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セブンスドール  作者: こうえつ
(最終章)まだ宇宙に神はいない
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A.D.4021.蘇るフェニックス

牢獄に繋がれた、美しき人形。

 独房にいれられたセブンスは手と足には枷が施され、その力を恐れる帝国軍により必要以上の過酷な制限を受けていた。手首は皮が剥けて血の固まりが出来ている。それでも苦痛を訴える事もなく、ただ無気力に過ごす日々を続けていた。恒星のように輝く瞳は、完全に光を失っている。


 突然セブンスのいろを失った灰色の瞳に光があたった。独房の壁に張られたディスプレイが点灯している。急な光に眩しそうに壁をみる人形は、現れた人物によって命が吹き込まれる。

「え……フィフス姉さん?」

 カメラを正面に立つ褐色のドールが話し始めた。

「セブンスこの映像を見ている時私は生きていないだろう。おまえに倒されているはずだ」

 いつになく真剣な表情のフィフス。自らの死を告げた言葉にセブンスは目を閉じる。だが、次の言葉で目を大きく開ける事になる。

「セブンス。クロムは生きている。おまえの愛する者は無事だ。だが危機に落ちている。砂の惑星を突破した彼らは微量な戦力で帝国首都星に攻撃をかけた。敵の戦力は膨大で……そしてアイツもいる」

 セブンスは画像に話しかける。

「アイツって誰?」

 動画のフィフスは、その問いを予想していたようにセブンスに話しかける。

「この銀河に神が現れた。いや神の力を持つが神にはなりたくないアイツに、銀河を好きにさせるわけにはいかない。立てセブンス愛するクロムを助けるためにも」

 コクンと頷いたセブンスにまた予想したように話を続ける褐色のドール。

「私やシックス……お前たちの呼び名は鈴々だな。二人の思いを引き継ぎ神を倒せ。おまえはその力をもたされている。クロムを……」

 神妙に聞いているセブンスの耳に、フィフスの語尾を消す、大声が聞こえた。

「おいフィフス! オープン回線で、クロム、クロムってうるせーー。その度に俺が、ぴくって反応しちまうじゃねえか。いったいなにしてんだよ。この大勢の敵の前でよ」

 顔を上げてフィフスを見つめるセブンスに、慌てる姉の表情が見えた。

「う、あ、え、っと回線開けてるの忘れてた……うるさいのはおまえだクロム!……コホン、それで話を戻すぞセブンス」

 なんとなく取り繕った気になったフィフスに、セブンスが指を指す。

「あ、姉さんの後ろに物凄いゴキブリが……」

 ぴょん、操縦席の上に飛び乗ったフィフスが助けを求めた。

「うわーーん。私、虫はだめだって。特に黒いのは絶対だめ~~」

 セブンスの疑惑の目に、慌ててまじめな顔をするフィフス。

「コホン、えーーと、そうだ! こ、これも私の予想でおまえがそう言うと思ってだな……」

「姉さん、これ、録画じゃなくて、生放送でしょ?」

 いきなりの核心をついた言葉に慌てるフィフス。

「え! そんな事ないもん。ワタチ、シンデマス」

「ワタチ?」セブンスはじーっと、画面を見つめた。

「……あは、ばれちゃった? 私、演技力あると思うんだけどなあ」

 フィフスの変ないいわけに、セブンスの怒り爆発。

「このバカ姉め。どういうつもりでこんな事してんのよ!? 私は姉さんを殺したと……ずっと、ずっと悩んでいたのに!」

 う、言葉に詰まったフィフスが、ハハと笑った。

「ほら、あんたみたいな、バカがつくまじめな小娘をからかうの私、大好きなのよ」

 長い銀髪を左右になびかせ、頭を何度も振るセブンス。

「その趣味はやめなさい姉さん。でもなんで生きているの。砂漠の星で私がドーラカノンで……どうして?」

 罰の悪い表情からフィフスが真剣な顔になった。

「アイツ……神に助けられた。私だけじゃない、もう一人の妹もな」

 画面が変わり、二千機もの帝国軍に悠然と相対する紫色の機体。大きな槍を構え、敵を牽制する姿が映った。

「え? 紫のマシン……もしかしてシックスドール?」

 セブンスの言葉に応える懐かしい声。

「ひさしぶりね、セブンス。この子とはサイズは違ったけど一回戦ったから覚えてたんだね」

 目を大きく開いたセブンス、瞳に深紅の光が宿った。


「やっぱり鈴々なの! でもどうして……」

「説明は後よ。さあ帰ってきなさい私達の希望セブンス」

 鈴々の言葉に顔を伏せた、セブンスの頬をつたう大粒の涙。

「おい! セブンスを泣かすなよ! フィフス!」

 レニウムがいたずら大好き、いじめっこフィフスに注意するが鈴々は首を振った。

「悲しくて泣いてるわけじゃないのよね。絶望の中で希望をもらって嬉しくて泣いてるのよね、セブンス」

「うん」涙を拭きながら顔を上げた、セブンスには強い意志が備わる。

 鈴々が緊急を告げる口調に変わる。

「急いで。敵は強大よ。あなたの力が必要なの」

 鈴々の催促にヨロヨロと立ち上がるセブンス。少し心配する鈴々。

「大丈夫セブンス、牢獄で監禁されてたから体調が心配。それにセブンスドールは長距離ジャンプが出来ない」

 フィフスが鼻で笑う。

「鈴々心配はいらない。セブンスおまえを大好きな物好き女が迎えに行くだと」

 フィフスの言葉が終わる前に、監獄星の静止軌道上に、白く輝く巨大な光の球体が出現した。エイトドール。セブンスの妹エイトが騎乗する大型浮遊要塞。八百もの攻撃衛星が正確無比に星に駐在する戦艦、格納庫、ミサイルなど、軍事施設を打ち抜いた。一瞬で星を無力化したエイトが、右手をセブンスへ伸ばす。


「待ってた私待っていた。来てセブンス姉さん」

 頷いたセブンスが命じるフェニックスの再構築を。答える幼き声はフェルコン。

「セブンスの希望によりセブンスドール・フェニックスを起動します」

 フェニックスの戦闘OSファルコンの宣言で、セブンスの手足の枷が砕け、囚人服から、レッドの戦闘服に変化する。胸に鳳凰をかたどったマーク蘇った銀河一のドールが深紅の瞳を見せる。


 セブンスの部屋の中央に重力の球体が発生、徐々にその姿を現していく。独房の壁を突き破り、体長十六mの神へ挑戦する機体がその全体を表す。

 セブンスドールは人間が造ったもので唯一、重力で身体を結合している目に見えない塵からでも再構築がどこでも可能だった。

 赤と白に彩られたフェニックスに騎乗したセブンスは、牢獄の一部を破壊しながら宇宙に出る。

 エイトの発するトラクタビームにより一気に、静止衛星軌道へと飛び上がるフェニックス。

「待っててくれたのね……エイト……沙耶」

 左目に不思議な輝きを見せた、セブンスの言葉に応えるエイト。

その右目にも同じ光が宿った。

「この時が来るのを待っていた……七海」


 光る大型の要塞に吸い込まれていくフェニックス。間髪をおかず巨大なエイトドールがジャンプした。

 クロムの待つ帝国の首都星へ向かって。

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