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スライムスレイヤー ~イシノチカラ~  作者: 亜形
第二章 アーマグラス編

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第29話 中宿

再始動

 中央大陸に向けてバルンバッセの街を旅立ったトウマ、ロッカ、バン、セキトモ。4人が次に目指しているのは海に近い西のアーマグラスという街だ。しかし、バルンバッセの街を出てすぐに馬車の馬がへばったので今は街道を歩いて向かっている状況だ。特急クエストで使用した馬車は御者がいて馬二頭立てだった。今回は一頭の馬で荷台を引いているので荷物が重過ぎるのかもしれない。


 街道を歩きながらトウマは聞いた。


「バンさん、次の街まで何日くらいかかるんですか?」

「馬車で4日はかからなかったと思いますが今は歩きですからね。

 少なくとも4日以上かかるのは確かでしょう」


「そっか~。セキトモさん、先は長そうですよ。

 大盾くらい荷台に載せたらどうです?」


「僕はまだ平気だよ。

 それに少しでも馬の負担を減らしてあげたほうがいいよね?」


 セキトモは装備を着けて大盾も背負った状態で歩いている。普段から重装備に慣れて鍛えると言っていたが馬の負担を軽くしてあげたいという今の言葉が本音だろう。


「弱っちー馬だなお前は」

「トウマ、馬次郎をバカにするんじゃないわよ! このコは頭いいのよ」


 何だよ、その馬の名前は。次郎ってこの馬2頭目か、2代目なのか?


「ロッカが言うには馬次郎は人の言葉が分かるそうですよ。

 本当に通じているのなら凄い馬ですけどね」

「バンはまだ疑ってるのね、本当なのに。ね、馬次郎~」


 馬次郎は頷くような仕草をしてロッカに撫でられている。


「あ、あそこスライムがいるわ。ちょっと倒してくる!」


 ロッカは街道を離れてスライムを倒しに行った。


「ロッカ、あんな所よく見えたね。僕は全然気づかなかったよ」

「俺もスライム見つけたら倒しに行こうーと」

「構いませんけど私たちは待たずに先に進みますからね。

 はぐれないようにして下さいよ」

「はーい」


 しばらくしてロッカが戻って来た。


「お待たせ」

「ロッカにしては随分時間がかかったようですね?」

「それがさー、聞いてよ。スライム倒した近くに牙犬がいてね。そいつも倒しちゃおうと思ったら逃げたから追っかけ回して倒して来たってわけ」


「そっか、いるのはスライムだけとは限らないよな。

 しかし、牙犬に逃げられるロッカって・・・」

「俺もモンスター倒したいんですけど~」

「先に見つけたもん勝ちでしょ!」


◇◇


 夕暮れに討伐者が休める「オドブレイク」という施設に到着した。この施設は主要な街道沿いに約一日以内で歩いて行ける距離間隔にあるようだ。モンスター討伐の臨時拠点としても利用されているらしい。街道沿いだからといって全くモンスターが近づかないとは限らない。要は討伐者が夜を安心して過ごせる場所がオドブレイクだ。宿泊費を払えば討伐者以外でも利用可能である。尚、討伐者の宿泊費は無料とのこと。オドブレイクは100m四方をモンスター除けの柵で囲ってあり、内側にはポツンと小さな倉庫が建っているだけの施設だ。倉庫には定期的に届く物資が入れてあるらしい。見張り役として交代制の衛兵が2~3人常駐している。オドブレイクに泊まる場合は柵の内側にテントを張って一夜を過ごす。常備されているテントが残っていれば貸し出してくれる。なければシートに雑魚寝だ。必要とあれば最低限の食料や水も提供して貰える。それ以上を求めるなら費用を支払う必要がある。それ相応の魔石と交換でもよい。


「街道沿いにこういう場所があるのは便利ですね」

「ここはギルドと街道を維持する機関が共同で運営しているんだよ。

 実は僕、前にここの衛兵のバイトしたことがあるんだ。

 抗魔玉付きの槍が用意されててね。その影響で槍買っちゃったんだ。はは」

「あ、もしかして集落のときテント張るの早かったのって」

「そう。ここで討伐者のテントを張る手伝いを何度もしてたら覚えちゃったんだ」


「討伐経験がなくても衛兵として働けるんですか?」

「僕は臨時で主に倉庫の棚卸とかの手伝いって感じのバイトだったからな。ちゃんと働くにはそれなりに厳しい審査を通過しないとダメみたいだ。衛兵になる人は元討伐者でけっこう年配のひとが多いよ」

「意外と敷居高いんですね。ま、衛兵になる気はないけど」

「当時の知ってる人はいないみたいだな。勤務地交代があるからさすがにいないか」


「セキトモ、テント張って~」


「分かった。トウマも手伝ってくれ」

「はい! 俺もしっかり覚えよっかな」


 ロッカとバンは馬次郎の世話をした後、食料と水を貰いに行ったようだ。


 あの二人のことだ。

 お金は持っているし追加食料を買って来るかもな?


