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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第二章 アーマグラス編

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第30話 違和感の正体

 皆の予想通り宿泊する中宿(なかやど)の女将さんからモンスター討伐の依頼があった。セキトモは申し訳なさそうにしている。


「皆、ごめん! お世話になった人の頼みだから断れなかった」

「まあ、いいんじゃない?

 まだ夜まで時間もあるしここからそう遠くないんでしょ?」

「私も大丈夫ですよ。

 ギルドに依頼する額相当の報酬も頂けるという話ですし何の問題もないかと」

「俺もそろそろモンスター倒したくてうずうずしてたところです!」

「ホント助かるよ~」


 クエストなら『針蜂討伐 難易度D』といったところだ。この辺りは街から街までの中間地点なのでどちらの街に依頼を出すか迷う場所でもある。依頼を出しても難易度D程度の依頼で遠方まで来てくれる討伐者はまずいないだろう。中宿の女将さんは隣にあるオドブレイクに立ち寄る討伐者に頼んでみようかと迷っていたそうだ。


「それに蜂倒して来ればお礼で『特製蜂蜜スイーツ』も出して貰えるんでしょ?

 蜂蜜入手困難で注文できなくなったって言ってたやつ」

「ロッカ、本当の狙いはそれだろ?」

「えへへー、理由なんてどうでもいいでしょ。楽しみ~、バンもそうよね?」

「はい! 楽しみですね」


 この二人はお金の報酬が無くてもスイーツだけで釣れるだろう。


 針蜂は中宿から30分ほど歩いた割と低めの山の入口付近にいるそうだ。その山には蜜蜂が多く生息していて良質な蜂蜜が採れるようだ。針蜂がいるのは山の入口付近なので蜂蜜を採りに行く人たちが困っているとのこと。


 目的地までは歩いて行けるので馬次郎は宿の馬小屋で荷台と一緒にお留守番だ。


「馬次郎~、行ってくるね~。

 私たちの荷物の番頼んだわよ!」


“ブルル・・・”


 馬次郎は首を縦に振った。


 何だか馬次郎が返事をした気がした。ホントに分かってるのかな?


◇◇


 針蜂討伐に向かった4人は山の入口付近に到着した。


 バンは新しい武器を持って来ている。拳から爪が生えたような刃が3本ある近接武器だ。両手で6本の刃。握るタイプで腰の両側に専用の鞘を装着している。これは博士が巨大爪熊討伐の話を聞いて思いつきで作った武器だ。バンは『三刃爪』と名付けた。少し重いようだが軽々と扱えるバンなら恐ろしい威力を発揮するかもしれない。


 博士の気まぐれで俺の剣の改良は後回しにされてお預け状態なんだよな~。

 三刃爪は剛拳の手の甲部分を基礎にしたって言ってたけど出発前までの2日間くらいで作ったんだからホント早いよな?

 博士って鍛冶師って感じはしないんだけどな。白衣着てるからかな?


 ロッカが針蜂を見つけたようだ。


「あれね! ぱっと見で分かっちゃうわね?

 何だか小さい気がするけど・・・うじゃうじゃいてキモっ」


 人間の拳ほどの大きさの針蜂だ。果実のように木に群がっている。落ちた果実のように地面でうろうろしているやつもいる。ざっと見て30体ほどだろうか。


「数が多すぎるので大多数は複製体でしょう。

 でも、何か違和感がありますね・・・」


「ところでモンスターの蜂って蜜集めるんですかね?」

「あんなでかい蜂が花の蜜を集めるのは無理なんじゃない?」

「木の蜜だったらいけるかもしれないよ。

 いや、もしかしたら普通の蜂の巣から奪っているのかも?」

「それはダメでしょ。私の蜂蜜無くなっちゃうじゃない」


「「ロッカの蜂蜜じゃないだろ」」


 何か気づいたのかバンは少し横に移動したあと皆に声をかけた。


「皆さん、あの木の下側をこちら側から見て下さい」


 針蜂が群がっている木を正面から見ていたのだが、バンの元に行き角度を変えて見てみると木の根元辺りに立てかかっている大きな蜂の巣を確認できた。巣穴は針蜂が入れそうな大きさだ。不思議な事にその大きい蜂の巣の下に他より少し大きな針蜂が挟まっている。巣に潰されて動けずもがいているようだ。


「・・・バン、東大陸って複合体いるんだっけ?」


 複合体? 複製体じゃなくて?


