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セブンスドール  作者: こうえつ
銀河の動乱
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A.D.4020.フィフスドール

「フィフスドール。巨大空中戦車。あんなものどこからもちだした!?」

 振動するコクーンの中、シュティレの呟き。素早く分析を行うラバーズ。

「記録によると王宮の道路越し、正面のビルは先月改修されています。おそらくビルの内部にフィフスドールを隠していたと思われます」

「なぜ、そんな事が可能なんだ!? 公安部隊は何をしていた!」

 やまない弾幕を耐えながら、怒りを顕わにする大佐にディスプレイに立体で浮かび上がる少女は冷静に答える。

「シルバ卿の力でしょう。王の側近でありこの国で高い権力と信頼を得る立場である卿。情報操作は比較的簡単だったと思われます。それと、これはなんて言ったらいいか……」

 返答に困った様子のラバーズに答えを急がせるシュティレ大佐。

「それと? なんだハッキリ言え!」

「は、はい。この星、ひいては帝国の人間の慢心だと思います。強大な戦力、今まで数百年も戦火にあっていない首都星……つまり」

 少女の言葉にシュティレは首を左右に振った。

「くっ、つまりシルバの言葉どおり、国を亡ぼすのは腐食、内部からというわけか?」

「そうですね……あっ大佐、きましたイーグルです」

 シュティレがラバーズの声でディスプレイを確認すると、複数の白い点が能われた。

「空中から落下中のヘルダイバ12機。我がチーム、イーグル小隊が予定ポジションにつきます」

 ラバーズの報告に隊のリーダーであるシュティレは叫ぶ。

「よし! 時間は稼げた。ここからはイチかバチかだ。ラバーズ、緊急脱出するぞ!」

「はい、私達のヘルダイバを飛ばします」

 果てしなく続く、フィフスドールからのガトリングガン。それを大きな盾で受け続けた白いヘルダイバが動き出す。


盾を前に強く押し出し、同時に移動用のブラスタに全パワーを伝える。

大きな振動が機体に響いた、盾を捨てた機体に直接、ガトリングガンが命中する。震えるコクーン、操縦席でシュティレは命令を出す。

「今だ。飛べ!」

 命令と同時に16メートルを越す巨大な人型兵器は、備えられた移動ブラスタを六機全部を点火。空中へと浮かび上がる。

 逃げるなら、さらに後方に距離をとると予想していたフィフスドールの攻撃が、一瞬だけ外れた。だが、即座に焦点を空中に合わせてくる。


その時、空中から四筋の光が、巨大な黒い円盤形のフィフスドールを直撃した。


 上空から落下しながらのイーグル、シュティレの統率するヘルダイバ小隊からの援護射撃だ。

「いいぞ。このまま後方のビル群まで後退!」

 シュティレの指示でラバーズは白き巨体を二キロメートルまで下がらせた。

「攻撃が甘いなフィフスドール。主人が傷つている今ならではあるが……」

 ビルを瓦礫にしながら強制着陸を試みたシュティレが、わが身の幸運を呟いた。


「もーー、攻撃が下手過ぎ! 私の素養が疑われちゃうわ!」

 ヘルダイバのコークンよりかなり大きな、それでも重力の糸によって柔軟に強固に結合されたパイロット室で悪態をつく褐色の女。フィフス。前の席に座るショーカットの女の子が前方のメインスクリーン見ながら、機体の制御を行っている。敵イーグル小隊からの砲撃をかわした直後に、フィフスに言い返す。

「攻撃はフィフスが担当でしょ! あたしは移動と制御が専門なんだからね!」

「なによリン。私は大けがしてすぐには操縦できないの! 見たらわかるでしょう!?」

 フィフスの両腕は肩から指先まで酷い傷を受けており、コクピットに備えれらている緊急治療システムで治療中だった。

「大体さ、目立ち過ぎだし悪乗りしすぎだな」

 ショートカットのリンの横に座る、細面で黒い髪を指で梳かす、東洋的な美少女がフィフスに自業自得だと言う。

「うっさいよ。アイアンサンド。おまえの説教と悲観主義は、ハイスクールの先生を思い出してゲンナリだよ」

 左右の腕に透明な治療用のチュウブを巻き、細胞再生剤を直接流し込む、フィフスが痛みに顔を歪ませて不満を言う。


フィフスドールの操縦は三人で担当する、リンは移動を主に担当する。アイアンサンドは防御を主に担当。攻撃はフィフス。

そして驚くべきなのは、リンとアイアンサンド、二人は人間であった。

 西暦四千年にコパイロット、副操縦士は人工知能であるラバーズが普通であり、大型機体にはドールを搭載するのが常識だった。どちらも人間より優れたタレントを持っているからだ。しかしフィフスは違っていた。

「私の言いなりに死ぬ人形は気持ち悪い。とことん逆らって、敵の強烈な一撃でゲロを吐きながら、一緒に戦ってくれる。そんなのがいい。だから人間がいいの」

 ドールでありながら、戦争の中で見せる美学は決して上等な装備や、華麗な作戦ではなく、ギリギリの死線を越えていく、その為には反抗も嘘も見苦しさも、許されるし、それこそが戦いの美学だとフィフスは感じていた。


「すべてに必死であること。ギリギリ感」

 それは死ぬことも忠誠だとプログラムされている、ドールやラバーズにはない事。死にたくない、だからえげつない作戦も行える。死ぬよりましなのだからと。

「ねえ二人ともこんな時だけどさ……死ねる? リン。私の為に」

 フィフスの不意の質問。だがこの手の言葉にはなれている。

 従順な口調でリンが答える。

「はい。もちろん嫌です」

 あはは、フィフスが大笑いした。

「リンらしい。じゃあ、アイアンサンドにも聞くけど……」

「私に聞いても無駄だぞ。答えはリンと同じだ」

 フィフス悪戯ぽく目線を長い髪の少女に変えた。

「フフ、そうね。じゃあ、あなたは死ねるアイアンサンド? ”あたしたち”の為に」

 フィフスの言葉に人間の少女は一瞬戸惑いを見せた。

 それに反応して喜んでいるフィフスにやられた感を見せたアイアンサンド。

「フィフス……喜び過ぎだ。私が困るのを喜んでいるようだが、答えはNoだ。私は死なない」

 ほう、少し感心した表情のフィフス、アイアンサンドが続きの言葉を発する。

「全員で生きて帰る。一人では死なない」

 フィフスが円満の笑みを浮かべた。

「そう、これだから人間は面白い。戦う価値がある相手で仲間でもある。感情を持つ人間こそが戦いにはふさわしいボーンなのさ」


フィフスは傷の度合いが少ない、右手で操縦パネルに触れる。

「痛いな……でも」

 激痛が走るがこの瞬間が生きている証拠だと感じられる。

「戦闘に復帰するよ。攻撃システムをこっちに回して」

 フィフスの言葉に、上空からの高出力ビームを防御シールドで受け止めながら、システムの調整を瞬時に行ったアイアンサンド。

「了解……無理は禁物だぞ。撤退でもいいからな」

 アイアンサンドの無表情な口調が、フィフスの体に気遣いを見せる。

「ほんと人間って面白い。破壊と融和が矛盾なしで存在する、悪魔と天使、その両方を持つ。だから強い。信じられる」

 フィフスが操るパネルが真っ赤に輝き始める。その輝きに高揚したフィフスの表情が写る。

「さあ、リン、アイアンサンド。これからは私たちのターンだ。いくよ!」


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