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誓約の騎士と霧の女王  作者: OWL
第一部 第五章 妖精王の戦い
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第21話 生存者③

黒い剣を持つ騎士に吹っ飛ばされたオルランドゥはしばらく意識を失っていた。

気が付くと幼馴染に背負われて運ばれており、命は助かっていた。


「おい、おい、おい。ブルハルト。お前なにやってんだよ!降ろせ、降ろせったら!」

「暴れるな、バカ。黙ってろ」


オルランドゥはブルハルトに背負われている事に気が付いて暴れたが、徐々に全身の苛む苦痛が戻って来て段々静かになっていった。


「俺はなんで・・・」

「生き残っちまったんだってか?考えるな。とにかく逃げるんだ」

「ラグランは?」

「川の向こうで引き上げられていた」


ブルハルトはグラマティー川の向こうで駆け付けたフランデアンの兵士がラグランを川から引き上げるのを見た。


「俺達はどうして生きてるんだ?」

「あのクソったれの騎士野郎はラグランをおいかけようとして失敗して川に落ちた。俺らが邪魔だったんだろう」


振りほどかれた時にブルハルトとオルランドゥは吹っ飛ばされて大怪我を負っていた。オルランドゥは頭を打ち、ブルハルトは腕を折っていた。


「ルードヴィヒは?」

「後ろだ」


百名いた部隊、王宮で悪さをしてはエリンに叱られていた悪ガキどもの生き残りはたった三名だった。彼らは洞穴に隠れ潜み救けを待つ事にした。



◇◆◇



 一方、救助されたラグランは三日間生死の淵を彷徨いウェルスティアの神官、医師達によりからくも意識を取り戻した。


「大神ガーウディームよ。神々よ、我を生かしてくれた事を感謝します。願わくば勇敢な少年達にも貴方の加護あらんことを」


彼が動けるようになり、再びグラマティー河へと戻り自分が脱出した対岸を見た時、そこには多くの杭が打ちつけられていた。

無数の杭の先端にはフランデアンの兵士達の生首が刺さっていた。

ヴェルナーの腐った頭もそこに有った。ハインリヒからは金歯が抜かれて、死に顔は苦悶に歪んでいた。コンラートの目からは血の涙が流れていた。マルティンもヘルムートも頭だけになり晒しものとなっていた。ラグランの部下はことごとく晒しものになっていたが、何人かの首は見当たらなかった。


スパーニア軍は少年らの首を晒しものにして対岸のフランデアン軍を挑発し、嘲っていた。中には小便をひっかけて大笑いしているものすらいる。

フランデアン軍の兵士達は毎日歯ぎしりをして、友軍の哀れな姿に涙し、怒り、中には上官の制止を無視して川を渡ろうとしては無駄に死んでいった者もいる。

なけなしのフランデアン軍はこうして徐々に削られていった。


 ルードヴィヒがある日、自らの魔術で己だけ河を渡り切ったがブルハルトとオルランドゥとははぐれて自分だけ逃げた事を悔い、あまりしゃべりたがらなかった。


二人の消息は依然、不明だった。


残り二名の部下の生存をラグランは神々に祈り続けた。


一度、療養の為後方に送られたラグランは動けるようになるとスパーニアの前線に勝手に戻り戦い続けた。だが、魔導騎士が突出すると戦線のバランスが崩れる為、ギュイはラグランを縛り付けておかなければならなくなった。


自軍の中で捕虜のようになったラグランは1414年5月に行われた捕虜交換式に部下生存の望みを託していた。


だが、そこでラグランが見たものは一万人の盲目の兵士達だった。

力自慢のブルハルトもそこにいた。彼は両目を失い、舌を斬られ、両腕をへし折られその力を振るう事は二度と出来ない体となっていた。


 グランドリーの地でラグランの慟哭と呪詛が響き渡る。


「モレスよ!天の神々よ。我は汝らに仕え騎士として、神官として務めを二十年果たしてきた。その報いがこれか!!天に呪いあれ!星界の彼方の神々よ!貴様らにもはや何も願う事は無い!!ああ、願わんとも!願うなら別の神に願う。地獄の女神アイラカーラよ!スパーニア人を一人残らず地獄へと導き給え!復讐の女神アイラクーンディアよ!我が誓いを聞け!我が勇敢な少年達の死に報いを!我は殺す。殺し尽くす!百の部下に等しい死を!一人につき百のスパーニア人を殺す!この誓い果たされるのならいかなる苦痛をも喜んで受けようではないか!!アイラカーラよ、アイラクーンディアよ。我に苦痛を与えよ!そして神聖な復讐の誓いを果たす御力を与えたまえ!!」


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2022/2/1
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