百人斬りしたらNPCが来るのか?
そんなこんなでゲーム内時間で午後6時!現実だとまだ昼の2時なんだよね。
「それじゃあ命懸け撮影会、始めて行こうか!」
「じゃあ、一番は僕が行きますね。」
ケンジくん!?君まで参加するのかよ!?
〝KENJIから決闘の申請が届きました〟
「お手柔らかにお願いしますね?」
「いいや、一撃で仕留めてやるよ!」
ケンジくんは記者ロールプレイヤーだ。自分のジョブの仕事…ケンジくんの場合は記事を書く…でも経験値は得られるらしいが、記者は鍛治などのガチガチな生産職と違って片手間でもできるジョブらしい。つまりケンジくんのレベルはおそらく低い。そして犬人の初期ステータスは知っている。それこそSTPを全部AGIに突っ込んだとしても俺の攻撃は避けられないし、蜥蜴人みたいに初期DEFが高いわけでもない。リアル戦闘技術があるならともかく、そうでないなら頭を狙うのにこれ以上の的は居ないほどだ。つまり、兜割の的にピッタリだ。
いつもの中段の構えではなく、この前撮影してもらった霞の構えでもない。今回の構えは上段の構えだ。頭上高くに掲げた刀をケンジくんの頭に最短距離で叩きつけてやる!
〝決闘を開始します〟
せっかくの初披露だし、高らかに技名宣言させて貰おうか!あ、もしかしてマッチョも格好つけたくて叫んだのかな。ストレートナックルだっけ?あれも思考発動できるなら脅威度アップだ。技名叫ぶと挙動がバレるのがアクティブスキルの悪いとこだよなぁ。
「『兜割』!」
スキル起動と同時に超速で刀が振り下ろされる。毎回この速度で振り下ろせるのなら、兜割の評価はさらに一段階アップだ。火力が高いのは説明からわかるが、何より俺が振り下ろしていた時とは速度が段違いなのだ。
ここで、『流剣』の効果を思い出してみよう。
『流剣』は攻撃間隔が0.2秒以下なら火力が上がり続ける、というシンプルだけど倍率計算がめんどくさいスキルだ。そう、〝攻撃〟の間隔である。通常攻撃だなんて限定されていない以上、アクティブスキルの火力にも倍率がかかってもおかしくない。そして、先程素振りで試してみたのだけれど、俺が流剣の効果範囲内で繋げられるのは三の太刀までだった。三撃目を切り上げにして、そこから兜割を思考発動すれば、おそらく三撃目から兜割までの間隔は0.2秒を下回る。
一撃目は倍率なし、二撃目が1.1倍、三撃目が1.21倍だから、兜割にかかる倍率は…だいたい1.3倍くらいのはずだ。そこから頭ヒットができれば3倍されて、ほぼ4倍の火力になるわけだ。3倍と4倍では火力がだいぶ違うから、兜割フィニッシュはなかなかにありだ。
示現流は初太刀で決める流派だって?俺のは見よう見まねだから最後の一太刀でいいんだよ。示現流の師匠に教わっていたわけでもないし。
さて、兜割の使い方を考えているうちにそろそろヒットするんだけど、ケンジくんにこれが避けられる訳もないし俺の勝ちだな。だけど、ケンジくんは避けようとして避けられないって感じでもない。むしろ綺麗に自分から当たりに行くように、しっかりとこっちを見つめている。いや、そういえばそもそもこの決闘の開催経緯って…!
「…ここだっ!!ベストショーット!!!」
「そういやそうだったなぁ!!」
〝KENJIのHPが0になりました〟
そりゃ、ケンジくんは完璧な写真を撮るために参加した勢だよね。スキル検証の方に頭が行き過ぎてて、一瞬失念していた。
ま、いいか。ベストショットって言ってたからむしろ興味が出てきた。今度記事をちゃんと買ってやろう。というか眼前に刀が迫っているのに、しっかり目を見開いてベストタイミング狙ってくるとかどんな精神力をしているのだろうか。どうやっても死の間際にしか撮れないような角度から見る魔獣の写真とか依頼したら撮ってきてくれるかな?たぶんケンジくんならそれくらいできそうだからなぁ。
いやいや、考えている場合じゃない。残り何人いるんだ?早く切らないと、この後に撮影会も控えてるんだ!
