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セブンスドール  作者: こうえつ
銀河の動乱
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A.D.4020.アルモニアのために

「死を操るだと? 物騒な二つ名だな。想像するに暗殺専門のドールといったところか」

 レニウムが初めて聞くドールに思いを寄せた時に、病室のディスプレイに美麗な青い瞳の少女が映った。

「だれ? こいつ?」

 テルルが聞いて、あきれながら答えるレニウム。

「おいおい、銀河帝国の第一王女だろ!? 知らないのか?」

 ぜんぜん、とテルルとクロムが首を振る。

「まあ……おまえらは野生児だから政治は興味ないか……だが、この緊急放送は……自由軍が迫っているのに」

 疑問を浮かべるレニウムの前で放送は続き、王女が話し始めた。


「私は争いは望みません」

 鈴々の病室のディスプレイに映った、まだ幼さが残る、銀色に輝く髪は足元の近くまでストレートに伸び、吸い込まれるような青い目、真っ白な肌。漂う気品。

 テルルが自分の端末で現在の状況を収集。

「あっ、みんなこれ見て! マジですか!?」

 全員がテルルのハンドヘルドPC画面を見た。

 そこには反乱軍によりエール十四世が殺された事、第一王女エルセルが即位して第十五代皇帝になった事が表示されていた。

「クルセーダ作戦は成功したのか。しかし、手ごたえがなさすぎる。帝国内部で反乱でもあったのか?」

 レニウムの呟きにテルルが答える。

「帝国軍が動いた様子はないよ。だいたい首都星には軍が殆どいない」

 全員が疑問を持つ中、王女エルセルは言葉を続ける。

「私は変革を望みません、先代王が計画したドールへの人間の移行計画は白紙とします。人は自然に生きるべきです。ドールに魂をもたせるなど神のルールを逸脱してます」


女王が右手をあげるディスプレイが空中に表れた。

「私が望むのはアルモニア。すなわち調和です。先ほどから述べているように私は争いは望みません。しかし調和を崩すものは容赦しません」

 女王の傍らには首都星を目指す反乱軍の大部隊が映った。

「さあ、世界にアルモニアを。私の願いを叶えなさい」

 女王の言葉に鈴々が呟く。

「あの子が望むものはアルモニア……」

 聴覚が優れたセブンスが振り返った時、首都星の衛星軌道上に巨大な光の球が現れた。ジャンプしてきた”エイトドール”だった。


 円盤型で外苑部に十二基の巨大な核融合炉を持ち、その無尽蔵なエネルギーで、数百もの攻撃衛星を操る事が可能な銀色の巨大な要塞。巨大要塞の内部。百人を越すオペレーター。その全てが戦闘補助の為のドール。透き通るフロア、調度品の全てが光り輝くクリスタル。一段高い場所に他を圧倒する力と美しさを持つ、一人のドールが座わる。意志の強そうな大きくて黒い目、髪は青い色。毛先にカールがかかったミディアムボブ。立ち上がったその姿は、小柄だが、どこかセブンスに似ていた。最新のドールであるエイトが命令を下す。

「反乱軍を攻撃せよ。アルモニア、王女の願いをかなえるために」

 八百もの攻撃衛星が光に包まれる、ブラスタ砲がフルパワーで一斉に撃ち出され、数百もの光の束が反乱軍へと延びる。

 突然のエイトドールの出現に驚いた反乱軍だったが、即座に迎撃態勢をとって反撃に出た。だが、戦いは長くは続かなかった。

 セブンスとの闘いの時とは違い、100%の力を制限なく使う完成形の宇宙要塞エイトドールは凄まじい力を見せた。


二時間後、反乱軍は壊滅し、残った艦艇は撤退を開始した。


 自由軍基地でクロム達は圧倒的なエイトの力を見せられ、反乱軍の主力部隊の壊滅を見せられて呆然としていた。やっと、テルルが口を開いた。

「なに今の。あたしたちと戦ったエイトは、全然本気じゃなかったのは分かるけど……あんなのないよ……反則的な強さだよ!」

 艦隊の壊滅に項垂れるレニウム。

「首都星の強襲、皇帝の捕獲が目的だった。目的はほぼ達成したのに……なんという力なんだナンバーズドール……自由軍は、我々は戦力を失った」

 くそ、壁に拳を叩きつけたクロム。

「今ので、たった二時間で、何人死んだ? これもシルバ、おまえの親父の計画かよ!?」

 あまりの出来事で冷静さを欠く仲間の怒りの言葉に戸惑うセブンス。

「ごめんなさい。わからない。でも、フィフス姉さん、エイトがあそこにいて、この結果になった。確かにお父様が関係しているとしか考えられない」

 セブンスの言葉に続き、テルルが皆が聞きたくない言葉を発した。

「……もう終わりなの? 私たちはすべてを失ったの? これからどうするの?」


 誰も答えられなかった。沈黙が続いた後、鈴々が口を押え苦しそうな表情を見せた。

「鈴々!? 大丈夫か? みんな、ここはいったん解散する一時間後に俺の部屋に来てくれ」

 レニウムが鈴々を気遣い、部屋からの全員の退出を促した。

 項垂れながら全員が部屋から出ていくなか、一番最後に部屋を出るセブンスに聞こえた、うめき声のような鈴々の声。

「アル…モニアを…望む…そう…なのね」

 不思議に思い鈴を見たセブンスの後方で扉が閉まった。

 

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