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セブンスドール  作者: こうえつ
銀河の動乱
24/74

A.D.4020.鋼の騎士たち

「やはりいい子ね、そのラバーズ」

 フィフスの言葉が終わる前に、白いヘルダイバは、その巨体を静かにスムーズに始動していた。チームの準備を待ち、パイロットの意思を察し、ラバーズが自分で戦闘の口火を切ったのだ。

 右肩の裏側に装着されていたブラスタ砲、フィフスを刺激しないように、正面からは見えない位置に付けていたそれを、右手に移しフィフスに向ける。

「フィフス、何か不思議な感じがします。とてもチャーミングなあなた。だからこそ大きな危険を感じます」


 巨大なヘルダイバの前に、立つフィフスは、ちぎれかけた左手をぶらりと下げたままで、骨が折れ筋肉もズタズタの右手を、ゆっくりと動かし腰に当てて、斜めにモデルのように立ち微笑んだ。

「フフ、ここからはわたしのターンだと、さっき言った。この場所に立った時点で勝敗は決定している」

 まさにフィフスの威風堂々。優雅で美しい姿に心を惹かれながらも、ラバーズは動きを止めていなかった。

「大佐。包囲を完了しました。ラバーズのリンクも終えています。同士討ちはありません。目標を見失う確率も0.0001%以下です」


 ヘルダイバの戦闘OS、ラバーズは、インフォメーションリンクにより、チーム全機で、瞬時に情報を共有出来る。共有した情報により機体の調整をラバーズがそれぞれ行う事で、味方のに流れ弾が当たる事を防ぎ、敵の姿を全機で監視して、死角を減らす事が出来る。リンクされたヘルダイバのパイロットは周りを気にせず、一機のマシンのように全開で戦う事が出来る。

「ショルダーオープン! 追尾弾頭レディ!」

 シュティレ大佐が叫ぶ。

 大佐の行動を予想していたラバーズにより、既に発射状態にあった、ヘルダイバの肩に装備された十二機のミサイル。

「ブラスタ砲は強力だが、その分、射撃後にブラックアウトの時間が生じる。高エネルギーによる、目視カメラとレーダー類が数秒使えない。先ほどはそこをつかれて逃げられた」

 操作にパイロットも加わり、機動力を一気に増加させた白きヘルダイバ。

「弾道攻撃ヴァレット起動! ミサイル発射!」


 大佐の指示によりミサイル発射ヴァレットが起動。攻撃の為に必要な手順をマクロ化、知能化し、敵の動きにより組み込まれた行動を、ヴァレットが操縦者に代り自動的に実行する。人間の反射行動、熱い器を掴んだときに手を放す、それと同様にパイロットが考えなくても、反射でヘルダイバに行動させるためのシステムがヴァレット。ミサイルを一斉に打ち出すのか、一発ずつ時間差で打ち出した方がいいのか、効率を計算しながら自動的に行ってくれる。反撃を受ければ、ミサイルを肩のショルダーブロックに一時格納して、被弾を防ぐ事も可能である。

 ヴァレットはパイロットがシステムに自分で組み込み、より自分にあった行動をするように調整され、それが機体の癖や特徴にもなっていた。


今回のヴァレットの選択は「ミサイル全弾の一斉発射」だった。

十二の弾頭がヘルダイバの肩から放射状に放たれ、一点を狙った。


全ては一瞬だった……。


 打ち出されたミサイル、その全てが打ち落されたのも……そして白いヘルダイバが動いたのも。空中で次々と打ち落とされる放ったミサイル、その事は予想済みのようにヘルダイバは、背中にしょった大型のランスを抜き放つ。

 西暦四十世紀、全ての兵器は光学のシールドと、超密度の重原子の金属により装甲を覆われている。ビーム兵器ではない、それは紀元前行われた戦い。闘技場に立つグラディエータが持っていた同じく剣と盾は鈍く輝く。一気に素早く執拗なランスの一撃だった。だがシュティレは失望の色を見せる。

「届かなかった……これが最後で最大のチャンスだった。衝撃のドールを破壊する、そのタイミング」

 大佐の騎乗する白きヘルダイバは、突き出したランスに鋼の感触を感じていた。

「ふふ、ここまで追い込まれたのは、解放軍クロム・サードとの戦い以来かな。久しぶりだよ。おまえたちは本当によくやる」


 飛び散る瓦礫、舞い上がる粉塵の中で、フィフスが地面に突き刺さった巨大な盾に手を置き、シュティレのヘルダイバを見上げる。

 ヘルダイバのミサイル、ランスの撃を防いだ盾、鋼のそれは直径は20メートル。対峙する白きヘルダイバより二回り大きく、フィフスを守る。

「これか……これが……」

 フィフスを倒すチャンスを逃がした感触は、目の前の巨大な鋼の盾を目にして実感に変わる。ラバーズがパイロット、シュティレに頷いた。

「そうです。これが、フィフスのドールズ。一対の破壊兵器フィフスドール」


「これが、反乱軍をことごとく壊滅させた最凶の……ドールズマシン」

 スクリーンに映るフィフスは、まるで大佐とラバーズの会話を聞こえているみたいに、視線をヘルダイバの頭部カメラに向けた。

「く、もう一撃を!」

 フィフスに向かって再度攻撃を試みようとするシュティレ。しかしラバーズは違っていた。

「だめです大佐。後方に移動して距離をとってください」

 ヘルダイバを越える大きな鋼の円盤型の盾に、フィフスが吸い込まれた。

「強制離脱。移動用ブラスタオン。後方800メートルへ移動します」

 パイロットであるシュティレの判断を待たず、ラバーズがヘルダイバに命令を下す。

「く、だめか」

 シュティレの小さな感嘆。その前で巨大な円盤が空中へ浮かび上がり、回転を始める。急速に遠くなる巨大な円盤は数十メートルの高さ、空中に浮遊する。


フィフスドール。

 直径20メートル円盤型、四方に移動用ブラスタエンジンを備えた超大型の空中戦車。上部のハッチが空きガトリング砲が現れ、瞬時に数千発もの実弾を打ち出した。全速で後退する白きヘルダイバ、シュティレの目の前の地面が次々と破壊されていく。

「移動完了。完全防御姿勢に移行します」

 後方800メートルまで下がったヘルダイバはラバーズの指示で、即時に純白の盾を構えその全身を隠す。追いついたガトリングが着弾。強烈な衝撃が雨のようにシュティレの体を揺さぶった。


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