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誓約の騎士と霧の女王  作者: OWL
第一部 第四章 太陽王の戦い
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第20話 太陽王ティラーノ③

 結局、ティラーノは戦争を止める事の難しさを思い知る事になる。


1413年5月から始まった和平交渉はいったん休戦期間を結ぶ方向で進み、賠償金については棚上げされた。ティラーノはエルドロとネーヴェラによって傾いた財政を立て直す必要がある。賠償金などという国辱は最初から拒否するつもりだったが、財政的にも不可能だぅった。


ガドエレ家や西方商工会から大量の武器を買う契約もエルドロの時代に済ませており、中止すれば違約金を払う事になる。仕方なく購入した兵器を配備させた。


ペルセペランは王の直轄領をストラマーナ家の私財への転換を進めていて、旗下への貴族へばら撒いていた。

これも悩みの種だった。いまはストラマーナ家の当主となったティラーノだが、旗下貴族から取り上げねば自由に使えない。一度与えられたものを罪なく取り上げられれば誰もが反骨心を持つだろう。


賠償金の事や格下のウルゴンヌが生意気にも刃向かってきた事に怒る諸侯は多く、交渉が一か月も過ぎると休戦中にも関わらず戦闘が頻発した。

そして、スカダイ公ボルチーノがシエム城で大敗し城は陥落して失った。


「なんであいつが前線にいる。クラウディオ」

「勝手に前線に入りシエム周辺に残る我が軍をまとめて攻勢をかけていた。反撃を受けシエムに逃げ込んだ所、追撃を受けて陥落した。こうなるとオルヴァンは維持できない。敵の勢力圏のど真ん中で孤立する」

「リッセントは抑えているだろう」

「イルラータ公達は明日にも引く。そういう命令だ」


フランデアンの援軍がさらに増加したのを見て、イルラータ公の使者から退却する味方が国境を越えて戻るまでは維持するつもりだったが、もう引き上げを開始すると通告があった。


「いつまでも引き上げない味方に業を煮やしたか、しかし、意外と律儀な性格だったのだなあ。あの鼠男は」

「戦況が不利になってしまった以上、これまでの交渉は無意味だ。敵は勢いに乗ってくる」

「それで、どうする総司令官」

「嫌味か、命令を聞かない軍など任せおって」

「命令違反はどうするのが適切か、と聞けばいいか?」

「死刑だ。まだウルゴンヌにいる友軍など死んだ者として扱う。一度、ベリサールにリッセントまで行ってきてもらったが、使者の言は事実だ。相当数の民間人に犠牲者が出ている。エルドロもペルセペランも無責任に派遣軍に任せっぱなしにしていたせいだな」


二人とも嘆息して顔を見合わせる。どうにかしてこの後始末をつけねばならない。


「俺があいつらの為に苦労して、別に敵とも思っていなかった連中に敗北者として頭を下げるなど御免蒙る。エルドロを遥かに上回る増税を行って賠償金を支払うなど絶対に嫌だ」

「では、勝利して敵を殲滅し要求を取り下げさせるしかない」

「どう勝つ?」

「敵地では駄目だ。有り体(ありてい)に言って各地の主要な戦いより、敗残兵や野盗になった民間人からの襲撃の方が被害が大きい。馬鹿共のせいで無意味に恨まれ過ぎた。国内に引き込んで大軍を一度に打ち破り、敵の戦意を挫く」

「では、パスカルフローの脅威を口実に引き上げを徹底させろ。全ての橋と渡し舟を焼き払え」


 新帝国歴1413年7月。

和平交渉は完全に打ち切られた。

両国首脳が停戦を望んでいたにも関わらず。


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2022/2/1
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