混乱
「リル!大変だ、リルが心配していた通りになった」
「サタームスの私兵がきたのか、シファーに父上に連絡し援軍を出すように頼むんだ」
「わかった」ホクトのテレパシーが切れた。
「ヘイロン、悪いが港湾事務所の2階につけてくれ」
ヘイロンに窓につけてもらい事務所の窓から入る
「騎士団長、グライシス邸にサタームスの私兵が攻め込んできた兵士総員、あと領民も連れてグライシス邸に至急向かってくれ」
「総員ってクラーケン相手に1人で戦うつもりか?」
「1人じゃないさ、俺には信頼できる仲間がいる、いいから早く言ってくれ」
そう言ってまた窓から飛び出した。
「ヘイロン、クラーケン岸壁から引き離すぞ、派手にぶちかませ! 」リルがそういうとヘイロンは、口からクラーケンの頭を目掛けて「龍の雷」を放った
この日初めてクラーケンは叫びながら海の中に沈み込んだ。
何人かの兵士が、海に放り出されたが命からがら崩れた岸壁に上がってきた
「総員、領民を誘導するとともに至急グライシス侯爵邸に向かう、敵はサタームス私兵だ! 」
兵士たちは、バケモノより人間相手の方が幾分マシだと言わんばかり慌ててグライシス邸に向かった。
あっという間に港には、リル、ブルー、ヘイロンそしてクラーケンだけになっていた。
「下でわちゃわちゃされていたら、間違って殺しそうだったから最初から俺たちだけでよかったな」とヘイロンが物騒なことをいう。
「お前、そういうこと言うからハックロンにいつまでも子供扱いされるんだよ」
とブルーが諌める。
「相手も、かなり熱くなってきたようだ気を引き締めていくぞ、とにかく核を探せ!」
体勢を戻したクラーケンが、襲いかかってきた先程までクネクネと兵士をいたぶっていた足が、動きを変えて槍のように鋭く攻撃してくる。
俺を狙って墨を吐く、墨が掠った皮のブーツがジュッと溶けた。
「こっわ! 溶かす墨なんて笑うしかないな」と苦笑いした。
墨袋ごと取り除かないとやばいな。
「ブルー、クラーケンの頭を風の渦で包み込めるか? 」
「できると思う、こんな大きなの初めてだけどやってみる」
ブルーが力強く返事した。
「よし、ヘイロン、ブルーの作った渦に電撃を合わせてくれ」
クラーケンの攻撃を避けながら作戦を練る。
「クラーケンがそそり立った時が、チャンスだ、行くぞ!」
最初に動いたのがブルーだった、風をいつも以上に纏い駆け出すクラーケンの頭をくるくる駆けながら渦を作るブルーが、「風の渦」を発動した瞬間、風の渦がクラーケンの頭全体をぐるぐる巻きに締め付けた、そこにヘイロンが電流を流す。
バリバリバリ!と雷鳴がなるとともにクラーケンが硬直した。
今だ! リルが全身を使ってミスリルソードを頭の付け根部分を平行に切り付ける。これは前世で習った殺陣の技だ。
見事にスパンっと頭は落ちたが、墨は少しこぼれ落ちて3隻ほど船の一部分が溶けていた。
まだだ、核が見つからない、奴の目か? 段々焦りが増してくる。いずれにしても海中戦になるかもしれない、仕方ない核を探しながらできるだけ足を切ってしまおう。
痺れから回復したクラーケンは怒りで我を忘れ暴れ出した崩れた岸壁に足を這わせて乗り出してきたのである。
VSクラーケン続きます