表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺が指輪の物語(仮  作者: トム麻呂
31/45

31話 それは予想の範囲内




「隊長…なんだいその話は、アタシはそんな事一言も聞いちゃ…」


 狼狽えるゼーリカを気にもせず、フリュッソンは続ける。


「最初の異変は春の中頃程になります、魔族領境界警備の一小隊が消息を絶ちました。これはアレント領の最北端の砦に属する者たちです。まだ雪はありましたが、特に悪天候と言うこともなく、彼らは最前線を担う手練れ達でした。」


 スッと顔を上げてマキナウス夫妻を見やる、がすぐに視線を落とす。


「その数日後、ダンドリア領の北部境界線でも同様の事が起きます。」


「…隊長…さっきから何を…」


(ゼーリカ、少し落ち着け。続けてくれ。皆も殺気立たずに最後まで聞いて欲しい。)


 マキナウス家の面々はそれぞれ違う表情でフリュッソンの話を聞いていた。デクスとミラさんは無表情に、ロクサルの爺さんはジッと目を閉じて、レッセンは眉間に深い皺を刻み、ベルはあからさまな怒りを見せていた。


「更に少しして春の終わりに入った頃、アレント領の北端で小規模な戦闘がありました。低級の魔族との小競り合いかと思われましたが、帰還した隊員達が奇妙な事を言ったと報告なあったのです。」


 フリュッソンがぐるりと周りに視線を向けた後、目の前の俺を最後に見やって続けた。


「敵の中に人間が居た、と。」


 ロクサルが、ぬぅ…と唸る。基本的に魔族は人間と行動しない。一部の亜人は例外だが、それも知能が低いタイプの奴らが殆どだ。


「そして春の終わり頃になります、アレント領の最も北側に点在する小さな砦の一つから…騎士達が消えたのです。」


 そこまで黙って聞いていたミラさんが困惑した様に問う。


「消えた…?どう言う意味です?」


「言葉通りです、定期連絡が来ない事を訝しんだすぐ南の砦から伝令が走りましたが、砦に詰めていた十数人の騎士達が一人も居なくなっていたのです。この様な事は私の知る限り過去一度も起きた事はありませんでした。」


 ダンと机を叩きながらミラさんが前のめりに続けた、俺が揺れてカタンと音が響く。


「だから消えた、と言うのはどう言う事かと聞いています!死んだのですか?それとも逃げたのですか!」


「…戦闘の痕跡はあった様です、致死量と思われる出血痕、破損した武具などは見つかったそうですが…騎士達自体は…その後が全くの不明となりました。」


(喰われたんじゃなくてか?北部には獰猛な肉食獣も居たし、今はどうか分からんが魔族の使役する魔獣にも肉食の種類が沢山いたろ?)


 ベルが小さく、うぇ…と顔を顰めた、フリュッソンはそれはありえません、と前置きして


「中型の魔獣に喰われたとしたら、必ず肉片なり骨なり食べ残しが見つかる筈です、境界付近では人間を丸呑み出来る種は確認されておりません。それも十数名分、となると大型魔獣が片手以上侵入した事になります。境界結界の魔術師達がそれに気づかない事などありえません。」


