70.名誉あること
「ノーブル伯爵とエルドという魔族の、呪い付きの契約書が交わされていた事実を確認しました。恐らくは常に情報は抜かれているでしょうし、今回の事件もそれが原因かと思います」
ギルドマスターはふむと頷いて足を組む。
「なるほど。だがシセ、今エルドと言ったか」
「はい」
「それはいいことだ。私も宮廷へと今回の事案を解決すると手を挙げた際に、多少は情報を貰っていてね。どうやら、魔族の親玉という人物もエルドというそうだ。なるほどなるほど、これは場合によっては、一気に解決するかもしれないな」
ギルドマスターは立ち上がり、くつくつと笑う。
「なかなかに楽しくなってきたぞ。今こそ、我がギルドが、我が領地が、日の目浴びる時が来た。早速、詳細を話そう」
ははは……なんかすごく盛り上がっているな。だが事実、完全なる名誉挽回する時が来たのは間違いない。ウェイド辺境伯のためにも、頑張っていかないと。
「宮廷には、魔族側からルヴィン王子の身柄の取引を指定されている場所がある。そこというのが、簡単に言えば魔族側の本拠地だ。宮廷側にそこを指定するというのは、かなりの暴挙ではある。向こうも自信があってこそのものなのだろうが、我々にとっては都合がいい」
敵の本拠地……ということは、人間が住まう場所とは違う魔族領のことだろう。そもそも人間が立ち入ることは滅多になく、あったとしても歴代の勇者が挑んだ程度のことだろう。
「我々はそこに直接出向き、エルドの首を討つ。それができれば、魔族陣営もかなり痛いことになるだろう。そして、しっかりとルヴィン王子も奪還する。まあ我々もかなりのことを言っているわけだが、しかし同時に我々はその任を達成する力量はある」
ちらりとウェイド辺境伯を見る。彼はどこか不安そうにしている。だけど、私と目が合った瞬間に、確かな自信へと変化していった。けど……エリックはすごく不安そうだな。
「頑張りましょう」
「ういっす……!」
私の一言で多少は気合いが入った様子である。
ほどほどに私たちの方も気合いは入ってきた。準備は万端といったところだろう。
「シセ。直接魔族の本拠地へと転移することは可能かね?」
ギルドマスターの問いに私は答える。
「もちろんです。魔族側は人間のように、結界を張るような真似はしません。なので、問題なく転移できるかと」
「さすがだ」
ギルドマスターは私たち三人を順に見ていく。
「君たちは今から、名誉あることをしようとしている。己の実力を存分に発揮し、我々が最大級の戦果を挙げようではないか。頼んだぞ?」
三人は深く頷く。
私は踵を返して、転移魔法を展開する。
「行きましょう、二人とも」
「もちろんだ!」
「ああ!」
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