選手入場です!
「さぁお待たせいたしました!ただいまより選手紹介に入らせていただきます!」
花柄半そでシャツに短パン姿の司会のお兄さんが、ほんのりと煌めく結界の外からアナウンスをかけ始めた。
湖から少し離れた砂地に木材が埋め込まれており、それがラインを形成しコートのようになっている。
そして観客はそれを囲むようにして、集まっていた。
俺たちは関係者ということで、前の方にある木でできた折り畳み椅子の席に案内されている。
マリーちゃんもいるのでこの配慮は助かった。
「すごい人だなぁ……」
「うん……何人くらいいるんだろう?」
「お姉ちゃんたちまだかな!」
俺たちがソワソワしている中で、マリーちゃんだけはいつも通りだ。
ファーナは分かるか?
そうですね。
大体五百人前後といったところでしょうか?
それはまた大人数だな。
それだけ楽しみにしている人がいたということか。
ファーナたちには頑張ってほしいな。
「それではまず北地区の選手紹介です!」
コートに通じる砂地の道を堂々と歩いて行く四人組の女性たち。
「砂浜でのスポーツを専門としている彼女たちですが、さすがの肉体美ですね!」
うっ、強そうだ……
二十代半ばくらいだろうか?
日焼けした肉体は引き締まっており、無駄な肉は一切ないといった感じだ。
コートの周囲を回りながら、観客へ手を振る四人。
やがて俺の目の前も通過していく。
爽やかな笑みと、お揃いのタンクトップのビキニがカッコいい。
(アスリートのお姉さんもいいなぁ……)
(うん……)
俺とルースがこそこそと話していると、
「お兄ちゃんたち、お顔がにやけてるよ?あとでお姉ちゃんたちに言っちゃおう!」
「「やめてください!」」
マリーちゃんが頬をふくらませて怒ってしまい、すぐに謝ることになった。
続いて東西と続くが、どのお姉さんも鍛え上げられた肉体美を見せてくれる。
そして最後にフレアたちの紹介だ。
「南地区は予定されていた選手が体調不良でキャンセルとなってしまった!そんな中急遽出場が決まった彼女たちですが、どのような闘いを見せてくれるのでしょう!?ベテランのアスリートたちが集う中でのダークホースとなるのか!?乞うご期待です!」
フレアが先頭を歩き、リーナ、サリア、クリス先輩と続く。
他の地区の代表と違い水着はバラバラで、他の出場者と比べると最年長のクリス先輩でも幼く感じてしまう。
だが、それでも彼女たちならいい勝負になるはずだ。
「あの子たち可愛いけど、勝負となったら他のチームの方が勝ちそうだよな?」
「ああ、赤髪の子と金髪の子は引き締まった身体しているけど、他の子は普通の女の子っぽいからな」
後ろからそんな声が聞こえてくる。
優勝チームを予想する人たちだろう。
まあ、普通に考えたらそうなるよなぁ……
完成している他のチームに比べて、まだ発展途上のように見えるのは仕方ないだろう。
勝っていることといえば、サリアとクリス先輩の大きな胸くらいのものだ。
そこは関係ないでしょう?
こほん……
「頑張れよ!フレア!リーナ!サリア!クリス先輩!」
「僕たちここで応援してるから!」
「がんばれー!お姉ちゃんたちぃぃぃ!」
俺たちができるのは応援しかない。
その声は四人に届いたようで、グッと親指を突き上げて応えてくれた。
なんとも頼もしい四人だ。
「さあこれで全チームが揃いました!今から投票タイムとなりますので、投票券をお買い求めの方はこちらにお並びください!」
司会の人の隣に机が用意され、スタッフの方々が受け付けをしている。
投票券一枚が小金貨で購入できるようだ。
「俺買って来るから、席取っといて」
「どのチームを買うの?」
「当然、俺たちの代表だろう?」
「だよね。僕の分もお願い」
「任せとけ」
「私も欲しいけど……お小遣いお姉ちゃんが持ってるから……」
「カイ、マリーちゃんの分もね?」
ルースが小金貨を二枚渡してきた。
「あいよ」
「いいの!?」
「マリーちゃんだけ仲間外れはしたくないからね?」
「ルース君好き!」
「ちょ、ちょっとマリーちゃん!くっつき過ぎだよ!?」
マリーちゃんは嬉しそうにルースの腕に抱き着いた。
ははは、微笑ましいなぁ。
俺はそんな二人を残して、多くの人が並ぶ場所へと向かう。
マスター、随分と寛大ですね?
いつもなら血が出そうになるほど唇を噛んで、恨めしそうにしているのに。
あのさぁ……マリーちゃんはまだ小さいだろ?
子ども相手に嫉妬なんかしないよ。
ですが、五年ほど経てばフレアさんによく似た可愛らしい少女になると思いますけどね?
母親のシャルネさんも美人ですし。
……ギリギリィィィ!
う、羨ましい!
年下の可愛い子に慕われるなんて!
俺もそんなシチュエーションに憧れるんだが!?
それでこそマスターです。
安心しました。
振り返ると、いまだにマリーちゃんはルースにギュッと抱き着いている。
俺の脳内で五年の時が経過していき、すっかりと大人びたマリーちゃんが映し出された。
二人とも、幸せになれよ……
想像力が豊か過ぎでしょう。
呆れるファーナの声を聞きながら、俺は一人で長い列に並ぶのだった。




