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誓約の騎士と霧の女王  作者: OWL
第一部 第二章 妖精王子の留学
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第9話 天馬寮監カレリア・ソレル・フロステル・ヴァレフスカ

 誰かが言った。

帝国は契約社会だと。


東方騎士と帝国騎士の最大の違いは何かとある教師は説いた。

東方騎士達は主君と騎士の間に誓約を交わす、永遠の忠誠を神と主君に誓う。

そこに契約書などない。

主君は騎士に必要なだけ手当を与えるが、武装は準備してやるし、家族のように暮らし、屋根を与え、食事を共にする。貴族である騎士もいればそうでない騎士もいる。


帝国では皇帝や帝国貴族と騎士の間に軍務契約書を交わす。

雇用主は定額賃金を支払い、被雇用者たる騎士は与えられた賃金で武装を整え、必要があれば兵を集め招集に応じる義務がある軍人でもある。

契約は文書で取り交わし契約期間と賃金が定められており、違反があれば契約の解除を申し出る事も可能であり、解雇もされうる。


誰かが言った。

帝国では女性も結婚相手を自分で選ぶ事が出来ると。


東方圏の女性は父親同士の合議で選び女性に選択の自由は無い。

ただし父親は娘から訴えがあり不遇な扱いを受けていれば取り戻す事が出来る。所有権は父親にある。女性には夫と離婚する権利はない。

地位と財産のある男性は妻を複数持つ事が出来る。

夫が亡くなった場合でも妻の再婚は許されず子の養育に専念する。


帝国の女性は自ら相手を選択する事が出来る。

家柄によっては家に強要される事はあるが、女性は法廷に拒否する意思を訴える権利を有する。

結婚後も女性から離婚を申し出る事が出来る。

一夫一婦制であるが、寡婦は再婚が奨励される。

信仰は失われていても豊穣、多産を奨励する女神を守護神とする文化は受け継がれており、結婚前に子を産むことについても寛容である。


マクシミリアンの頭の中に留学前に教わった知識が反響していた。


◇◆◇


「ねえ、貴方、可愛い顔してるわね。わたくしと愛人契約結ばない?」


マクシミリアンが天女だと思った女性はそういった。

唇には鮮やかな蝶が描かれている。

髪は短髪かと思ったが、邪魔にならないように編み込まれて実際にはかなり長そうだ。


何を言われたのか理解の埒外で思考停止しているマクシミリアンの代わりにプリシラが天女に尋ねた。


「カレリア?カレリア?何言ってるの貴女」

「あら、プリシラ。ごきげんよう。ちょっと待っていてくださる?」


プリシラとカレリアと呼ばれた女性は知人だったようだ。


天女、もといカレリアはそういってマクシミリアンが放心している間にさらさらと契約書を書き差し出してきた。


名称 愛人雇用契約

内容 フランデアン王子マクシミリアン(甲)と御天馬寮監カレリア・ソレル・フロステル・ヴァレフスカ(乙)との愛人契約書

期間 新帝国歴1409年~1412年もしくは乙に子が出来るまで

総則

1.甲は乙に対し定められた期間週に最低2時間は割かなければならない

2.甲は生殖能力が発生次第、乙に対し子を与える努力をすること

3.甲は誠意をもって2を履行しなければならない

4.乙は甲が成熟年齢に達しているか確認する権利を有する

5.甲は契約期間の延長を乙に対し申し出る事は出来ない


「誰が申し出るか!」


マクシミリアンの怒声に天馬が怯えていなないた。

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2022/2/1
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