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noblesse;oblige  作者: 夏桜羅(原案・設定協力)、雪羅(原作・執筆担当)
第3章 騎士 -oath of sword-
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騎士 -oath of sword- 22

「ふむ……僕は助かった、のか?」


 ダルタニアンは、爆発の衝撃を感じたにも関わらず、まだ意識があることに気が付き、つぶやいた。

 センサーもカメラも、情報系は全て焼かれてしまったらしく、周囲の状況を計り知ることはできなかった。

 直後、コックピットが無理やりこじ開けられ、人工的な光の輝きが、ダルタニアンを照らした。


「レーヴェル卿! 大丈夫ですか!?」


 真っ先に顔を出したのは、シャルロットだった。肩で切り揃えられた亜麻色の髪が、さらさらと風に揺れている。その表情は明らかに動揺していて、目元には薄っすらと涙の膜が張っているようにも見えた。

 ダルタニアンは、そんなシャルロットを視界に収めつつ、未だに自分が生きているという事実に納得がいかないかのように、疑問を口にした。


「ああ、どうやら無事なようだ。しかし、なぜ……?」

『そりゃまあ、俺たちがなんとか間に合いましたからねぇ』

「その声……カルロス卿か!?」

『ええ。正直ギリギリでしたが、無茶しただけの甲斐はあったようです』

「サミュエル卿まで!? 君達はなぜここに!?」

『まあ、アレです。騎士の友誼ってやつですよ。爆風にレーヴェル卿が飲まれた時はさすがにやばいと思いましたけど』

『ええ、さすがにあの爆風の中でレーヴェル卿を庇うのは骨でした』


 どうやら、あの二人が、自爆した漆黒の〈エクエス〉からダルタニアンを救ってくれたらしい。とはいえ、機体は間に合わなかったらしく、コックピット以外はほぼ残されていないようだが。


「カルロス卿、サミュエル卿、君達のおかげで助かった。感謝する。ありがとう」


 ダルタニアンは、その騎士の友誼に報いるために、二人に向けて礼を言った。本当は騎士として礼を送りたいところなのだが、彼がいるのは、狭いコックピットの内部であり、入り口はシャルロットが塞いでしまっているので、そんな余裕はなかった。主にスペース的な意味で。


「説明は後にしましょう。さあ、レーヴェル卿、どうぞ」


 目元を拭ったシャルロットが差し出した手を、ダルタニアンは素直に取った。きめ細やかな柔肌の感触。だが、一方で、その手は鍛え上げられた騎士のそれでもあった。

 手を取るまでは素直であったダルタニアンだったが、シャルロットが指す先にあるものを目にすると、さすがに難色を示した。

 大破してしまった機体の代わりが欲しいのは事実だが、シャルロットから借りるわけにはいかない。そもそも、そうした場合、機体を無くしたシャルロットはどうするつもりなのか。


