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セブンスドール  作者: こうえつ
二千年を繋ぐ物語
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A.D.2041.七海永遠の想いが

七海は哲士の同僚で深海で一緒に事故に遭った、銀次の言葉を黙って聞いていた。


時々頷きはするけど、表情は硬いまま恋人の哲士の姿を思っていた。

 ガス田の事故は奇跡的に掘削マシンの故障が直り閉じ込められた人々は、みんな帰ってきた……哲士だけを残して。

 銀二の最後の言葉に視線を上げて、注視した七海。

「哲士は女神が守ってくれている。心配いらないからな。信じられないだろが海の底で見たんだ」

「うん、うん」

 続けて頷いた七海。銀次の言葉で確信得た。遠い未来にマイ神が生まれる事を。


 銀次が帰った後、遙か海の彼方を見ていた七海は久しぶりに外に出た。

 海辺の高台の岬を目指して歩き始める。


 空は青くそしてどこまでも高かった。

 水平線の彼方、哲士の沈む海をしばらく見ていた。


 夕方に進む時刻、風は少しずつ強く冷たくなっていく。


 オレンジ色に染まり始めた岬の風景。

 哲士との思い出が今の時と重なる。


「哲士。私はまた馬鹿やっているよ。でもね、あなたを助ける為なら、この世界が消えてもかまわない。あなたに逢った時に感じたからね、これは永遠の想い千年の恋だと」


七海は再び歩き出した。

もう柵は無く、その先に道もない。暗闇が占める空間。

白く泡立つ波が、遙か下で音を立てている。

両手を哲士の眠る海へ差し出して、七海はその一歩を踏み出す。


七海は遠く果てしない、時空の先を見ていた……そして、スッと岬から消えた。


落ちていく。

ゆっくりと。

世界が惜しむように。

七海が描く最後の軌道。


七海の遺体は結局見つからなかった。

小さなフォトスクリーンに写る、七海の笑顔。

沙耶はポロポロと大粒の涙をこぼした。


「結局、救えなかった。私は何も救えなかった……なにが天才だ」

 カーテンを揺らして、海辺の風が部屋の中を舞う。

 七海の香りがする部屋で涙が止まらない沙耶。

 フォトスクリーンの七海が沙耶の哀しみを感知して、遺言を話し始めた。

「沙耶いるのね。残酷な予感だけど、たぶん間違いない、感じる予感はいつにもましてハッキリとしているから。私は沙耶に救われたよ。マイ神はその姿を現した。銀さんの話で確信したの。まだまだ微かな光だけど、いつかその光が銀河を覆いつくす、そして救ってくれる。哲士も未来の人々もね……だから行くね」


「ねえ、どうして!?」沙耶が叫ぶ中で流れ続ける七海のビデオレター。

 微笑む七海がメッセージを続ける。

「この次元ではもう二度と哲士には逢えない。未来を神が変えてたら、過去も変わる。その時新たな世界が出来る。この次元とは別のパラレルワールド。新しい世界で別の私は哲士と千年の恋を過ごすでしょう。でも、この世界の私はもう二度と哲士に逢うことが出来ない。哲士は死に私は生き残る、この世界では決まった事でコミット済み。ずっと一人なんて、哲士がいない世界なんて、とても我慢できそうにないの。ごめんね沙耶。あなたにはいつも迷惑をかけて。そして、ありがとう。こんな私の、マブダチでいてくれて。好きよ……沙耶」

 

フォトスクリーンのビデオレターは終わった。

沙耶はその大きな瞳でスクリーンの七海の笑顔を見ている。


「だめだよ七海。別の世界で千年の恋だって?……馬鹿じゃないの。別の世界の、あなたじゃない七海なんて、私にはどうでもいい。この世界で私がいるこの世界で幸せになりなさいよ。そうじゃないなら、神なんか作っても意味なんて無いでしょう。ねえ、七海……そうでしょう」

 

立ち上がった沙耶は、自分の研究室へ歩き始める。

自分の席のコンソールを立ち上げ、新たにプログラム制作を開始した。


「七海、この世界にあなたの神は干渉した。銀二さんはそれを海底で見た。今は幻のような力でも、それが強まるとこの世界は変わってしまい別のパラレルワールドになってしまう。だから神の力の干渉を微調整するよ。この世界の変化が大きく成りすぎる前に、別の世界が生まれる直前に七海と哲士を救うの。このプログラムはあなたのコドクプログラムのサポートシステム。私も行くよ、一緒に二千年の時を越える。だから待っててね、七海。アタシのマブダチ」


沙耶は立ち上がり医薬品の棚から、クスリとシャーレを取りだした。


「私のプログラムが遺伝子があなたの神を守る。そして苦しめる。その苦しみの中を足掻きながら一気にではなく、少しずつ神の力を覚醒させる。そして最後に……」


研究所の窓から遠く海が見える。

その青い輝きを見ていた沙耶。

海辺の風が部屋の中を舞う中で沙耶は、近くに七海の気配を感じた。

静かに語りかけた沙耶。

「きっと……また逢えるよね……七海」


沙耶はシャーレに、取りだした自分の青い右目を入れた。


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