三
依頼を受け始めて半月。
僕らは破竹の勢いで依頼をこなしていった。
僕らは最初冒険者としては一番下のランクE。
それが僕らの評価だ。
しかし、依頼を受け実力があると認められたらランクはあがり、どんどんと仕事を任せてもらえるようになる。
そんな仕組みがあるんだなぁ、と感心しつつ、簡単な装備を整え依頼に挑んだ。
「お似合いですよ!」
などと、レイカにおだてられながら。
「薬草摘んできました!」
「ええぇぇ!! 一日でこの量をですか!!?? エンド君! すごすぎですよ!」
「エンド様の幸運値は三桁を超えていますからね」
薬草採取の依頼を受けたらオルカさんに驚かれた。
別に、普通に歩いてたら群生地を見つけただけなのに。
とりあえず、それであっというまに規定の依頼数を達成しランクはDに上がった。
Dランクに上がると、魔物の討伐依頼を受けることができるから、当然その依頼に挑むこととなった。
「討伐してきました……あ、討伐依頼の最中に襲ってきた魔物がいるんですけど、それって買い取ってもらえますか?」
「ふえええぇぇぇぇ!!! どうしてゴブリンの討伐依頼をしてきたのに、Cランクのマッドボアーをこんなに狩ってるんですか!!??」
「エンド様にかかればこれしき、簡単なことです」
そんなのは僕にもわからない。
とりあえず、依頼の数だけゴブリンを討伐したのだけど、横からでっかい豚みたいな魔物が大勢で襲ってきたのだ。
なんとか僕とレイカで撃退したけど、なかなかにびっくりしたものだ。
結構力が強いなぁと思ったけど、ステータスが向上した僕ならなんとか対応できるくらいのものだった。
その後もいくつか依頼を受けると、いつの間にかランクCになっていた。
ここまでくると一人前の冒険者として扱ってもらえる。
受けることができる依頼も、難易度の制限はあるけど種類の制限はあまりなくなってくる。
護衛依頼や個人的に依頼される特殊依頼まで、その内容は多岐にわたる。
僕は、今日もレイカに読み上げてもらいながら掲示板を眺めていた。
「どんな依頼にしますか? エンド様」
「そうだね……ずいぶんお金も溜まったし、まだまだBランクは遠いだろうからのんびりでいいと思うよ」
「それなら、久しぶりに採取依頼はどうでしょう?」
「なら、そうしようか」
そんな言葉を交わしながら、僕らは採取依頼を受ける。
内容は、モグライラズの花を持ってくることだ。
モグライラズは、地中に深く根を張って周囲を穴ぼこだらけにする植物らしい。
なんでも、結構な森の奥に行かないと生えていないらしく、そこまでいくのはなかなか大変みたいだ。
花弁を使うと、難病を治すための薬になるらしい。
「しかし、エンド様。森の奥まで行くのなら、もう少し装備を整えたほうがいいかもしれません」
「そうかなぁ?」
そう言われて、僕は自分の格好をみた。
もちろん、孤児院にいたころの服じゃない。
革製の肩と膝と胸当てにショートソードとブーツだ。簡素なものだからこころもとない気もするけど、まだ使えそうではある。
「まだまだ使えるよ?」
「それで怪我をしたり命を落としたりしたら本末転倒です。さぁ、専門街にいきますよ!」
「それなら、レイカの服も買わないと」
「私のですか?」
レイカは驚いたように振り返る。
その際、メイド服のスカートがふわりと舞い、膝辺りがちらりと見えた。
僕はそれにどきりとしながら、なんとか平静を装う。
「そうだよ。レイカは生まれてきてからずっとその服でしょ? なら、レイカも何か買わないと」
「大丈夫ですよ。私の服は本から生まれたものですから。とても丈夫で痛みません。下手な防具よりは、ずっと役に立つものですよ」
「そうかなぁ……ならいいんだけど」
どこか釈然としない想いを抱きつつ、僕はレイカの後を追う。
僕はあたまをかきながら歩いていると、彼女は小さな声でぽつりとつぶやく。
「お優しいですよね、エンド様は」
「え?」
何の気なしに視線を向けると、そこには顔を赤らめたレイカがほほ笑んでいた。
こっちも相変わらず綺麗で可愛くて。
直視していられずに思わず目を逸らす。
「……別に、そんなこと――」
「いきましょ? エンド様」
レイカは僕の横にすっと並ぶと、しずかに腕を組んでくる。
それに抗う理由もなく、僕らはそのまま目的地へと向かっていった。