 フリュッソンに向けていた視点がスッと下がる、そろそろ不機嫌さを隠しきれなくなってきたレッセンが机から俺を摘み上げた。


「アレント様、お話はよくわかりましたが、まだ肝心の…「レッセン、いいよ、私から聞こう。ありがとう。」申し訳…ありません。」


 さて、とこの話が始まった時と同様にデラクがポンと膝を打つ。面々へ順番に視線を送り、後ろに控えたレッセンへうん、と頷いた。


「異変の事はよく分かったよ、一領主を収める者としては明日は我が身かもしれないね。そろそろ核心を聞きたいと思うのだが、フリュッソン=アレント殿?」


「御察しの通り、保険です。実を言えばこの会話は想定済みでありました。遅からずお話しするつもりで居た事を先に申し上げておきます。」


「ふむ、保険…。大体の想像していた通りの返答だね、では私の予想を述べさせて貰っても?」


 フリュッソンは軽く頭を下げて、構いません、と返答した。そして立っていた数名にソファーに腰かける様促してから口を開く。


「国王陛下はまだお若い、王女殿下はクラリスの少し上…程だったかな?国王が前線で剣を振るう訳にもいかない、聞いての通りレンゼリア様は国のトップが振るってはいけない剣なのさ。だが、王女殿下に持たせる訳にもいかない。そうだね?」


 はい、と返事を聞いた後、斜め前に腰掛けたレッセンに問う。


「レッセン、マキナウス家は王家と遠縁に当たるって知ってたかい?」


 おい、あんまり強く握るなレッセン。ギリギリ音がうるさい。落ち着け。


「詳しくはございません…ついさっきトーノ殿に伺ったのが始めてですので…」


 デラクはポリポリと頭を掻きつつ、何もかもだねぇ…と独り言つ。


「厳密に血の繋がりはないよ、デクス=マキナウスの妻になられたのは、勇者王の義理の妹に当たるお方だったからね。」


 レッセンとフリュッソンを除く全員が僅かに騒めく、血縁は無いが仲の良い兄妹だったのを今でも覚えている、デクスに何度リア充爆ぜろと言った事か。


「その異変、聖剣の代償、装者不在、なら遠縁の。まぁそんなとこさ。正当な血筋って訳では無いんだけど、誤魔化しが出来る範囲で都合が良いのが居たってわけだね。」


 肩を竦めてふぅ…と首をふる。


「こちらも結論を言おうか、国王様にお伝えした通り、貴族の端くれの義務は果たそう。但し、聖剣の正式な装者にしようとするなら全力で拒否するよ。何もかも伝わってるってのは陛下もご存知のハズだろう?」


「はい、勿論ご存知の上でレンゼリア様をお止めしませんでした。トーノ殿、貴方の受けた神託…ですか?それが無ければ保険など考える必要は無かったのですが。」


 デクス、フリュッソンの二人がお互いに視線を交わす、…まぁこいつらをここに座らせた時からこんな会話になる事は分かっていた。さてと、妥協案を提示しようか。


(ありがとうよ、騎士隊長、デクス。まず騎士隊長さんよ、エミリアを危険に晒すつもりは無いし、レンゼを使わせるとしても二段階解放までだ。その程度なら魔人と戦える戦力にはなれないのはわかるな?)


「…それでは意味が(そんで、デクス。お前の言う義務は…俺が変わって果たそうと思う。レンゼリアは遠からず王都に戻す、北部へは俺が行こう。)…ははっ!」


 吹き出したフリュッソンが口元を押さえ、失礼、と俺に手を向ける。


「失礼ですがトーノ殿、貴方は…さしたる能力も持たない英雄の従者の装飾品でしょう?古の大戦での戦果をお聞きしてもよろしいか?筋力増強…でしたかな?ふっ…何がお出来になると?」


(魔力光…)


 部屋の中央に小さな光が生まれる、全員が驚きの目を光の出現に向けた。ロクサルの爺さんが一番驚いてるな。


「だ、誰じゃ⁉︎今この魔力光を出したのは誰じゃ⁈儂が見ていた限り誰も魔力を練りこんではおらんぞ⁈それに詠唱…発声すら…」


 ロクサルがソファーの後ろまでヨロヨロと進み出て魔力光に手を伸ばす。


 魔術…魔力を集中させ、詠唱で放つ、魔術師なら相手が魔力を集中させるのを感じない訳が無い、詠唱はどれだけ短くしても必ず発声が必要。これはこの世界の常識だ。


だからこの爺さんが一番驚いているんだろうな。


(成長度…「トーノ殿…まさかお主か⁈む、無詠唱…魔力が感知できぬと…そんな…」成長度1、なんだとよ。今の俺は。爺さんと騎士の二人は知らなかったっけ?俺が回復の魔術が使える様になったの。「か、回復じゃと⁉︎」爺さん、ちょっと落ち着け。)