◇◇


 ロッカとバンは大量の食料を持って来た。


「やっぱりな」

「何がやっぱりよ。

 トウマ、火・・・は着けられないか。あとで衛兵さんから貰ってくるわ」


 トウマは剣が変わっている。2スロットの剣と真魔玉【赤】は今、トウマの手元には無く代用として1スロットの剣を持っている。トウマは少し改良を加えてみたいという博士の提案に乗って2スロットの剣を預けているのだ。出来上がり次第送って貰える手筈になっている。代用している1スロットの剣は博士から貰った物で切れ味、頑丈さも量産品より上のようだ。トウマ次第だが改良された2スロットの剣が戻ってくれば二刀流も可能になるかもしれない。


「セキトモさん、あとで模擬戦付き合ってくれませんか?」

「おう、いいとも」


 以前のセキトモのグレイブは大盾が鞘になっていたがセキトモの要望で鞘を簡単に着脱できるように改良して貰った。刀身むき出しでは出来なかった模擬戦が鞘付きグレイブで出来るようになったのだ。


「私がやってやろうか?」

「ロッカは速過ぎるからダメ! 俺がもう少し強くなってからにしてよ」


◇◇


2日後---。


 一同は二度目のオドブレイクを出て街道を進んでいた。時々、封書マークの付いた馬車とすれ違うことがある。その馬車は呼び止めて費用を支払えば手紙を配達して貰えるようだ。配達する方向が合っていないと一旦、次の街に着いてから折り返すことになるので届ける方向が合っている馬車に頼んだほうが早く届くとのことだ。いずれ博士への報告で利用するかもしれない。


「次のオドブレイクの隣には宿屋があるよ。小さいけどね。

 僕、前はそこで働いてたんだ」


 バンはその宿屋のことは思い当たらない様子だ。


「そうなのですか? 来るときには気づきませんでしたが」

「それって私が御者してたときかも? 通ったの昼時だった気がするわ。

 ねえ、そこ泊まって行こうよ。セキトモ、食事も出る?」


「食事付きにすれば出るけど宿泊だけでもけっこう高いよ。

 あそこは街と街との中継地点だから高めに設定しても客は入るんだよね。

 当時はテント疲れしている討伐者もよく利用してたな~」


「熊討伐の報酬でお金あるから多少高くてもいいんじゃない? 

 セキトモの顔で割引してくれるなら嬉しいけど」

「はは、割引はして貰えないと思うよ。僕、もうとっくに辞めちゃってるからね」


◇◇


 一同は歩きに慣れてきたのか予定より早く次のオドブレイクに着いた。先に進むか迷う時間帯だが急ぎの旅でもない。中途半端な位置の街道沿いで夜を明かしたくはないので予定通りセキトモが働いていた宿屋『中宿(なかやど)』に宿泊することした。


「あれ? 前より随分大きくなってるぞ。儲かったのかな?」

「確か小さな宿って言ってましたよね?」


 セキトモが働いていた時は20名ほどが泊まれる小さな宿だったとのこと。今は50名ほど泊まれそうだ。まだ早い時間帯なので他の客は見当たらない。


「いらっしゃいませ」

「こんにちは。

 二人部屋を2室で一泊、4名でお願いできますか? 食事付きで」

「かしこまりました。二人部屋2室4名様一泊、食事付きですね」


「ここ大きくなりましたね?」

「そうですね。1年くらい前に増築改装したのですよ。

 あら? あなた、もしかしてセキトモじゃない?」

「ご無沙汰してます。女将さん」

「まあ、随分逞しくなって。

 あなたが出て行ってからもう2、3年くらい経ったかしら。

 上手くやれているのか心配してたのよ。

 その様子だと討伐者にはなれたみたいね?」

「おかげさまで」


「お連れの方々も討伐者なの?」

「そうですよ。ああ見えて僕より強い人たちです。

 今、僕たち中央大陸目指して旅しているところなんですよ」

「まあ、ちょうど良かったわ!

 セキトモにお願いしたい事があるの。昔のよしみで聞いて貰えないかしら?」


 何やらモンスター絡みの予感。


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