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地球軍特別防衛隊  作者: 悪魔神官長
第二章 アメリカ奪還編

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第26話 月へと続く緑の道

だが、勝利の歓声は上がらない。

ガリクソンを押しつぶした1000m級の楔が、不気味な脈動を始めたからだ。

特装砲のエネルギーで、周囲の状況がわかりにくい中、それでも何かを感知した凛は、


「……! 艦長、楔内部から、これまでの比ではない高エネルギー反応を感知! ……全長、推定800メートル以上。……楔自体が、『超々大型Alog』のまゆになっています!!」


核施設に突き刺さった1000m級の楔。ガリクソンの野望を物理的に圧殺したその巨体は、不気味な脈動を始め、周囲のリバースグラビティ粒子を漆黒の渦へと変えていく。

楔の外殻がメキメキと音を立てて崩れ落ち、中から、これまでの超大型すら凌駕する、禍々しい『黒い巨体』が姿を現し始めた。


それを見ていたみんなは、動くことが出来なかった。


雷電のコクピット内で待機していた哲夫が、


「……デカい。あいつ、以前の奴らの倍はあるぞ……」


バルダー・ゲートで待機しているエレーナは、


「……RGバスターカノンが、通用するかしら……」


月基地を突破した、真の『楔』から生まれた、地球上最後の、そして最強の超大型Alog。 不死鳥の特装砲とRGバスターカノン隊、そしてミラー艦隊が、人類の存亡をかけて、この巨大な絶望へと挑む。


「……! 艦長、楔が『羽化』を始めました! 内部から、これまでの超大型を遥かに凌駕するエネルギー反応を感知! ――来ます!!」


凛の叫びと共に、楔の外殻が爆散した。 中から姿を現したのは、全長800メートルを超える漆黒の『超々大型Alog』。それは生き物というより、惑星を初期化するための巨大な『工廠プラント』そのものだった。その周囲を、大型が盾となり、さらに浄化を終えてなお増殖し続ける小型・中型の群れが、黒い雲のように覆い尽くす。



「全機発進! ミラー准将、中型以下を抑えて!」


春花の号令に、明星型2隻と流星が全弾を解放する。だが、敵の数は無限。


「了解した。……明星型2隻、流星、全弾解放! 弾幕で『道』を作るぞ!」


数百発のミサイルとエネルギー砲が、ワシントンの空を埋め尽くす。小型・中型が次々と撃墜されるが、楔(巣)からは次々と新たな個体が溢れ出し、数の暴力でミラー艦隊を押し包もうとする。

グラディエーターで戦況を確認していたジャックが、


「ちっ、湧いてきやがる! 智則、和彦! 左右を抑えろ! 正面の敵は不死鳥に任せろ! 雷電とエレーナの射線を死守するぞ!」

「了解! ――堕ちろ、化け物共!」


智則の鋭い応答と共に、伊沢隊、伏見隊がミラー艦隊の切り開いた空域に群がろうとするAlogを遮断する。ミサイルが尽きればバルカンを、バルカンが尽きれば近接兵装で、文字通り『肉の壁』となって超々大型への道をこじ開けていった。

不死鳥もまた、主砲、副砲、ミサイルを絶え間なくばら撒き、大型から小型まで全てのAlogを弾幕の嵐に巻き込む。

雷電のもとに迫る個体は、雷電とバルダー・ゲートの通常攻撃が叩き落とす。それでも足りない時は、ジャックのグラディエーターが放つ外部エネルギー砲が横合いから敵を消し飛ばした。


