷっくりと頬を膨らませたのをイブは「可愛いな」と思いながら村正達の観察を続けた。

次回At49.妹は怒らせると怖い

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