「次の人!さっさとやるよ!」
「おう!戦ったら撮り放題ってまじ?」
「えっ、うん。今日の間、俺がログインしている間だけだけど。」
「おけ、じゃあやろうぜ!」
…俺の写真ってそんなに人気なのか?…現実でも女装してみればもっとモテたり…?
いやいや、何考えてるんだ俺は!絶対やらないし、やったとしても最終手段に決まってるだろ!?バカなのか!
ええいムカつく!順番に斬り倒してやるから覚悟して並べよ!!
〝勝者 クノイチ!〟
〝条件を達成したため称号『百人斬り』を獲得しました〟
はい、19人斬りました。そしてなんか称号をゲットしました。あのマッチョを合わせて100人ってことだから、撮影会だけでたもあと一人で100人斬りだね。
いやー、100人になるまでが早かったね。それで、100人目のお相手さんは誰かな?
「俺が行ってもいいかい?」
「はい!もちろんですよ!さ、やりましょう!」
さあ!記念すべき100人目は…NPC?
いや、NPCだよね?名前表示されてないもんね!?
「あのー、ですね?この決闘、一応私の決闘したい欲を満たしてくれたら写真を撮ってもいいよって感じなんですけど、もしかして写真撮りに来たんですか?」
「いや?なーんか朝っぱらから楽しそうなことしてるなぁって思って来てみただけだよ?俺も決闘は大好きだからさ。写真撮影会なら、せっかくだし俺も後で一枚撮ってもいいかい?妻は美形の獣人が大好きでね。猫人族の美形さんでも喜ぶだろうさ。」
じゃあ、このNPCは写真じゃなくて決闘につられてやってきたのか。そして妻がいる設定で、決闘好き。
あー、これは決闘が始まる流れだな。だけど決闘好きで決闘に惹かれてくるようなNPCに勝てるとも思えないな。とりあえず今のうちにSTPを振っておこう。
◇
PN:クノイチ
種族:猫人
性別:男
所持金:300G
JOB:未設定
LV:3
HP:10
MP:10
ATK:10
MATK:0
DEF:10
MDEF:0(+8)
DEX:24
AGI:32
LUK:10
EXP:2050/3000(次レベルまであと950)
残りSP:0
◇
JS
なし
CS
『兜割』
『流剣』
『穿つ鬼』
◇
装備
M武器:鉄刀(ATK+0)
S武器:なし
頭:魔法少女のリボン(MDEF+2)
胴:魔法少女のワンピース(MDEF+2)
腕:魔法少女の手袋(MDEF+2)
足:魔法少女の靴(MDEF+2)
アクセサリー:なし
◇
称号
『百人斬り』
◇
もちろん全部DEXだよ。猫耳と猫尻尾を無意識的に動かせるくらいまではDEXに振るからな。思い通りってわけにはまだいかないけど、耳を閉じたり立てたりはできそうだ。尻尾はまだ腰に巻いておこう。
「俺が見るに、君はまだ経験をあまり積んでいないね?」
このNPCは俺のレベルをなんとなーく感じ取っているな。バレているんだったら正直に教えてあげよう。
「まだ俺のレベルは3ですからね。確かに経験は少ないですね。」
なんてったって未だ街の外に出ていないのに決闘しかしていないからな。今の俺は経験が少ない決闘バカみたいなことになっている。
「…じゃあ、ちょっと手加減しておこうかな。」
手加減してくれるんだ。むしろ元のレベルが気になるな。
ヴォルフ君は本当にイベントのために来ました。
決闘に参加したのはヴォルフ君の性格が原因です。
つまり、ここで来たのはマジの偶然です。




