13.はじめてのおつかい(買ったとは言ってない)
ベルクが領内に戻って3日目の朝。
ベルクもアンナも忙しい結果、ミシェルは話し相手もいなく退屈していた。ミシェルお気に入りの木漏れ日スポットでゴロゴロだ。
無理もない、二人とももう少ししたら出立だ。いくらこの領内に他の友達がいない、会話が成立する相手がいないといっても邪魔をするわけにはいかないし、声がかからないということは召喚士としてやれることはないのだろう。
諦めと不貞腐れの中ゴロゴロしていると、ほーちゃんが近づいてきた。ミシェルはゴロゴロを継続しながら挨拶する。
「封印されし月光」
「ええ、おはよ。隣いいかしら?」
「杯は交わった(ええ)」
ミシェルの言葉を聞いて、ほーちゃんはミシェルの隣にぺたんと座った。人形みたいで可愛らしいなと思いながらもある疑問を聞くことにする。
「円環の理?(私のこの訛りわかるの?)」
「ええ、長生きだもの」
「今宵、運命の翼はだれのもとに?(もしかして、この訛りの抑え方も?)」
「抑えるというか、魔法薬によって自動翻訳することはできるわよ。いる?」
ミシェルは感激して、ほーちゃんを思わず抱きしめた。これで自由にお話が出来る。友達を作れると。
「じゃ、グランオクトバーのクチバシを用意して。それがあればすぐ作れるわ」
「終わりなき輪舞曲!(わかりました!)」
グランオクトバー。
この領内でもたまに現れる野生の中型動物だ。温厚だが、寝起きだけはヌメヌメした球体よりの体と8本の脚を活かし締め付けてくるがそこまで強くはなく、焼くと美味いことから家畜としても重宝されている。そのなかでもクチバシは食べれないから山のように捨てられている。ここまではミシェルだって知っているこの辺りの地元トークだ。
問題は貰えるところを知らないことの一点のみである。
(ま、野良のを見つけて退治すればいいか。わたし天才)
どれくらいの時間が経ったのだろうか。ミシェルのお腹のむしが自己主張しまくり出している中、ようやく林の中で野生のグランオクトバーを見つけた。ちょうどよく寝ているようにもみえる。
「契約のもと、我に従いひれーー…!?」
ミシェルの召喚準備による魔力の流れが、グランオクトバーを刺激し起こしたようだ。気付いた時にはミシェルの四肢に脚を絡ませてきて、動きを封じられた。
(うーうー! 早く大人しくなってー)
なんとか動かせる足をジタバタさせるものの、それくらいでは抜け出せない。頼りの召喚も手の向き的に呼び出す空間が足りない。
「ミシェル!」
そこにアンナの声が聞こえた。その声とともに、グランオクトバーはぶつ斬りになった。ミシェルの体にはかすり傷一つつけずにだ。
「こんなとこ歩いてたら危険でしょ」
「思春期を忘れた少年?(どうしてここに?)」
「ほーちゃんに頼まれてね。はいこれ、完成したんだって。一日千文字まで効果あるって伝えてって言われたけどなんのこと?」
アンナが小さな袋を取り出し、まだベトベトしているミシェルに投げ渡す。中には錠剤が入っており、試しに一錠飲んでみる。苦い。
「こういうこと。その、ありがとう。アンナ」
「ミシェルの言葉をわかりやすくしてくれるアイテムだったんだね。どういたしまして。それじゃ、私はこれから出撃だから」
「うん、行ってらっしゃい」
アンナを見送りつつ、ミシェルは思った。普通に会話できるって素晴らしいな、薬は苦くてつらいけども。後ほーちゃんのいい遊び道具として遊ばれたなー、まあいいけど、と。
ミシェルは後衛特化なので、一人で接近戦すると壊滅的な弱さ




