第32話 MOSは受けないと決めた日
1|ハローワークの担当者に、聞いてみた。
「官公庁の事務を希望しているんですが、
MOSって、取ったほうが有利ですか?」
担当者は、肩肘張らずにこう言った。
「MOSは……“頑張った記念”ですね。
自信にはなるけど、必須じゃありませんよ。」
……頑張った記念。
高校の卒業旅行で買う
“ご当地マグカップ”みたいな扱いだ。
思い出としては大切。
でも、日常の主役ではない。
それなら、――WordのMOSは、受けない。
Excelは……余裕があったら受ける。
(※今まで一度も余裕など存在した試しはない)
面接では、こう言おうと決めた。
「WordとExcelの“実務レベル”を、
訓練校でしっかり身につけました!」
資格よりも、実際に使える力。
今の私が大事にしたいのは、そこだった。
──────────────────────────
2|Word終了 → Excel前夜
ハロワの2回目の相談も終わり、
明日からはいよいよ Excelの授業 が始まる。
担当者は、元気に言った。
「Excelは企業でよく使いますからね。
難しくないし、先生も分かりやすく教えてくれますよ!」
私は営業スマイル100%でうなずきながら、
心の中では、こうつぶやいていた。
(……うちの講師、
滑舌悪いし説明が謎解きなんですけど??)
でも、声には出さない。
アラカンは “空気を読む”が最強スキル。
──────────────────────────
3|先生の“前回と同じセリフ”、再び
私「予習したいんですが、家ではどこまで……?」
先生「いや〜予習はいりませんよ。
テキストさらっと読むくらいで。
パソコンは触らないでね。」
……はい来た、このセリフ。
Wordの最初に聞いて、
信じて、 地獄に落ちた――あの伝説の殺し文句。
私は、心に誓った。
「同じ間違いは、二度としない。」
──────────────────────────
4| アラカン、4日間の“自主Excel合宿”へ突入
こうして私は、
4日間ひたすらExcelと向き合った。
・テキストを見ながら操作
・引っかかったところはノートへメモ
・「5大関数」を理解
・相対参照と絶対参照の沼を突破
・SUMのカッコ閉じ忘れで地獄へ転落
・それでも 8章まで到達
Wordのときに味わった、
「わからないまま授業が進んでいく恐怖」
あの置いてけぼり感。
――もう、二度と味わいたくなかった。
今の私は、 理解しながら、前に進めている。
その実感が、なにより嬉しかった。
だからこそ、 明日が楽しみになった。
「先生、関数どう説明するんだろう……?」
「相対参照の例え、ちゃんと通じるかな……?」
もはや授業というより、
実験の観察記録を見る気分である。
──────────────────────────
5| 明日、Excel覚醒が始まる。
Wordでたくさん泣いたぶん、
Excelでは、笑いたい。
もう
“置いてけぼりの私”には戻らない。
今日のまとめ
・ MOSは「頑張った記念」→ 私は受けない
・ 自分に必要なのは 実務で使える力
・ Excelは4日間の予習で準備万端
・ 明日から、新しい戦いが始まる
【次回予告】
Excel初日、教室がまさかの “無音”。
あの地獄のWord軍団が、なぜか今日は全員おとなしい。
「嵐の前の静けさかな?」
そう思っていたら――
翌日はいよいよ
“5大関数の魔界”に突入。
予習済みの私 vs 予習ゼロ勢の沈黙。
最初に崩れるのは……誰!?