「哲夫、前だけを見ろ! 背中は俺たちが守ってやる!」


ジャックの通信に、哲夫が短く応える。


「……感謝します、ジャックさん! ――行くぞ、エレーナ!」


全機が一体となり、Alogの壁に巨大な穴を穿つ。 黒い雲を切り裂き、哲夫の雷電とエレーナのバルダー・ゲートが、随伴する明星と共に突撃した。


眼前に立ちふさがるのは、障壁を維持する3体の大型。 哲夫が作戦プランを叫ぶ。


「エレーナ、プラン通りに同時攻撃だ! 二人のRGバスターカノンを一点に集めれば、あの壁を壊せるはず・・・、いや俺たちで破壊するんだ!」


作戦プランを受け取ったエレーナは、


「了解! ……明星、エネルギー最大! フレームがもげても構わない、全エネルギーを回して!!」


二機のRGバスターカノンが、同時に咆哮を上げた。

RGバスターカノン× 2=ダブルRGバスターカノン。

二条の青白い光柱が空中で螺旋状に絡み合い、極大の破壊力となって大型1体を瞬時に消滅させた。そのまま光の奔流は超々大型の障壁を真っ向から貫き、分厚い外殻に巨大な『穴』を穿つ!


「……くっ、腕のフレームが……限界! 制御系が焼き切れる!!」

「トドメは、不死鳥だ!! 姉さん!」


『穴』の向こう側、剥き出しになった巨大な核。

穴が出来る光景を見ていた岩蔵が、溢れる汗を拭いもせずに笑った。


「へっ……ボウズ共、よく繋いだ。……艦長! 叩き込んでやれ!  これが俺たちの、生きてる証だ!!」


岩蔵が、凛が、そしてさやかの意志が、不死鳥の艦首へと全エネルギーを収束させる。

春花はこの機を逃さず、全力を込めて右手を振り下ろす。


「特装砲、全エネルギー臨界……撃てぇぇぇッ!!」


ズガァァァァァァン!!!


放たれた特装砲の光柱は、超々大型を内側から爆散させ、ワシントンの空を埋め尽くしていたAlogの群れを根こそぎ虚無へと帰した。

爆発音すら遅れて聞こえるほどの破壊のあと。

超々大型が消滅した瞬間、ワシントン周辺に漂っていた不気味な粒子が、淡い緑色の光へと変質し始めた。


「……終わったのか?」


雷電のコクピットから見上げた空は、先ほどまでの絶望が嘘のように、高く、澄み渡っている。

観測し続けている凛は、


「……敵反応、すべて消失。……ですが、艦長。ワシントン周辺の環境データが書き換えられています。……『緑』が広がっていきます」


かつての権力の中心地は、いま、美しく、冷徹な『楽園』へと姿を変えた。 春花は、遠く月を見上げた。そこにはまだ、全ての元凶が居座っている。


「……ええ。でも、これは終わりじゃない。私たちが終わらせに行くのよ」


同じく月を見上げた哲夫は、


「……行こう。さやかが待っている、月へ」




ワシントンD.C.を埋め尽くしていた鉄の残骸も、ガリクソンと共に潰えた野望も、いまや急速に芽吹いた鮮やかな緑の下へと隠されようとしていた。 戦場には有害な放射能も煤煙も存在しない。ただ、不自然なほどに澄み切った風が、不死鳥の装甲を撫でるだけだった。


不死鳥とミラー艦隊は、かつてのホワイトハウス跡地に近い平原に降着し、最終補給を開始した。


「……信じられるか? ここは、数日前までAlogが占領していた場所なんだぜ」


ジャックがヘルメットを脱ぎ、外の空気を吸い込む。そこには、森の中にいるような濃密な植物の匂いがあった。 カイルや智則たちも、機体の足元に広がる見たこともない花々を黙って見つめていた。