「フランソワ卿、私にこれを?」

「いえ、同席してもらおうと思ったのですが、いけませんでしたか?」


 それはなお悪い選択である。

 さも不思議そうに首をかしげたシャルロットに、ダルタニアンは大袈裟なため息で答えた。


「私は誇り高き騎士として、淑女(レディ)と同席するなどという無作法はできない」

「私は構いませんが……」

「そういう問題ではない! そもそも、フランソワ卿! 君も貴族の一員ならば、男女7歳にして席を同じゅうせず、という言葉くらいは聞いたことがあるだろう!」

「ええ、もちろんありますけれど……」

「ならば、淑女(レディ)として、男である私と同席するなどという振る舞いはすべきでないことは明白ではないか!」


 ダルタニアンが真理を語る研究者のような口調で断定する。さっと腕を振り、胸を張る。実にエレガントな仕草である。

 が、純白の騎士服は黒く汚れ、振り乱した髪が跳ね、顔には憔悴の色濃い満身創痍の様子では、そのエレガントさも半減である。

 魂と仕草のエレガントさは輝かんばかりであっても、見た目がエレガントでなければ、伝わるエレガントさは減じてしまう。それでは真にエレガントであるとは言えない。


『俺はどうでもいいんで、早くしてくれません?』

『カルロス卿、レーヴェル卿の言うことも最もではあります。とはいえ、言う場面を選ぶべきだとは私も思いますがね』

『空気読まない、ってか読めないんですよねー、レーヴェル卿って。アルカンシェル卿にも何回もぶん殴られてましたし」

『ああ、彼は沸点が低そうに見えましたが、本当にそうでしたか』

『いや、我慢してる方だと思いますよ。アルカンシェル卿は』

『……侯爵子息に手を上げているというのは我慢していることになるのでしょうか?』

『完全に無視されてないだけマシだと思ってるんですよ、俺は』

『……正直、社交界で好かれるタイプではないでしょうね。侯爵家嫡子のはずなのですが……』

『そりゃそうですって。ってか、あそこの婦人方からは総スカン食らってそうだと思いませんか?』

『否定できないのが、レーヴェル卿の恐ろしいところです』

『騎士としては、一級なんですけどねー』

『紳士としては、まだまだといったところでしょうか?』

『相手の機微を察せないのはよくないですもんね』

『紳士は真摯でなければいけませんからね』

『……それ、洒落のつもりですか?』

『いいえ、近衛騎士団での教えです』

『最初に決めた団長(バカ)誰ですか、それ?』

『さあ? 私は知りません』

『うわ、近衛、けっこう憧れてたんですけどねー、就職希望先から外しときます』

『いえいえ、まともな方が大半ですよ』

『一部おかしな人がいるって認めてるんじゃ……?』

『さて、どうでしょう?』


 カルロスとサミュエルは、そんなダルタニアンの主張を聞きながら、聞こえよがしにそんなくだらない会話していた。

 侯爵子息を殴るアルカンシェルーージンが無礼なら、侯爵子息を徹底して馬鹿にしている彼らも大概、無礼だったが、幸か不幸か、ダルタニアンはそんな些細なことで腹をたてるような人間ではなく、彼らは事実準拠で話しているせいか、礼を欠いているとは欠片も思っていなかった。


「ふふっ……」


 対するシャルロットの反応は少し困ったように、だがどこか嬉しそうに笑みをこぼしただけだった。


「フランソワ卿?」

「いえ、レディと言われることなどなかったもので。こう、堂々と言われると、少々、戸惑うものですね」


 たおやかな仕草で、口元を押さえてくすりと控えめな笑みを浮かべながら、困ったように眉を顰めてみせるシャルロット。舞台女優のごとく、実に様になったエレガントな仕草である。もっとも、やっている本人にはそんな自覚はないようだが。


「大袈裟なことではないさ。淑女(レディ)淑女(レディ)と扱うのは、騎士として、貴族として当然のこと」

「いえ、簡単なことではないでしょう?」

「ふむ、難しいことではないのだが……目の前にある女性が淑女(レディ)であれば、自然とそうなるのだから」

「ふふっ、お上手ですね。 ですが、私も長らく騎士として訓練を積んだ身。そのような扱いは結構ですよ?」


 やんわりとした口調で、だがはっきりと断ったシャルロットだが、ダルタニアンの揺らがぬ空気の読めなさは、そんなことを御構い無しに、己が騎士道を貫き通す。いや、押し付けていると言った方が正しいかもしれない。


「すまないが、これも私の騎士道の一端なのだ」

「正直に言うとですね。そのような扱いには慣れていないんですよ。だから、その……恥ずかしくて」


 控えめに目を逸らし、白い肌をほんのりと赤く染めながら言うシャルロット。毅然とした騎士としての一面とはまた違う、蠱惑的な年相応の少女としての一面を見せていた。


「ふっ……ならば慣れればいい。未熟な私で良ければ、付き合おう」


 真顔でそう返したダルタニアンを見て、カルロスは思わずぼそりとこぼした。


『これ、フラグ立ってるんですかね?』

『いえ、私には、二人とも素でこれをやっているように見えますが……』

『ですよねー』


 まるで舞台劇の一幕を切り取ったかのような会話だが、彼らはこれを素でできるらしい。

 ダルタニアンは常にこんな感じだが、シャルロットはアルカンシェルとの試合で受けた印象とは間逆の印象を受ける。とはいえ、ザビーナからの任務を帯びていた試合の時と、プライベートと言っていい今を比べるのは間違えているだろうが。

