A.D.4021.三つのメモリチップ
迫るアカエイ、攻撃するすべを持たないセブンス。このまま守り通すのも無理。
クロム達がこの場所を離れて間もない。敵基地にはたどり着く時間だが、敵の防衛網を突破するにはまだ時間がかかる……アカエイはまだひきつけておきたいし、できればここでこの強敵は倒しておきたい。
セブンスの思考が人間を遥かに超える速度でめぐらさられる。
「ファルコン……M・G・Fを解除!」
「え。それは」
紅の機体を操る戦闘OSファルコンが言葉を詰まらす。
「そんな事をすれば、装甲をもたいないセブンスドールは破壊されてしまいます」
美しい髪をなびかせて否定するセブンス。
「かまわない。シールド解除の後、上昇、ホバリング状態にする」
あまりに無謀なセブンスの指示。
重力シールドを解除してわざわざ敵が狙いやすい高度で停止するという。
「……わかりました。シールド解除。セブンスドール上昇」
さらさらとセブンスドールの周りから砂と金属片が雪のように地上に振る。
シールドを解除し、そのまま千メートルほど上昇した紅の機体は静止した。
「……さあ、これで狙いやすくなったでしょ? 来なさいアカエイ!」
操縦桿に力を込めるセブンス。
セブンスドールを追い詰めたアカエイの操縦者は躊躇していた。
「ねぇ、あれってどういう事? 撃ってくださいって、感じなんだけど?」
後席の攻撃担当も思慮している。
「確かに。諦めた? いや、そんな事は……やってみるしかないか。よし、何かの罠なのは分かっている。非常脱出ヴァレットを作動させておく。いくぞ」
前席のパイロットが頷き、アカエイの機体を砂の海から浮上させ、その赤茶けた姿を見せた。
「さあ、セブンス見せてみろ! 私たちを倒す罠を!」
アカエイの尻尾が上がり集積されたレーザーが打ち出された。
「やっぱり、直接、私を狙ってきたね。右腕はあげるわ。でもね近づきすぎた、私を狙うために」
右手で操縦席を庇うセブンスドール、腕は破壊された。
その時、十六メートルの紅の巨人の周りに強い重力が発生する。
「いっけーーーーー!」
空中から一気に地面へと下降するセブンスドール。
「そうか! セブンスめ、なんてことを考えたんだ」
アカエイのパイロットが驚きを見せた時、地上に激突するセブンスドール。
機体を囲む真球の重力のシールドは、周辺に凄まじい衝撃を与えた。
ひび割れ、砂が舞い散る大地、衝撃波を受けたアカエイは跳ね飛ばされて、二つに折れた。
地上にできたクレータの底に立つセブンスドール。機体が折られたアカエイへと一気に飛ぶ。
セブンスドールが重力の剣を振り下ろした時、アカエイの頭部が分離し、空へと飛びあがる。
振り下ろされた剣で、アカエイのボディは重力で切りつぶされ、完全に破壊消滅した。
「逃がしちゃいましたね」
ファルコンの声にこれでいいとセブンス。
「パイロットを殺すのが目的じゃない。さあ、急ぐわよファルコン。クロムの元へ」
空中に飛び上がったセブンスドールは赤い残像を残しながら、敵基地へ飛び去った。
「いっちゃったね。これでよかったのアイアンサンド」
ヘルメットを脱いだアカエイ前席のパイロットはショートカット、幼さが残る姿。
「ああ、フィフスの読み通りだよリン。あとはこれだけだな」
細くて黒い髪を指で梳かす。東洋的な美少女が金属の小さな箱を開けた。
中にはメモリチップが三個入る溝があった。
だが二つだけにしかチップは収まっておらず、最後の一つは空だった。
「このチップを彼らに届ければミッションは終了……だが」
操縦者リンが言葉を続けた。
「嫌な予感がするんでしょ? 私もそうなの……ねぇアイアンサンド戻らない? フィフスのところ」
リンの言葉に、いつもは無表情なアイアンサンドが表情を変える。
「フィフスが遅れをとるとは思えないが……確かに気にかかる」
一個だけ入ってないメモリチップの溝を見ていた黒髪の少女は思案する。
二人はフィフスの破壊兵器フィフスドールの操縦者だった。
「そうでしょ? 戻ろうよ。ね! もしかしたら私たちが必要になるかも」
考えていたアイアンサンドは頷いた。
「分かった。このメモリチップは確実に渡すとして、私達も見届けよう。フィフスとセブンスの行く末を。銀河の選択を」
高く舞い上がったアカエイ頭部、脱出艇。垂直上昇から並行飛行に移行して、セブンスの後を追った。




