25.変身!満を持して
一時間ほどの激闘が続いた。だいたい朔夜が7でベルクが3の割合で魔物退治は行われていた。朔夜のデスティニーブレードによる剣術の方が燃費がいいので当然である。
ちなみに朔夜は家の事情で剣を嗜んでたし、異世界召喚された場合の戦闘もイメージトレーニング済みだった為、その差も大きい。
一段落した時点でベルクは既に肩で息するほど疲労している。
「も、もう魔力残ってない…武器保たない…」
「燃費悪いなぁ。ま、これだけ戦えば仕方ないのかな。戦ってるうちに大分奥まで来ちゃっだね」
「そういえば……ここどの辺りだろ?」
ベルクが見回すと、付近に怪しい扉があり圧倒的存在感を放っていた。何がありそう…そんな感じしかしない。
「……いってみよっか?」
「先に休まなくて平気? ガンガン行っちゃう?」
「ここで休める保障ないし…行けるうちに行こう」
「オッケー。じゃ、朔夜いっきまーす」
朔夜が勢い良く扉を開けると、下のフロアまでブチ抜きの広い空間と、その中央で眠る大きな魔物が見える。黄色く分厚い鱗を持ち、退化した小さな翼、巨大化した鋭利な爪と牙。睨んだ相手を射殺すような鋭い目。アースドラゴンの幼体だ。その足元に宝箱のようなものが見える。
「なん…だと…」
「幼体の為の揺り籠になってたのか…道理で魔物の分布が偏ってたわけだ! しかしどうしたものかな…」
「とりあえず、あの命を刈り取る形してるの壊そうよ。部位破壊は報酬がふえるって基本だよ」
「狩りゲーじゃないからね? でも賛成。魔王魔法ダークキャリバー!」
ベルクの左手に闇の炎で出来た大剣が現れる。この魔法は残り魔力が少なければ少ないほど威力が増すのだ。
そのまま大きく跳躍し、まだこちらに気づいていないアースドラゴンの牙に斬りかかる。しかし、踏み込みが足りなかった為、やすやすと弾き飛ばされ、落下した。
「あちゃー、大丈夫かな? ま、とりあえずここは本気でちゃっちゃといこっかな?」
朔夜が左手でUSBメモリ状のアレを取り出し、回転を掛けて少し上に投げ挿しやすい向きに直す。右肩あたりまで持っていったUSBとデスティニーブレードで/になるような持ち方だ。そのままUSBに付いてる赤いボタンを押すと、「ウィングモード」と言う音声アナウンスと共に変身時用のBGMが流れた、気分は特撮ヒーローのそれである。
「変身っ!」
朔夜が声を発するとともに、デスティニーブレードにUSBを挿し込む。
すると、デスティニーブレードを中心に緋い螺旋状の光が現れ、朔夜を包み込む。謎光の珠が制服に当たると、制服をベースに所々緋い装甲で覆われた衣装が現れ、手に当たれば、砲身のついた篭手が現れ、足元に当たればファンタジーな羽がついた靴が。背中に当たれば、機械羽が現れる。最後に髪の色が赤く染まって完成だ。
一通り現れた所でポーズも忘れてはならない。軽やかな着地と共に軽くデスティニーブレードを振って、左手の砲身を正面に向ける。
「イッツショータイム!」
掛け声と共に、朔夜は飛翔し、アースドラゴンの頭上へあっという間に移動した。そのまま砲身を向け乱れ撃った。確実にダメージを与えつつ上空からベルクを探していくスタンスである。
朔夜の射撃攻撃はアースドラゴンの牙や爪にヒビをいれていく。しかし、アースドラゴンもただやられるわけではない、口から火炎放射や、まだ無事な爪による攻撃を繰り返す。ウィングモードというだけあり、朔夜は難なく攻撃をかいくぐる。
「見つけた! あの位置なら……巻き込まないよね」
朔夜は、ベルクが宝箱の辺りにいることを確認した。デスティニーブレードからUSBを取り出し、黄色いボタンを押した。「クラッシャーモード」という音声アナウンスを聞き再度変身用BGMが流れる。先程のとは別の曲だ。
USBを刺し直すと、黄色い珠に包まれ、順に形状が変更されていく。まずは制服が体操服に。緋い装甲は黄色に変わり、篭手の砲身は右手ドリル、左手パイルバンカーへ、背中の機械羽は、二本の機械腕として変貌を遂げた。脚のファンタジー羽もローラーに代わる。このモードではデスティニーブレードもベルトのバックルへと変形するのだ。
自由落下しながら、朔夜は必殺技の体制に入る。
「超ドレッドノート級…ぱわーとぅーざいんぱくとー!」
朔夜の叫び声に合わせ、機械腕が轟き唸りをあげ連打を叩き込む。その最中にパイルバンカーとドリルの二重奏。どんな巨大であろうと衝撃で少しずつ後ずさっていくしかない。そんな中、アースドラゴンの下から闇の柱が現れ、貫いた。ベルクによる援護だ。このまま一気に決めようと朔夜は機械腕のフルパワースィングで、アースドラゴンを投げ、再びウィングモードへ変わり、デスティニーブレードを横に構えた。
「天地覇道流が対城の型…破邪黒棺!」
天地覇道流。朔夜の会得してる剣術で、元々対城攻略用に考案されていて、ほぼ実用性皆無の浪漫剣技である。破邪黒棺は、横に構えたまま剣に回転と遠心力を加える事で破壊力を増し、てこの原理を応用して振り回すと棺のラインを描くのだ。勿論、アースドラゴンとて耐えられる威力ではない。




