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クラスのアイドルは俺にだけ嘘をつく  作者: 砂糖流


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42/42

42話 あるアカウント

 とうとう長い長い夏休みが終わった。


 憂鬱な新学期が始まり、教室内には肌が焼けた者、髪型が変わった者……そして、相も変わらず大勢に囲まれている流川さん。


「全国ツアーのライブ行ったよ! 凄い良かった!」「俺はネットの配信で見た! ちょー良かった!」「赤音ちゃん大丈夫だった?」


「来てくれてたんだ」「見てくれてありがとう」「今ではもうピンピンしてるよ」


 いつもの如くクールに返す流川さんの拳には微かに力が込められていた。


 そして、もう一人のアイドルはというとまだ学校には来ていない。


 人気沸騰中の人気アイドルなのだから、スケジュールが合わないのも分かるが、流川さんが普通に来ているのに如月さんだけ来ていないのは妙だった。


 ただでさえ全国ツアーが終わって疲労が溜まっているはずなのに、そんな連続で予定を入れるだろうか?


 きっと原田さんなら止めるはずだ。


 それなら彼女は一体……


 ◇◇◇


 朝の九時。私は自室のベッドで一人悶えていた。


 どうしよう……これ以上彼を好きにならないって決めたはずなのに、好きが止まってくれない。ナンパから助けられて更に好きになっちゃった。


 もうこれ以上は絶対に……絶対に……


 決心しようとした途端、ブワッと前日の出来事が頭を駆け巡る。


『彼女は俺のものなので』


 あの言葉が脳に足跡をつけて、私の顔を熱くさせる。


 冷房の音が聞こえているはずなのに、そんなのお構いなしに身体は火照っていく一方。


 本当にどうしちゃったんだろう……こんなんじゃいつまで経っても決心なんてできない。


「紫乃ー? お腹はもう大丈夫なのー? ご飯食べれそう?」


 突然ドア前から聞こえてくるお母さんの声で心臓が大きく跳ねる。


「大丈夫、大丈夫だから。入ってこないで」


「でも……」


「本当にもう大丈夫。十分後には家出るから心配しないで」


「分かった。ご飯置いとくから。食べれたらでいいから食べて」


「うん。ありがとう」


 そんな『ありがとう』という自分の言葉で最後の最後にまたしても彼が頭をよぎった。


 もうこれ以上は絶対に……。


 ◇◇◇


 結局俺の心配は杞憂に終わり、その後如月さんは遅れて学校にやってきた。


 二学期初日の放課後はいつも通り空き教室に行き、いつも通り流川さんと時間を潰した。


 長かった夏休みも気づけば終わっており、呆気なく始まった二学期もあっという間に時間が過ぎていく。


 俺がルミナスのマネージャーだったのが遠い過去になっていくが、特に後悔はなかった。


 彼女たちはアイドル。俺はファン。その境界線を超えてはならないのだ。そう、普通なら……


 それでも今日も彼女は俺の隣に腰を下ろしていた。


 未だに慣れないこの状況の中、俺はふと思う。


 一体どうして流川さんは俺なんかとつるむようになったんだろう。


 始まりは俺が彼女の愚痴を見てしまった時だった。


 初めは俺もただ愚痴を吐かれるサンドバッグだと思っていたけど、今の彼女は愚痴の一つどころかルミナスのことさえあまり話題に出さない。


 たまたま俺と彼女が巡り会って、それで仲良くなって今の関係に至る、と楽観的な考え方は到底できなかった。


 なぜだか、それだけじゃない気がする。


 もしかして流川さんは……


 そこまで考えたところで、思考を遮るかのごとく隣の彼女が口を開く。


「ねぇ、小林ってツイッターやってる?」


 突然の問いかけだった。


 無論、推しやルミナスの投稿を確認するためのアカウントは持っている。


 だが、それを言ってしまえば俺がファンだということがバレてしま――


「これって小林だよね?」


「え?」


 そうして見せられた画面には、見覚えのあるアカウントが映し出されていた。


 最近のルミナスの踊ってみたツイートがリツイートされているそのアカウントは紛れもなく……俺のアカウントだった。






最後までお読み頂きありがとうございます。


午前7時投稿。投稿はこの時間帯になると思います。


少しでも「面白い!」と感じましたら、ブックマークと★★★★★、よろしくお願いします!

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