 背もたれの後ろで唸り続けるロクサルは気にしないようにしよう。


(成長度を高めるのにレンゼリアには協力して貰う事にする、その後はお前ら二人と王都に帰還。元々レンゼリアが着いてくるとは思ってなかったんだ、少しだけ成長度を伸ばすのに役立つ程度だと考えてる。そして俺があのクソ神の『次のイベント』を邪魔しに行くのさ。)


 クソ神?と首を傾げるゼーリカ。たまーに可愛いな、このデカイねーちゃんは。


「さ、最後の下りは良く分かりませんが、貴方は矛盾した事を仰っています!エミリア殿に危険は及ばせないと、レンゼリア様ですらご自身のみの移動には制限がお有りなのに…一体どの様になさるつもりか⁈」


 残念!そこも想定済みです!レンゼは自分で浮いたり動いたりは出来るが、実は魔力を消費している。枯渇すると当然身動き出来なくなるんだな。いずれ俺も出来る様になるかもしれんが…そこは…。


 俺を持ったままレッセンがマキナウス夫妻の前に進み出た、そして二人に向けて限界まで頭を下げ、


「申し訳ございません、デラク様、ミラ様、トーノ殿の目論見に協力する為、お暇を頂きたく思います。そしてこの指輪をお預かりする事をお許し願えないでしょうか?」


「レッセン師匠⁈」

「レッセン…お主…」


(見ての通りエミリアが俺を嵌めて無くても魔術は使える、レッセンが…協力してくれる、エミリアには危険は及ばない。騎士のお二人さんよ、これならどうかな。)


「レッセン………。」


「先程トーノ殿から相談を受けた際に決めました、僭越ですがエミリアお嬢様には些か荷が重う御座います。この老骨がどこまで役に立つかは分かりませんが、我が家の宝をお守りしたいのです。」


「レッセン……………すまない。」


 頭を下げ続けるレッセンにデラクとミラさんも頭を下げた。


(悪いな、フリュッソン。思惑とは少し外れるだろうが、お前らが勝手ならこちらも勝手にさせて貰う。国王にはそう伝えておけ。あとこの事はエミリアとレンゼリアにはギリギリまで内緒にしとけよ?手がつけられなくなったらお前らも困るだろ?)


「むぅ…ですが…陛下には…」


「隊長…」


 おーおー、悩んでるな。だが譲らないぞ?…あの時レッセンと二人して決めたからな。


「分かりました、一旦王都へ連絡員をやりましょう、それで…」




 ーーーーーーッッッッ!!!!!


 


(今の声は‼︎?)


「クラリス様です!別室の方から!」


 室内の誰よりも早く反応したレッセンがソファーと机を飛び越え勢い良く扉を開ける、俺を握りしめたままディクスとクラリスが控えていた別室へ向けて走り出す。

 速い、話し合い前に見せた身のこなしを思えば当たり前だが、とんでもない身体能力だ。

 一息の内に別室まで辿り着き、勢いのまま開いた扉から見えた光景は




 浮かぶレンゼリア、驚きの表情のまま固まるクラリス、それを支える様にエナ、兄の名前を呼びながらディクスを揺さぶるエミリア、そして床に倒れ伏したディクス。



(だから言ったのだ、この馬鹿者が。)





◇異世界の指輪◇

装備分類:リング

成長度:1

防御力:0

魔力値:6

アビリティ:筋力増強+1

サイズ調整

アクティブ:鑑定

パッシブ :魔力自在化

視覚自在化

思考制御


◇説明◇

詳細不明の金属で出来た指輪。

お話パートが長くて申し訳ありません

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