第二話 「プロローグⅡ」
落ち着こう。まずは落ち着こう。話はそれからだ。
『貴方の心拍数は常に一定値を記録しています』
そういうことじゃないんだけどさ……。
まぁ良いか。取りあえず質問の続きしても良い?
『問題ありません』
ならまずはこの体について教えてくれ。不老不死も可能っていった?
『肯定します。貴方の肉体が再構成され魂と肉体が合致したことで貴方は私と同位階となりました。不老不死はその恩恵の一つとなります』
お前と同位階? どういうこと?
『人間は本来非創造者、世界において低位階に位置する存在です。ですが貴方は創造者、より高位階に位置する存在となりました』
高位階って……もしかしてこの世界の神にでもなったてこと?
『否定します。神と呼ばれる者はこの世界を創り上げた者を言います。ですが神に近しい能力を持つ者という意味では肯定します』
神に近しい能力? さっき使ったやつのこと?
『肯定します。再構成は貴方が望んだ物をこの世界の物質を再構築することで創り上げるものです。また、貴方はこの世界の根源と接続されいますのでこの世界に関することであれば全て知り得ることが可能です』
それは確かに神に匹敵する能力だわ。
神を呪って死んだ俺が神に匹敵する力を持って生まれ変わるなんてお伽噺もビックリだよ。
『この世界は全て因果の上に存在しますが、極稀にその因果すら凌駕する存在が居ます。貴方はご自身の運命すら超える存在だったのでしょう』
あれ? もしかして俺のこと慰めてくれてる?
『否定します。私にそのような感情はありません』
あ……そう。世界さんは全てを包み込む存在のわりに冷たいのね。
まぁ良いや。
次の質問なんだけど、この世界について教えくれる?
『この世界は嘗て神によって創られた世界です』
神……ねぇ。とりあえず神は良いや。
この世界の主な種族とその数について教えてくれ。
『主な種族は、人類が三千万、エルフが百万、ドワーフが八十万、幻想種が百、魔族が一億五千万となっています』
んー……やたら魔族だけ突出して多いね。魔族ってどういった存在? 何故にそんなに多いの?
『魔族は神が人類を生み出した時に副次的に生み出されてしまった存在です』
生み出されてしまったってことは、魔族は余り役に立つ存在ではないってこと?
『世界にとってもこの世界に住む存在にとっても害にしかなりません。魔族には理性がなく持ち得るものは破壊衝動のみですので』
完全に産廃じゃないか。世界からも産廃扱いされる存在とか悲し過ぎるでしょ。
てか生み出されて時から産廃製造機とか人間も終わってるよね。
何で神はそんな仕様にしたんだよ?
『それが神の限界でありました』
神も万能じゃありませんってことね。なら魔族はこれからも増え続けるってこと?
『肯定します』
そうしたら人類はどうなる? このままなら魔族に滅ぼされるんじゃないか?
『肯定します。人類のみでなくこのままでは魔族以外の種族はいずれ全て滅びるでしょう』
うわぁお。最悪じゃないか。神は何してんだよ。
このままなら自分が創った種族が滅び去ってしまうだろ。
『嘗ては定期的に魔族の浄化作業が行われていましたが、現在はそれも行われておりません』
何故に? 飽きた?
『神は既にこの世界から去ってしまいました』
……あーそうかい。そうかい。要はあれか、この世界は神に見捨てられた世界ってわけか。
全くもって酷い話もあったもんだ。
自分で欠陥システムを作り上げてさんざん産廃を生み出した挙げ句に後は知りませんってことか。
アフターフォローも出来ないくせに神なんてやってんじゃねーよ。
『神が何を考えていたのかは私には分かりません』
分からなくて良いよそんなもん。どうせブラック企業のワンマン社長みたいな奴だろうから。
俺の中で神の威厳が大暴落だよ。
てかそれじゃあこの世界は滅んで行くのを待つしかないってこと?
『否定します。現在この世界には貴方が居ます』
………………あ?
『貴方の力を持ってすれば魔族の浄化も不可能ではありません』
俺に世界中を旅して片っ端から魔族を駆逐しろって言ってる?
『肯定します』
冗談じゃない。何で俺がよその神がしでかした尻拭いをしなきゃならんのだ。
『ですが、それですといずれこの世界に住む種族は魔族のみとなってしまいます』
知るか。知るか。滅びるなら勝手に滅びれば良い。
そもそも神が居なければ存在も出来ないなら滅びるしかないよ。仕方ないね。それが運命だよ。
『では貴方はこれどうなさるのですか?』
取り敢えずは引きこもりかな。人類なんかと関わると面倒くさそうだし。
この森に他の人間って住んでる?
『貴方を中心に四方十キロ以内に人影は確認できません』
ハッハッ不幸続きの中で唯一の幸運がこれってのも侘びしい話だがちょうど良い。
俺はこの森で引きこもることにするぞ。
『分かりました。では私は常に貴方と繋がって居ますので必要があれば呼んでください』
了解。了解。
世界さんが居てくれるから寂しくて死んじゃうってこともないね。
それじゃあ人類は頑張って生きてくれ俺も頑張っていくからさ。
「取り敢えずは家を作ることから始めるかー」
家の創り方も鏡と同じでいける?
『問題ありません。細部のイメージが出来ない場合は大まかなイメージを私に送ってください。
残りの部分は私が補完します』
世界さん万能すぎるでしょ。素敵過ぎて惚れるよ?
『私は、あくまで人格を模しているに過ぎません。本来はただそこにあるだけの存在です』
謙虚なとこも素敵だよ。
それじゃあとりあえず作りたい家のイメージを創るから補完お願いするわ。
『分かりました』
とりあえずは西洋風の屋敷だな。和風も嫌いではないが好きに作れるならやはり西洋風にしたいかな。
それで西洋風の中でも特に好きなのがゴシック建築って言われるあれなんだよな。
こんな大雑把なイメージでも大丈夫?
『可能ならば何か元となる建物を投影してくださると助かります』
んー……ならばあれしかないよな。
どうせタダで作れるならばど派手に行こうか。
ゴシック建築の代表とも言えるノートルダム大聖堂で頼む。
『検索開始。ノートルダム大聖堂に該当する情報を獲得。イメージの補完を完了しました。後は再構成を行えば創り出せます』
はやっ! 光回線が亀の遅さに思える速さだなあ。まあ早い分には良いか。それじゃあいくよ。
「再構成!!」
『どうでしょうか?』
「…………」
『何か問題点がありましたか?』
ち、違う違う。あまりに圧倒的過ぎて声が出なかっただけだから。
目の前の木々が光となって消え去って、その光の中から大聖堂が現れるとか神々し過ぎて驚かずには居られないでしょ。、
しかも完璧。完璧過ぎるぐらいに完璧。
一切の欠損が生じていない大聖堂とかもはや本物超えてるんじゃないか?
『貴方の力ならばこのぐらいのことならば大したことありません』
そんなサラっと言われるとこれが当たり前に思えてくるから驚きだよな。
まあ出来る分には問題から良いんだけどさ。
よし、それじゃあ次は内装の変更をしに行こうか。このままじゃまともに住めそうにないしな。
『分かりました』
二人の愛の巣を作ろうね!
『私にはそのような感情はありません』
やっぱり冷たいよね世界さん……