 それ以前に、おそらく楽園(エデン)の騎士の中でも類を見ないほどに礼を尽くさぬ騎士であろうアルカンシェルに対する態度と、楽園(エデン)の騎士の大半がここまではやらないと断言できるほどに礼を尽くそうとするダルタニアンへの態度とを比べること、それ自体、比較がしていないと言えよう。


『正直、私には理解できないのですがね』

『俺にも無理です。勝手に区切らないでくださいよ』

『これは失礼……おや?』

『へっ、どうやらお客さんみたいですね』

『ええ、そのようです』


 カルロスとサミュエルは、つい先ほどまでの気の抜けた雑談を切り上げ、臨戦態勢に入る。

 その緊張感を速やかに感じ取ったダルタニアンとシャルロットは、目線を交わすと、


「緊急事態です。構いませんね?」

「無論だ。仕方あるまい。敵は待ってくれないようだ」


 それだけの会話で素早く、〈ファルシオン〉に乗り込む。つい先ほどまでは、二人だけが理解(わか)り合える謎の空間を構築していたのだが、いざ敵と相対するとなれば、騎士として迅速に最善の手を打つことに躊躇いがない。

 切り替えの早さは、直前の彼らがふざけているように見えたとしても、本物の騎士であることを示している。

 最初からそうしておけば良かっただろうに、と傍観者だったサミュエルとカルロスは思ったが、それをあえて口にするほど愚かではない。


「シャントゥール卿、シルペストル卿。お二人とも準備はいいですね?」

『もちろんです』

『ええ』

「夜に乗じて動いているのはプロです。どうやら他はすでに撤退したようですから。そして、彼らは情報を守るためならば、自爆さえします。よって、慈悲をかける必要はありません。確実に、抹殺します。よろしいですね?」

『了解』

『了解しました』


 シャルロットが座るコックピットのサブシートに座ったダルタニアンは、少々不満げに唸り声を漏らしたが、個人的感情で騎士としての本懐を曲げるようなことはしない。

 すなわち、民を守る盾であること。それを成す前提が成り立って初めて、騎士としての在り方や、主義主張を通すことができる。

 今の最善は、確実な殺害による自爆の阻止。先の爆発は、ダルタニアンを含めMCに乗ったもののみしか巻き込まれず、被害も最小限にすんだが、市街地中心部で自爆を使われれば、その被害は想像を絶するものになるだろう。

 故に、民の安全のために、確実に殺す。それが騎士として為すべきことだ。


「では、私が仕掛けます。シャントゥール卿とシルペストル卿はそれぞれ側面から攻撃を開始してください。では、攻撃開始!」


 シャルロットの叫びに呼応して、サミュエルの〈レガトゥス〉とカルロスの〈エクエス〉が走り出す。


「レーヴェル卿」


 ダルタニアンは続く言葉を察して、それを遮った。淑女(レディ)の言葉を遮るのは騎士としては褒められたことではないが、この状況下では、ダルタニアンも騎士としてのシャルロットを優先する。


「フランソワ卿、私のことは気にしないでもらいたい。君の戦いを間近で見るチャンス、逃すつもりはない」

「ふふっ……わかりました。少し揺れますが、お気になさらず」

「見せてもらおう、二剣使いの腕前を」


 シャルロットの〈ファルシオン〉が、一瞬の間に踏み込む。迅雷の速度の踏み込み。ジンと同種の、機体のブースターと重心移動をフルに活用した加速技術だ。ジンと同門だけあって、その踏み込みは鋭い。

