エンディングから修羅場です!
俺は、万感の想いを込めてファーナの身体を抱きしめていた。
それはまるで、お姫様を救い出す物語の最後を締めくくるようなクライマックスの場面。
「カイィィィ……」
「いつの間にそんなサラサラの髪の女性とお知り合いに?」
「隠れてデートなんてゆるさない……」
「ボクもふつふつとこみ上げるものがあるね……これは、なんだろうな?」
なのだが、残念ながら物語とは違い、綺麗には終わらない。
いきなりの場面転換で一気に修羅場へと突入する。
「あ、あれ!?みんなもう来たの!?」
「ど、どう説明いたしましょう!?」
フレア、リーナ、サリア、クリス先輩、ルース、それにマリーちゃん。
後から来るはずのメンバーが、全員そろって俺とファーナの抱き合う姿を見ていた。
「もう来たのではないわ!」
「しかもすごく美しい人じゃないですか!」
「……説明なんていらない」
「お仕置きするだけだから……」
俺とファーナが身体を離しフレアたちの方を見ると、魔獣の比ではないほどの威圧感を放ちながら近づいてくる。
「「ひぃぃぃぃぃぃ!?」」
あまりの恐怖でファーナと悲鳴が重なり合う。
「ちょ、ちょっと待って!?」
「そうだよお姉ちゃんたち!」
おお!さすが冷静な二人だ!
なんとか四人を止めてくれ!
「お墓の前で騒いだり、乱暴なことをしたらダメだよ?」
「うんうん、ルース君の言う通り。ヤるなら下でヤらないと」
違う。
そもそも暴力を止めてほしいのだ。
場所の問題ではない。
「なるほど」
「故人の眠る場所で騒ぐのはよくありあせんね」
「うん、血で汚れちゃうし……」
「じゃあ、いこっか?」
そんな誘い文句で誰がついていくんですか!?
ニッコリ笑顔で可愛いけども!
「待ってください!私はオーレリア・シェルト・ハーランドです!いまはマスターのもとでリビングメイルをやっています!」
俺のことをいつだって守ってくれるのはファーナだ。
ファーナは俺をかばうように一歩前へと歩みを進めた。
「オーレリア様だと?」
ピタッと全員の動きが止まる。
おっ!いけるか!
「ふざけたこと言うんじゃない!貴様もまあ美しいが……オーレリア様はもっと美しい!」
「そうです!公園の像はもっと美しいものでした!髪は綺麗ですけど……」
「おっぱいも小さい。話に聞いていた魅力的なスタイルとは言いにくい。キレイだけど……」
「よ、よく分からないけど……そうだそうだ!」
ぴきっ……
あっ……ファーナがキレた……
一部に褒め言葉があるとはいえ、好き勝手言われては良い気分にはならない。
「この、小娘ども……黙っていれば好き勝手言ってくれますねぇ……来なさい」
その言葉で二振りの光の剣が、ファーナの前に召喚された。
げっ!光の剣を召喚しやがった!
「あ、あの剣は……」
「ものすごく見覚えがあるんですが……」
「うん、とっても」
「もしかして、本当にリビングメイルさん!?」
「マリーちゃん、とってもお花が綺麗だよ」
「えへへ、そうだね」
オロオロと慌てるフレアたちに対して、ルースとマリーちゃんは他人事のように離れた場所に咲いている花を見に行った。
ガシッ!
ファーナは力強く剣を握りしめると、
「お仕置きと言いましたね?いいでしょう、かかってきなさい。ですが、黙ってはやられませんよ」
前へと進みだした。
「「「ひぃぃぃぃぃ!?」」」
「まじ、ごめん」
先ほどとは反対にフレアたちが震え上がってしまう。
「ストップ!剣は無し!召喚禁止!」
俺の言葉で二振りの剣はふっと消えていく。
「マスター!なぜ止めるのですか!」
「止めるに決まってんでしょうが!現代は殺し禁止です!」
「それくらい分かっています!ですので半分だけです!」
「半分もダメ!」
なんとかファーナを食い止めつつ、俺はフレアたちの方を見て口で合図を送る。
ほ、め、ろ。
と、に、か、く、ほ、め、ろ。
伝わってくれ!
俺の必死の合図は、
「ち、近くで見ると銅像よりも美しいではないか!私の目が悪くて申し訳ございませんでした!」
「そうです!髪はサラサラ!大きな青い瞳!とっても綺麗で羨ましいです!」
「黄金比とも言えるようなスタイルのバランスが最高。女神さまみたい」
「う、うんうん!ボクもそう思うな!」
伝わったぁぁぁぁぁぁ!
ピタッ……
数々の賛辞により、ファーナの歩みが止まる。
いつも見ていたファーナならこれで……
「えへへぇ……そうですかぁ……?」
よし!めちゃくちゃ単純で助かった!
ファーナはニマニマと嬉しそうに微笑んでいる。
さっきまでの鬼のような形相とは比べものにならないほどのゆるさだ。
「もちろんです!こうして実際にお会いするとさらに美しい!」
「それにそんな可愛い感じもたまりません!」
「ギャップ萌え」
「なんだかとっても可愛いなぁ!」
フレアは憧れのまなざし。
リーナは頬を桃色に染めている。
サリアはグッと親指を上げて、クリス先輩は笑顔でファーナを褒めた。
どうやら本心からの言葉のようだ。
「もう、褒めすぎです……はっ!」
ファーナはこほんと咳払いをし、
「改めまして、私、オーレリア・シェルト・ハーランドです。マスターからはファーナと呼ばれています。この度、新たなスキルにより身体を物質的に構築することができました。どうぞお見知りおきを」
すっかり理性を取り戻したファーナはお姫様らしく丁寧なあいさつをすると、凛々しく微笑む。
ふぅ……なんとか一件落着できた。
一時はどうなることかと思ったよ……
「カイ、僕は君のこと信じてたから」
「うん!私もカイお兄ちゃんのこと信じてたよ!」
何言ってんだこいつら。
「てい」
「あいた!」
「いたぁい!」
二人の可愛いおでこにデコピンくらいしても罰は当たらんだろう。
ファーナとフレアたちが楽しそうに話をしている隣で、俺はちょっとしたお仕置きをしたのだった。




