A.D.4020.クロムの憤り
「つまり、今は真っ黒なこの画面、次に映し出される事が、レニウム、お前には分かっている……そういう事か?」
クロムの言葉にレニウムが応えるより先に、セブンスが叫んだ。
「あれ……あれは宇宙船……?」
その言葉にディスプレイを見たクロムの目にも見えた、金属製の船のシルエット。その数はディスプレイには映りきらない程の数。
「あれは……あたし達の軍、アウローラの本隊……ほぼ全軍よね!?」
驚くテルルの側らで、クロムはレニウムを睨み付けた。
「これはなんだ!? 俺はまったく知らんぞ! どうゆう事だレニウム?」
レニウムは腕組みをして、祈るように瞼を閉じてからクロムに答えた。
「……我がアウローラ自由連邦は、本日00:00に帝国の首都星ルウツに、全軍で総攻撃を開始した」
「馬鹿な……俺は何も聞いていないぞ! なぜだ? どうゆう事なんだ! レニウム!」
鈴々の病室、クロムがレニウムに猛然と近づく。その顔は怒気を含んでいた。
「どうもこうもない。今、言ったとおりだ。我が軍の全力を挙げて帝国の本星を叩く作戦を発動した」
クロムがレニウムの胸ぐらをつかむ。
「だから……そんなの聞いていねぇ! なぜ、俺に知らされていないか、それを聞いているんだ!……おまえが……なぜ、こんな大事を黙っていたか、理由を聞きかせろ!」
興奮するクロム、その強靱なで腕で締め上げられ、空中に釣られて踵が浮いたレニウム。しかし表情は冷静なままだ。
「クロム……こんな状況で参加出来ると思ったか? うちのチームは戦艦サンタナはやっとこの基地にたどりつけた状態でボロボロ、おまえと鈴々のヘルダイバは起動不可なまで破壊されいる。それになにより……」
クロムは、レニウムの視線の先のベッドで身を起こしている鈴々を見た。
「……そうか……お優しいな。レニウムおまえは……だが、俺は行きたかった。ヘルダイバが無くても一兵卒として帝国と決着をつけたかった……そして、あの女フィフスとも」
クロムの怒りにも表情を崩さないずレニウム。
「クロム……戦えるさ。俺はこの戦いで決着はつかないと思っている」
「決着はつかない?……ますます、おまえの言っている事が分からない!」
レニウムを病室の壁に投げつけ、クロムはディスプレイのフィフスを見る。
「フィフスにうちの兵士が何人殺されたと思う? どういう理由か分からないが、あいつは前線基地を離れ首都星ではしゃいでいる。作戦があったんだろう? 俺たちがセブンスを奪回する作戦の前から。鈴々の回復を真から祈っている時も……おまえは、作戦の進行を知っていたんだ!」
クロムに叩きつけられた壁から、身を離し襟を正したレニウム。
「ああ、知っていた。今回の作戦は半年前の前線基地での敗戦から始まっている」
「なんだと……」クロムがレニウムへ再び詰め寄る。
「レニウム、おまえ、まさか、あいつの事で……」
「ああ、そうだ。兄貴を殺された単細胞のお前を出撃させない為に、うちのチーム全員を出撃不可能と上層部に報告した」
「俺のせいだと言うのか? 俺がまともに戦えないと思っているのか?」
「ああ、フィフスに殺されたクロム・セカンド、自分の兄の敵を取るために、おまえは必ず無茶をする。熱があり過ぎるんだ戦士としてな。今回のセブンス奪回でそれがハッキリした」
「どこがだ!? 俺が命令違反でもしたか?……優秀な士官であるレニウム大佐の指示を違えたか?」
腕を大きく広げ、レニウムに感情をぶつけるクロム。
レニウムのチームが、最後かもしれない帝国本国への総攻撃ミッションに参加しなかった理由が、自分にあるとことクロム自身は納得いかない。
興奮するクロムを冷静に見ながら、言葉を続けるレニウム。
「おまえは俺の指示に従い、結果、誰も失わずにセブンス奪回を果たす事が出来た。さすがアウローラのトップガンだよ」
「では、なぜだ? なぜ今回の戦いを放棄したんだ!」
感情を露わにするクロムをレニウムは静かに短く答えた。
「俺は……おまえを失いたくない」