 ダルタニアンも見よう見まねで一応、再現したが、これはものが違う。さすがは本物と言ったところか。

 正面から突っ込んでくる〈ファルシオン〉に気が付いた漆黒のMCが銃口を向けてくる。

 しかし、シャルロットは避けない。重心を左右に揺らしながら、小刻みなステップを繰り返し、速度を緩めず、駆け続ける。

 銃口が火を噴き、銃火が降り注ぐ。だが、〈ファルシオン〉は、小刻みなステップによって、狙いを絞らせず、数少ない直撃コースの弾丸は二本の剣が全てはたき落とす。

 一見単純ながら、複雑な舞のように、一分の隙なく構成された機動は、銃弾の嵐を容易く吹き散らしていく。なんという精緻な操縦技術。なんという胆力。

 凄まじい技量だ。さすがは、円卓の騎士(ナイツ・オブ・ラウンズ)、ザビーナ・オルレアンの親衛隊長を務めるだけはある。


『もう二機追加です。フランソワ卿、そっちはお願いします』

『私たちでこちらは対処します』

「わかりました。こちらのMCを排除後、そちらの援護に向かいます」


 このままでは危険と判断したのか、黒いMCは後退を開始する。だが、シャルロットはくすりと笑んだだけだった。それは、ネコ科の肉食獣を思い起こさせるような、しなやかで、それでいて獰猛な笑み。


「逃すとーー」


 〈ファルシオン〉が、廃墟の陰に隠れるようにして、一時、弾丸を振り切る。そして、瓦礫の陰から滑り出すように再び、神速の踏み込み。

 瞬時に距離を詰め、さらに、瓦礫の山の中から蹴り上げたコンクリート片を盾にする。続けて、前転気味に弾雨を避け、片手を付いて機体をバネのように使って跳ね上げ、跳躍。敵MCの頭上を飛び超える。


「ーーお思いですか?」


 振り向きざまの一閃。

 腕から胸部を抜けて反対側の腕までを一撃で両断する。

 〈ファルシオン〉を追いかけた銃口は、結局、その機体に追いつくことなく、その役目を終え、地面に突き刺さった。


「エクセレント!」

「ふふっ、ありがとうございます」


 ダルタニアンが思わず零した賞賛の言葉に、シャルロットはたおやかに笑んで答えた。


「では、援護に向かいましょう」

『その必要はありませんよ』

『そうですね、俺らだけで十分です』


 シャルロットのつぶやきに、カルロスとサミュエルはそう答えた。その声に一切の揺らぎはない。虚栄ではなく、自信に裏打ちされた強い言葉だ。

 ダルタニアンは、二人の機動を見て、今日何度目になるかわからない驚愕に息を呑んだ。

 左からは〈エクエス〉が、右からは〈レガトゥス〉が。二機のMCが、それぞれの獲物へと駆ける。銃火が二機を襲うが、時に盾を、時に瓦礫を使って弾雨を捌きながら、着実に距離を詰めている。

 驚くべきは、〈エクエス〉と〈レガトゥス〉が、その時々で交錯し、入れ替わることで、ターゲティングを双方に分散していることだ。息の合った連携。一朝一夕にできることではない。

 そして、ダルタニアンはもう一つ、あることに気が付いた。カルロスとサミュエルは、二対二の戦闘を挑んでいるように見えながら、実際にはそうでないという事実に。

 彼らは、そうとは悟らせないように、狙いを片方に絞っている。互いにそれぞれの獲物を狙っているように見せかけながら、その実、同じ獲物を虎視眈々と狙っている。

 ダルタニアンに直感はすぐに現実のものとなった。

 距離を十分に縮めた段階で仕掛けたカルロス機に気を取られている隙に、もう一機から浴びせられる弾雨をすり抜けた〈レガトゥス〉が、強襲したのだ。

 突然の側面からの攻撃に対応が遅れた漆黒のMCは腕を斬り飛ばされ、バランスを崩す。

 誤射(フレンドリーファイア)を躊躇ったもう一機を他所に、カルロスの〈エクエス〉とサミュエルの〈レガトゥス〉は、黒いMCをまるで鳥葬するかのように、交互に啄み、機体の機能を奪う。

