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セブンスドール  作者: こうえつ
死に方を見つける為に
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A.D.4020.世界の退廃

蒼き星の金色に輝く街は美しき調べ……


 パーティ会場はかつて存在した“地球”という星の貴族が住む宮殿のように、煌びやかで、豪華なもの、耳に入るのは完璧な旋律。

 演奏されるのは太古のシンフォニー。


 数千年前の曲を奏でる楽器は既に存在しない「地球」の遺物である木製品。

 バイオリン、チェロ、コントラバス、管楽器。

 数千年変わらぬシンフォニー。

 奏でるのは、未来の技術の結晶である美しき人形達。ドール。


 かつて人間の想像力は、本やディスプレイの中で想像力をビジョンとした。

 そして西暦四千年、全ての技術の終着点を見る現在、人は実際にビジョンを血と肉を使って、リアルに創りだす。エンジェル……教典に現れる、美しく聡明で永遠の存在を人の手で造る。


 人の遺伝子を操作し人以外の優れた神経細胞を移植し、優秀な品質の筋肉や臓器を培養して、血と肉をエンジェルの器に詰め込む。

 それは完全な人、古くは物語で語られ映像化された人々が求める理想の姿。

 完璧な美の調和を持つHi-HuMan。人間がその肉体で完璧な美を纏う、それはドール(DOLL)と呼ばれ、人の手で作り出された。人間を越えるポテンシャル。エルフのような“人間の理想”の外見。だがその扱いは、ペットと同じで“どれだけ優れているか”それを競うアイテム。


 どんなに優秀でも人が頂点のこの世界を揺るがす存在は要らない、ドールは誕生した時から、完全なマインドコントロールを受け、人には絶対服従が基本だった。


 今、楽曲を奏でているドール達は、脳に音楽用のシーケンサーを持ち、人間を遙かに越える聴覚とリズム感を持っている。たとえ数日演奏しても、その疲労で音程やリズムを狂わす事は無いだろう。


 死ぬ直前まで完璧に動作を続ける。そして自身のその身体も、完璧な美しさを持ち続ける。


豪華で煌びやかな、パーティは続いていく。


今日のパーティの主役は、生まれたばかりの一人のドール。

その名は“セブンス”


 透明感を見せる青いドレスは、それ自身が光を受けずとも輝き、見る位置により微妙に色を変えて、着ている者を光と色で最高に演出する。真紅の唇大きく開くルビーのような紅の瞳、空中に流れて輝く長い銀色の髪。見る者全てが引きつけられる姿から、心地よい声が程よい音量で発せられる。

 極めつけは、いかなる時でも、優雅でしなやかな、まるで能の舞台のような動き。人類の最高美術が“人間の身体を使って”表現されていた。


その制作費は小さな星が軽く買える程。


 完璧な美しさと優雅な動き。セブンスの作成者、父親でもあるシルバは嬉しそうだった。セブンスとシルバの登場で会場の全員が立ち拍手を送る。拍手を受けて、侯爵シルバの七人目のドールは、静々と会場の中央まで進み華麗に会釈をした。


 毎日のように行われる、貴族による豪華なパーティ。それは、数百億の星の民の忠誠と労働により、実現化可能なもの。この銀河を治めるミネルバ帝国、一握りの貴族が全てを持ち、そして全てを支配する。


 二千年前、宇宙に出た人類は「高い理想と犠牲も厭わない強い意思」で、この銀河を切り開いてきた。

 しかし、やがて全ての技術が最高点に達した時、無限の宇宙が、実は到達出来る範囲が限られた「閉ざされた空間である」事を知る。


二千億まで増えた人類に大きな落胆が生まれた。


人々に閉鎖感が広がり心の渇き「退廃」が広がった。


 今だけの快楽を求める人々、希望を無くした人々、そして「枯渇する」全ての資源。恒星間航行ジャンプが可能になった現在も、人は自分の銀河を越える事は出来なかった。行ける範囲が決まった瞬間から、全ての資源は限られた有限のものに変わり、限られた資源を有効に利用する為に、民主制は捨てられ強制力のある貴族政治が求められた。


宇宙はフロンティアではなくなり、人類は未来を失った。


 強まる一部の支配階級の力、太古の貴族主義が蘇り、コルセットで身体を変形させ、その美しさを競った地球の中世にまで文化は後退。

 

そして西暦四千年。

人類が次に進めるかこのまま滅ぶのか「選択の時代」であった。


 人の種としての可能性が試された時代は、滅んだ古代の文明がそうであったように、文化、技術、そして人が熟した桃のような、甘美な匂いを放つ。


たとえそれが、ほんの一瞬だけのものだと、人々は感じながら……も。


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