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召喚されたリビングメイルは女騎士のようですが契約しますか? オネガイシマス……マスター  作者: think


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戦乙女の眠る場所へ

「あら?あなたがフレアが遅れてくるって言っていたお友達かしら?」


「はい!初めまして!ボク、クリスって言います!よろしくお願いします!」


木剣を片付けて玄関に戻ると、シャルネさんとマリーちゃんがいた。

クリス先輩は屈託ない笑顔を浮かべて二人に自己紹介をする。


「わぁ!クリスお姉ちゃんって超美人!」


「あはは、嬉しいな!マリーちゃんも可愛いよ!」


ぎゅっとマリーちゃんに抱き着かれたクリス先輩は、よしよしと頭を撫でながら嬉しそうに微笑む。


「クリス先輩はあっという間になつかれましたね。ホントにすごいと思いますよ」


「そ、そうかな……?」


何気ない褒め言葉だったんだが、恥ずかしそうにうつむいてしまう。

そんなクリス先輩の様子を見てから、俺の顔を見る。

そして最後はフレアへと視線が向いた。


「……はぁ、お姉ちゃんも大変だね」


「な、何がだ!」


「別にぃ~」


「生意気な!」


「お姉ちゃんが怒ったぁ!」


きゃはははと笑いながら、マリーちゃんはシャルネさんの後ろへと隠れる。


「朝から姉妹ケンカしないの。マリーは朝ごはんの用意を手伝ってね?あなたは汗を流してきてください。フレアはクリスさんを露天風呂に案内してあげて」


「はぁい」


「うむ!朝風呂は良いものだ!」


「わかりました。クリス先輩、こちらへどうぞ」


「そういえばすっかりと汗かいちゃった!ありがとうございます!」


「いえいえ、ゆっくりと疲れをとってね?」


テキパキと指示を出したシャルネさんは、優しく微笑み、マリーちゃんとともに調理場へと戻っていく。


「いやぁ……どうやってシャルネさんを口説いたんですか?」


「ば、ばか!それは……!」


熱血騎士と深窓の令嬢のような二人の出会いが気になってしまった。

つい疑問を口に出すと、フレアが慌てたように止めに入ってくる。

だが遅かったようだ。


「ほう!気になるかね!」


らんらんと目を輝かせて、俺の肩を両手でがっちりと掴む。


いだだだだだ!


興奮状態のクレドさんの握力は本当に人間かと思うほどだ。


「あれは20年ほど前のことか……!私も若かったが、シャルネも今と同じくらい若く美しかった!」


ちょっと言葉の意味がおかしくないですかねぇぇぇ!?

シャルネさんはいっさい変わってないってことになりますが!?


「こうなったら母上が叱るまでは止まらんからな。まあ耐えてくれ。それじゃあクリス先輩、お風呂にいきましょうか」


「うん!よろしく!」


「じゃあ僕は顔洗わせてもらおうかな」


「ちょっと!俺を一人にしないで!」


「ふはははははは!私がいるではないか!まあ聞きなさい!シャルネは魔導学校の才女と言われていてな!それはもうライバルも多かった!だが私は諦めなかったのだ!」


それからしばらくの間、でかい声でめちゃくちゃ早口で語りかけられた……


「あなた?お風呂に入ってくださいと言いましたわよね?」


「す、すぐに入ってくる!」


ひと段落したのか、シャルネさんが止めに入ってくれたのだが、まんざらでもないように微笑んでいる。

その表情見てすぐに俺は察した。


の、のろけを聞きながらお料理してたんだな……


「ありがとうカイ君。お料理にはおまけしてあげるわ」


「それは、嬉しいです……」


ラブラブなご夫婦なことで……

俺はそんな二人に羨ましさを覚えつつ、苦笑した。



朝からいろんなことがあったが、他のみんなよりもソーセージが一本多い朝食をいただけたので満足だ。

そうした後、俺は制服に着替えて一人で外に出る。

今日はみんなでファーナのお墓参りに行く予定なのだが、わがままを言って先に行かせてもらうことにした。

ファーナと二人でゆっくりと街を見たかったからだ。


綺麗に舗装された道を歩きながら、落ち着いた街並みを見渡していく。


どうだ?何か記憶にあるものはあるか?


いえ、かなり変わりましたね。

私の記憶に残るものはほとんどありません。

ですが、この坂といった地形は変わりませんね。

私の住まいは坂の上にあったので、こうやって下りながら街へと向かっていたのは記憶に残っています。


そうか。

俺もファーナが歩いていた道を歩いているんだな。


ふふっ……このように歩きやすい道ではありませんでしたが。


そうやって少し歩いていると商店街に到着した。

多種多様な商店が並ぶ中、ふと書店に目がいく。

店頭に並べられた本の中には、ファーナに関する伝説やお伽噺の書物があった。


「あっ!オーレリア様のご本だ!」


すれ違う母と娘のやり取りを目にすることになる。


「お母さん!オーレリア様の絵本買って!」


「もう本当に好きなんだから……」


「だってオーレリア様ってカッコいいもん!」


「ふふふ、そうね。どれが欲しいのかしら?」


「えっとねぇ!」


じっくりと選んだ絵本を母に買ってもらった少女は、嬉しそうに紙袋を抱えて喜んでいる。


良かったな。

大人気じゃないか?