 最後のカルロスの一撃が、コックピットに突き刺さり、黒いMCはその操り手を失って機能を停止する。


『まず一つ!』


 なんというコンビネーション。実にエレガント。カルロスもサミュエルも試合の時より一皮も二皮も向けて見える。否、おそらくこれが模擬戦でしかないコロッセウムでの試合と、実戦との差。

 実戦において最小のリスクで最大の戦果を上げるのは、円卓の騎士(ナイツ・オブ・ラウンズ)という規格外を除けば、彼らのように連携が取れた騎士達だ。

 一方のダルタニアンといえば、自らの騎士道に拘るばかりに、幾度となく己の身を危険にさらし、結果として疲弊した。

 己が信念を戦場で通すには力がいる。円卓の騎士(ナイツ・オブ・ラウンズ)にも勝るとも劣らないほどの力が。

 ダルタニアンの口から、無様にも機体を失い、戦場に立てない口惜しさがそのまま漏れた。


「やはり、僕はまだまだ未熟なのだ……」

「ふふっ……」


 そんなダルタニアンの様子を、同席しているシャルロットは優しい笑みを浮かべて見守っていた。

 驚きと悔恨を隠しきれないダルタニアンの視界の中で、仲間が死んだことで躊躇いを捨てた黒いMCが引き金を引く。

 剣を引き抜いたカルロスが飛び退き、サミュエルが〈レガトゥス〉の機体出力を活かして、物言わぬ金属の塊となった、黒いMCの一機を、銃を乱射する機体へ向けて突き飛ばす。

 一瞬、視界の大半を、銃弾の盾に成り下がった機体で覆われることになった漆黒のMCは、カルロスとサミュエルを見失う。

 直後、盾を前に、弾丸を浴びたMCの残骸の左右から飛び出した〈エクエス〉と〈レガトゥス〉の剣が、漆黒のMCの両腕を刈り取った。

 そして、ゆっくりと距離を詰めていたシャルロットが、ぐっと踏み込む。

 雷速で駆けるが如き踏み込みの加速を乗せた突きが、容赦なく漆黒のMCのコックピットを叩き潰した。


「これで片付きましたか」

『ちょっと、持って行かないでくださいよー』

「詰めが甘いからです」

『返しで決めてましたって』

『カルロス卿、これは、遊びではありません。っと、何はともあれ、ここは片付いたようですし、次に行きましょう』

「そうですね……どうやら人が集まっているようですし、ヘリの発着場に向かいましょう」

『あそこ、MCで行ったらなんか言われません?』

「問題ありませんよ。私がいますから」

『そういえば、レーヴェル卿の機体はどうするのですか?』

「一度、コロッセウムに戻れば確保できます。戦力は多い方がいいですし……レーヴェル卿?」


 シャルロットが、眉間を抑え、考え込んでいる様子のダルタニアンに尋ねた。


「カルロス卿。サミュエル卿。フランソワ卿」

「どうしましたか? 突然改まって」

「私は……いや、僕はまだまだ未熟だ! 騎士として、君たちから学ぶことは星の数ほどある! だから、フランソワ卿! 僕をこのまま連れて行って欲しい。せめて、そこまでは、ここで君たちの戦いを見せて欲しい。 贅沢な願いだとは思うが、頼む!」


 そうだ。ダルタニアンではまだ、彼らと共に戦うに足る覚悟を持っていない。己が騎士道を貫き通すだけの力も。

 ならば、彼らから学ばねばならない。覚悟を、騎士道を、力を。この本物の戦場では、その全てにおいて、ダルタニアンは劣っていると言わざるを得ないのだから。


「構いませんよ。もちろん、後で手伝ってはいただきますが」

「無論だ。ただ。今は君たちの戦いをこの目に焼き付けたいのだ」

『決まりですね。まあ、飛行場付近はさっさと排除しないとやばそうですしねー』

『そちらを優先することに異論はありません。レーヴェル卿の疲労の度合いを考えても妥当な線でしょう』

「それでは行きましょう」


 所属部隊も、出身も、機体も、何もかも違う、たまたま同じ日にコロッセウムにいたというただ一つの共通点のみで集まった4人の騎士は、守るべきもののために、闇を駆けた。

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