エレーナがつぶやく。


「……綺麗ね。でも、怖いわ。私たちの知っている地球が、どんどん遠くなっていくみたいで」

「……Alogは壊すだけじゃなかった。彼らなりの『再生』をしていたんだ」


哲夫が、指先に止まった小さな羽虫を見つめる。それは地球の生物なのか、それとも書き換えられた世界の住人なのか。


「……でも、そこに僕たちの居場所はない。だから、僕たちは抗うしかないんだ」



ドックでは、岩蔵が最後の調整に余念がなかった。ハワイから来た若い整備兵たちも、黙々と作業に従事している。


「おい! 冷却材の充填をケチるな! 月へ行けば、ここみたいに空気が冷やしてくれるこたぁねえんだぞ!」


怒鳴りながらも、岩蔵の目は優しかった。彼は、さやかが遺したデータの先に、さらなる高みを見出していた。

そこへ、ハワイ基地から頼もしい援軍がやって来た。


「お待たせしました。鳳艦長。……ミラー准将も、無事で何よりです」


隆が率いてきたのは、最新鋭の明星型5隻。それを見た杏が、力強く頷いた。


「この明星型5隻は、現地のボランティア兵で編成しAIサポートで運用してもらいましょう。そして、地球のパトロールにあたらせます。……私も不死鳥と共に『宇宙』へ行きます。哲夫くん、あなたの戦いを最後まで見届けさせて」


杏の言葉に、哲夫は静かに頷き返した。彼女が共に居ることは、哲夫にとって亡き隊長やさやかの面影を繋ぎ止める、唯一の絆だった。


ドックで岩蔵と再開した隆は、晴れやかな顔で微笑んだ。


「お久しぶりです、おやっさん!」

「ふん。いっぱしの顔をするように、なったじゃねぇか!」


岩蔵は鼻を鳴らしながらも、嬉しそうに笑った。


「そうだ、さらなる整備兵の追加と、流星用の追加装備です」


隆が披露したのは、ハワイで育成した精鋭整備兵たちと、流星および随伴の明星型2隻のための『大気圏離脱用RGブースター』だった。


「へっ、気が利きやがるぜ。これがあれば、自力で重力圏を振り切れるぜ」


岩蔵と隆、そして整備兵たちは不眠不休でブースターの装着作業を進める。宇宙へ行くための『脚』が、次々と艦隊に備わっていった。



一方、ブリッジでは凛が、ユーラシアからアメリカ全土に広げたネットワークを総括していた。


「……世界中で、Alogの活動が停止しています。残存個体はすべて自爆、爆散し、この緑の中に溶け込んでしまいました。地球は今、かつてないほどに『静か』です」

「……嵐の前の静けさ、ね」


春花は、補給物資のリストを閉じ、モニターに映る月を見上げた。そこには、自分たちの未来を奪い、そして勝手に『再生』を始めた、理解不能な意思が潜んでいる。



補給が完了し、艦載機たちが次々と不死鳥の腹部へと収容されていく。



格納庫で、宇宙仕様へと換装された雷電のシートに身を沈めた哲夫は、操縦桿を握りしめ、前方の暗黒を見据えた。


「待ってて、さやか。――今、行くよ」


それは、過去への別れではなく、未来を奪還するための宣戦布告だった。



ミラー准将が流星のメインスクリーン越しに、力強い声で呼びかけた。


「準備はいいか、春花艦長。……これより先は、我らが一度は敗れ、多くの仲間を失った死地だ。だが、今の我らにはあの時なかった『翼』がある。――さやかや杉里が待つ場所へ、一気に駆け抜けるぞ」


不死鳥のブリッジで、その言葉を受け止めた春花が深く頷き、全艦へ向けて号令を発する。


「ええ。NEasdp、全艦、発進! ――目標、月面基地の奪還、および、Alogの殲滅!」


不死鳥が重力制御(RG)エンジンを全開にすると、周囲の緑が激しく揺れ、巨大な船体がゆっくりと、だが力強く大地を離れた。


眼下には、緑に包まれた美しい、けれど静まり返った地球が遠ざかっていく。

彼らの視線は、もはや過去ではなく、白銀に輝く「月」の冷徹な光へと固定されていた。


第一部 地球再生編

 第二章 アメリカ奪還編

完了です。

ここまでで、第一部の地球再生編も完了です。

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