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【書籍発売中】神獣連れの契約妃~加護を疑われ婚約破棄されたので、帝国皇子の右腕に再就職しました【角川ビーンズ文庫】  作者: 潮海璃月/神楽圭
第二章

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18.情報交換と交易禁止

 ベルシュラムはその名を冠する商会によって統治されている。街の中心たる広場に大きな口を開ける建物があるかと思えば、それがベルシュラム商会館だそうだ。


 あちらこちらと歩き回って、到着した頃には、太陽も南天を過ぎていた。ヴァレンと一緒にその商会館を見上げると、石造りの三、四階建てで、正面には何かの花を模した紋章が刻まれていた。入口には衛兵も立っていて、私達が入ろうとすると、しっかりと槍が交差した。


「身分証はお持ちですか?」

「失礼しました。こちらです、ブリュイ商会のラウレンツ様の代理で参りました」


 例の、ラウレンツ様自らが代表となっている商会のことだ。衛兵はニコラウスが差し出した書簡を一瞥し「ああ、それでしたら」とすぐに槍をしまってくれた。


「うかがっております。二階の応接室です」

「ありがとうございます」


 建物は外から見るよりも縦に長いらしい。最初に目に入ったのは、入口の真ん前に置かれた四角い小さなテーブルと二脚の椅子だった。こんなところに誰が座るのだろうと思ったけれど、どうやら展示品らしい。その奥には、テーブルランプや金属ペン、イヤリングが順々に並べられていた。


「ベルシュラムで有名な品々ですね。商会の権威を示しているんです」

「なるほど……」


 ニコラウスに無理矢理つけられた腕輪と同じだ。思い出すと鬱陶しく、後手に外そうとしたけれどやっぱり上手く外すことはできなかった。


「ところで、私は一応ブリュイ商会の使いで、ロザリア様は私の付き添いということになるでしょうから、そのおつもりで」

「それは構いませんが……」


 エーデンタール国然り、商談の場に女性がいるなんて有り得ない。ラウレンツ様は男でも女でも使えるものは使うという考え方の持ち主だけれど、曰く「根本的に王子妃が差配するのは王子がよほど愚鈍な証拠」らしい。私が表舞台に立たされず、代わりに矢面に立たされていた理由が分かる常識だった。


 だからここで侍女ということになるのは構わないけれど、でもニコラウスの侍女というのは癪だ。この腕環も、急に首輪みたいに思えてくる。必死にいじくりながら、しかしこの時間を無駄にすまいと周囲を観察する。階段を上りながら奥の様子も見ると、開いた扉の向こうからは忙しなく書類や印鑑を動かす音が聞こえていた。商人の街と称するのにふさわしい音だった。


 通された応接室は、どちらかというと会合の場に近かった。中心に長机が置かれ、ニコラウス以外に四人が席に着いている。ニコラウスが挨拶しながら着席すると共に、私は他の付き人に倣ってニコラウスの後ろに控えた。


 咳払いをして口火を切ったのは、頭をすっかり白くした初老の男性だった。


「新顔がいらっしゃるようですな」

「ええ、ご挨拶が遅れまして失礼いたしました。ブリュイ商会のニコラウスと申します」


 ここは商人の集まる場、相手の身分は関係ないのだろう。ニコラウスが家名を名乗らずとも、誰も「どこの」とは聞かなかった。もちろん、何も言わなくとも相応の地位にあるのは、その所作で丸分かりだろう。


「どうも。私はベルシュラム商会のランジェルと申します。本会合のことはご存知という前提で、進めさせていただきます」


 私は何も聞いていない……けれど、後でニコラウスに聞くしかない。癪だけれど。


「お集まりいただき感謝します。本会合もすっかり定例となって参りましたが、何か議題はございますかな」

「私から、最近我が商会で売れ筋の商品のお話をさせていただきましょうかな。女性の化粧品ですが、このような色つきのものが人気でして」


 思わず笑いだしそうになってしまった。今までは白粉だったのが、今はすっかり色付きの粉に変わったらしい。しかも微笑ましいことに、お偉い官僚くらいの年の人達が「おお、これはなかなか」「髭の痕を隠せていいのではありませんか?」「髭など、伸ばしてなんぼでしょうとも」と大真面目に盛り上がっている。商会の会合ってこんなにほのぼのしてるのね、とほっこりしてしまった。


 かと思えば、しばらくすると「ところでエーデンタール国では」と話題が百八十度変わった。話題を投げたのは最初の初老の男性だ。


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