A.D.4021.セブンス対フィフス
高速で移動するセブンスドール、赤い光の軌道の中でセブンスの心が先走る。
気持ちだけがあせる。
先行したクロムのヘルダイバの部隊。
クロムは銀河でも名を知られた兵……だがセブンスの不安は大きくなるばかり。相手のフィフスはセブンス達ナンバーズドール中でも一番の戦上手。もしかしたらクロムが……
「セブンス。敵基地上空です。降下します」
セブンスの意識をやぶったファルコンの報告に、頷き身構える。
静かに高度を下げ始めた紅の機体。地上に降りたセブンスはファルコンの力を借りて、周りの状況を確認する。基地は門が破壊され、迎撃用のブラスタ砲、ミサイル発射台などは完全に沈黙していた。
注意を即して先に進むセブンス。基地内部で見たくないものを発見する。アルファ5。仲間のヘルダイバ。一見して目を背ける程の破壊度。
ファルコンがパイロットの死亡を告げた。
心を痛めながら、大きな不安は心臓の鼓動を大きく乱す。
基地は無人で残骸で溢れていた。短い時間だが激しい戦いが起こったのが分かる。また一つヘルダイバの残骸を見つけ、一人の仲間の死亡を確認する。
倒されたヘルダイバをサーチするファルコンは無口だった。
仲間のラバーズ、戦闘OSの最後の記憶を何回も見て、精神的ダメージを受けているようだった。人格をもつプログラムならではの現象。
ラバーズは人と同じ心を持ち、パイロットの守るべき愛しい者であり、たんなるOSではないとヘルダイバのパイロットならば、分かっていた。一緒に帰還すると思っていた。
「セブンス。全滅です敵……それと味方も」
両手で顔を覆い、まだ思い出にもならない、僅か前の時間を思い出す。
「さっきまでは十二機に仲間が乗って、それぞれのラバーズがいて、動いていた、戦っていた、笑いかけていた。それが全部なくなった」
落ち込むセブンス。
残された希望は……
だがクロムの乗る黒いヘルダイバが見つからない。
「クロムは無事なの? ファルコン何かわからない?」
セブンスの問いに別の声が答えた。
「クロム・サードは死んではいない」
顔を上げるセブンスの前に一人の美麗な女が立つ。
褐色の肌を持つフィフス。セブンの姉でこの基地の守護者。
「結構というより、思ったよりやられた。わずか一個小隊。必死な人間の力は計り知れないものだ」
破壊された基地の内部を見渡しながらフィフスは呟いた。
「姉さん! クロムは生きているって本当なの?」
セブンスの問いに右手を横へと向け水平に指をさす。
「生きている。あそこで辛うじてな。おまえなら意識したら見えるだろう?」
セブンスが指定された方向に目を凝らす、三キロメートル程先のビルの残骸の前に拘束されたクロムの姿。
「遠隔からなので100%とは言えませんが、遺伝子サーチの結果だとクロムだと思われます」
ファルコンの報告の途中でセブンスが叫ぶ。
「クロム! 今行くから」
セブンスの目の前に、巨大な黒い円盤が下降してきた。
フィフスドール、この基地を守る要、フィフスの持つ破壊兵器。
「簡単に行けそうと思ってる? この展開……私を倒して進む。そんな感じでしょ……クク」
黒い円盤に吸い込まれたフィフスに、セブンスが叫ぶ。
「どいて姉さん! これだけは譲れないの!」
空中に浮かび上がったフィフスドール。
「そう、ならば来なさい。命をかけてね」
空中に浮かび上がるフィフスドール。自身に重力シールドを張り巡らすセブンスドール。
黒と赤の究極兵器の戦いが始まる。