は、恥ずかしいですね……


ファーナが慕われている証拠だよ。


本当に、嬉しく思います……


そんな親子の様子を見届け、花屋に向かう。


ファーナはどんな花が好きなんだ?


そうですね。

特にこだわりはありませんが、可愛らしいものが好きです。

マスターにお任せします。


むぅ……お任せが一番難しいのだが……


「すいません。このお花をください。贈り物なので包装して欲しいのですが」


「はいよ!彼女かい!?」


「あはは、そのようなものです」


マ、マスターったら……


俺は黄色の小さな花を購入した。

そしてそのまま商店街を抜け、門番の人に行き先を告げると丘へと向かう。

クレドさんからもらった通行証を見せると、すぐに通してくれた。


街から丘へと続く道を十分ほどを歩いて行くと、丘の入り口に到着する。


緑がたくさんあって綺麗な場所だな。


ええ、ここはまったく変わっていませんね。

私が生きていたときと同じです。


俺は坂道に足を踏み入れる。

さすがに街のように舗装されている道ではないが、しっかりと踏みしめられていて歩きやすい。

フレアに聞いていた通り、制服でも十分に登れそうだ。


虫の鳴き声と、風の音だけが聞こえるおかげかだろうか?

時の流れがゆっくりと感じられるなか、歩みを進めていくと頂上に到着した。

すると多くの十字架が目に入り、自然と厳かな気持ちが湧き上がってくる。


うわぁ……よく街が見えるなぁ


ええ、絶景ですね。


そこで眠る人たちに街が見えやすいようにするためか、高い木や構築物は一切ない。

素晴らしい風景を堪能した後、俺は綺麗に並んでいるお墓の名前を一つ一つ確認していく。


懐かしい名前ばかりですね……

ともに街を守るため、私に付き従ってくれた者たちの名です……


その中で俺にも見覚えのある名前があった。


クラルド・ラーカシア。


ふふっ……あなたには怒りもありますが、不思議と憎みきれない人柄でした。

あなたと結婚した女性はどういった人だったんでしょうね?


そして、一番奥にひときわ大きな石碑がある。


風化し、欠けたりしている部分もあるが綺麗にされている。

俺は購入した花を石碑の前に置き、手を合わせた。


マスター、ありがとうございます……


ははは、なんだか不思議な気分だな。

ここで眠っている人はこんなに近くにいるのにな。


俺は照れ隠しをするような思いで、そっと石碑に触れる。

その瞬間、


「私も不思議な気持ちです。こうして、ここにいられることがどれほどの奇跡でしょうか……」


ん?


頭に声が響いたわけではない?

俺の耳を通して、声が聞こえた。


声が聞こえた方を向くと、白いワンピースを纏った美女が立っている。

その美しい顔は、いつか見たファーナのものだ。


召喚をしたわけでも無い。

なぜファーナは現実に現れたのか?


「ど、どうして?」


「私にも分かりません。ただマスターが私を人として想い、この場所まで来てくれた。それがこの奇跡の結果だと信じています」


こうしている間にも魔力の減少を感じる。

繋がりが切れたわけではないようだ。


「そうだと俺も嬉しいな……えっと俺の身体に戻れるのか?」


「はい戻れますよ」


そう言うとファーナの身体は光となり、俺の体に戻っていった。


普通に召喚した場合はリビングメイルの格好なのか?


そうですね。

特別何か変わったことはないようです。

ただ、マスター以外ともお話しができるようになりましたね。


むぅ……


おや?どうかしましたか?


いや、別に……?


あっ?もしかして、やきもちですか?


別にそんなんじゃないし!


「マスター?」


「い、いきなり出てくるなよ……」


俺の前にまたファーナの身体が現れた。


「あなたと出会えて、本当に幸せです。そして、こうして触れ合うことをどれだけ夢見たことか……」


ファーナの身体が俺を包み込んでいく。

残念ながら、人と同じような温もりはほとんどない。

物質として太陽の熱を纏っているだけのようなものだ。


だが、俺のシャツを濡らすものは彼女の涙でしかない。


「俺もだよ、ファーナ……」


俺はファーナの身体を包み返す。


不甲斐ない俺を幾度も守ってくれた戦乙女の身体は、とても柔らかいものだった。

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