「いないとは言い切れませんがここは中央からかなり遠いですからね。

 どうなのでしょう?」

「よく見てよ、あれ。

 大きい蜂の巣に潰されている針蜂じゃなくて針蜂から巣が生えてない?」

「まさか?! 本当に複合体?」

「さっきバンが『違和感がある』って言ってたでしょ? やってみれば分かるわ。

 さあ、皆、蜂退治するわよ! 針の攻撃にだけは注意して」


 トウマは少しずつ近くの地面にいる針蜂に近づいた。それに気づいた針蜂が襲って来たがトウマは針の攻撃に注意しながら難なく斬った。ロッカも同様だ。木の下側でうろうろしているやつは石ころを投げて気づかせ、おびき寄せて倒していった。


 一斉に襲って来なければ難なく倒せるモンスターだな。

 魔石落とさないし複製体みたいだ。あの潰れてる大きいのが本体かな?

 まあ、本体倒しても複製体が消えるわけじゃないから全滅させないと。


「あの下で潰れているやつは放置でよさそうね。最後に回そう」

「木の上のやつらどうします?」

「石投げつけてもいいけど数いるから少しでも減らしたいところよね?

 セキトモ、私たち届かないからロンググレイブで何体かぶった斬ってよ。

 たぶん一斉に襲ってくるわ」

「マジ?!」

「一撃入れたあとは大盾で防ぎながら退いていいから。

 襲って来るやつらは私らで倒すわ」

「・・・そういうことなら。

 あとは頼むよホント。ちょっと待ってて」


 セキトモは突きで伸ばした音に反応して針蜂が襲って来ないように少し離れた場所でロンググレイブにして戻って来た。少しグレイブを振る予行練習もしたようだ。


「いくよー!」


 セキトモは木の上の針蜂群に向けて左下から斬り上げるようにロンググレイブを振り抜いた! 針蜂4体が斬り倒された。次に刃を返して右上からなるべく多くの針蜂が斬れるように振り下ろす。振り下ろしに3体の針蜂が巻き込まれた。


「よし、7体倒せた。あとは任せたよ!」


 ロッカの予想通り残った針蜂が一斉に木の上から襲って来た! セキトモは大盾を構えて後ずさりして行く。次々とセキトモの大盾にぶつかって来た針蜂をトウマとロッカで斬っていく。少し遅れて襲って来ている針蜂は三刃爪を装備したバンが細かい動きで斬り伏せる。拳ほどの小さい針蜂相手なので熊というより猫が引っかいている感じで針蜂は斬られていった。にゃ、にゃ、にゃ、にゃー!って感じだ。あっという間に襲って来た針蜂を殲滅。残るは大きな蜂の巣の下に挟まって動けない他より大きい針蜂だけだ。皆がそこに集まった。


「さてと、あとはこいつね。巣に他の針蜂は入っていないみたいだわ」

「本当にロッカの言う通りの複合体ならおそらく消えますね」

「見ててよ」


 ロッカは動けない針蜂に短剣を刺した。すると針蜂は霧散していった・・・蜂の巣と共に・・・。


「やっぱり」

「魔石も落としましたし複合体でしたね。

 おそらく蜂の巣を丸ごと取り込んだのでしょう」


 複合体とはスライムが生物と一緒に取り込んだ物質までも合成して擬態してしまう特殊なモンスターの事である。他の生物を同時に取り込んだ場合も同様だ。この針蜂の場合は最後に倒した針蜂が本体。他の小さい針蜂はこの針蜂の体の一部だったのだ。体は離れているが何かしらで繋がっているらしい。本体との繋がりは肉眼では見えないので「念糸で繋がっている」と表現されているようだ。本体の針蜂を倒せば体の一部である他の針蜂は消えていただろうという話。


「こんなモンスターもいるんですね?」

「魔粒子濃度の高いスライムが発生する中央大陸ではさほど珍しくも無いのですが東大陸にもいるのですね」

「にしても一緒に擬態した巣が重くて動けないなんて。

 間抜けなやつで良かったわ。ぷっ、あはは、おかしい」

「確かにそう言われるとアホなモンスターですね」

「ぶっ、確かに。動けないって、わはは!」


◇◇


 無事に針蜂討伐を終えた一同は中宿に戻った。中宿に戻る最中も針蜂のことを思い出し、大笑いしていた。


「ただいま~、馬次郎~」


 馬次郎は荷台見ててやったぜ的な目配せをした。


 セキトモは針蜂討伐を終えた事を女将さんに告げて報酬を受け取って来たようだ。受け取った報酬だけで高いと言っていた宿代を全部賄えそうだとか。今は中宿に客も増えてきて従業員が忙しそうだ。


「女将さん喜んでたよ。

 あとで約束通り特製蜂蜜スイーツ出してくれるってさ」

「やったー!」

「うふっ、楽しみですね」


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