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レグナント・オンライン ~崩壊する理不尽デスゲーム、囚われた 元・最強の『軍団長』は【絶対的隷従】で盤面を支配する~  作者: 水引 結


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第2話 明かされる生存律(ルール)  

 カイは喉元に血濡れた剣の切っ先を突きつけ、平伏するゴブリンを見下ろした。


『 固有権能【絶対的隷従ドミネイト・ルール】が発動可能です 』

『 対象を隷従させますか? 』


 カイは喉を鳴らした。この怪物を殺せば、レベル1の貴重な経験値になる。だが、自分の権能の真価は「支配」することにある。

 カイは迷わず『YES』のウィンドウをタップした。

 直後、ゴブリンの悲鳴がピタリと止んだ。

 怪物の生々しい肉体が、突如として真っ赤な「光のポリゴンデータ」へと分解され始める。それは空中に渦を巻き、カイの展開したシステムウィンドウの中へと、文字通り吸い込まれて消滅した。


『 対象のシステム権限を簒奪さんだつ。隷従化に成功しました 』

『 対象を権能専用領域【隷属檻レギオン・ケージ】に格納します 』

『 対象の討伐時経験値の50%を獲得しました 』

『 隷従特典・対象のステータスの1割を、プレイヤーの基礎値に加算します 』


「……なるほど。力が戻ってくるな」


 システムのアナウンスと共に、カイの身体の奥底からじんわりとした熱が湧き上がってきた。失われていた筋力と感覚が、ほんの僅かだが戻ってくるのが分かる。同時に、視界の隅にある経験値バーが少しだけ上昇した。


「殺した時の半分の経験値は入るのか」


 カイは虚空を操作し、新しく追加された【隷属檻レギオン・ケージ】のメニューを開いた。そこには先ほどのゴブリンが、小さなアイコンとなって格納されていた。


【 ゴブリン / 隻腕 】

[状態:ケージ内待機中(HP・欠損部位は時間経過で回復)]

[コマンド:実体化(召喚) / 帰還 / 遠隔視界共有 / 自立行動]


「生身のまま連れ歩く必要はなし。データとしてシステム領域に隔離しておいて、必要な時に、必要な場所に実体化リポップさせられるのか」


 さらには『遠隔視界共有』という機能まで備わっている。これを使い、小型の魔物を実体化させて解き放てば、自分は安全な場所にいながら、未知のダンジョンの構造や周囲の脅威を完全に把握できる「生きた監視カメラ」として運用できるだろう。

 詳細を確認すると、この権能の「制限」を示す数値が刻まれていた。


『 権能制限:隷従個体には、種族・強度に応じた【統率コスト】が設定されています 』

『 現在の統率力キャパシティ: 1 / 10 (現在レベル:1) 』

『 構成内訳:【ゴブリン】(コスト:1) 』

『 プレイヤーのレベル上昇に伴い、統率力の最大値は拡張されます 』


「なるほど……固定枠じゃなくて、コスト制か。おまけにレベル依存」


 カイは顎に手を当て、即座に思考を巡らせる。

 現在の最大キャパシティは『10』。ゴブリンのような下級魔物がコスト1だとして、迷宮の奥底に潜むような強力なボスクラスのモンスターであれば、1体でコスト50や60、下手すれば100以上を平気で食い潰すだろう。

 今のままでは、そんな化け物と遭遇しても絶対に枠が足りない。強大な魔物を隷従させるためには、自身のレベルを上げ、最大コストを引き上げ続ける必要がある。


「圧倒的な軍団を作るには、俺自身も前線に立ち続ける必要があるってわけだ」


 逆に言えば、この数字がカイに突きつけているのは「編成」の自由度と、冷徹な取捨選択だ。

 コスト『1』の雑魚を限界の10体揃えて序盤の盤面を制圧するか。あるいは、今の最大コストである『10』を丸ごと使って、より強力な単体の魔物を狙うか。状況や敵の能力に合わせて、手駒の構成を最適化していく必要がある。

 さらに、ステータス画面の最下部には、小さくも致命的な警告文が赤字で記されていた。


『 注意:実体化した隷従個体が消滅した場合、当該個体はロストし、プレイヤーへのステータス還元バフは即座に解除されます 』


「……なるほど。使い捨ての自爆特攻カミカゼみたいな真似は推奨しないってことか」


 カイは微かに顔をしかめた。

 ケージの中にしまっておけば、安全に手駒のステータスの1割を自分の力として上乗せできる。いわば「生きた装備品」だ。

 だが、数を頼りに実体化させて前線に出せば、当然死ぬリスクが生まれる。もし戦闘の最中に強力な手駒が殺されれば、その瞬間にカイ自身のステータスが急落し、一気に死地に追い込まれる危険性を孕んでいるのだ。


「前線に出す手駒と、バフタンクとしてケージに温存する手駒。……この采配を間違えれば、一瞬で命取りになるな」


 圧倒的な力には、それに相応しい強烈な制約とリスクが伴う。最高の縛りプレイじゃないか、とカイは血塗られた長剣を払い、静かに鞘に収めた。


 元の世界へ帰る方法はおろか、ここがどこなのかすら分からない。ステータスは初期化され、かつて共に戦ったトッププレイヤーたちすら、次に出会った時に味方である保証はどこにもない。

 そんな極限のサバイバルにおいて、最適な部隊を構築し、そのリスクを管理しながら盤面を支配するこの権能は、間違いなく生存のための最大の切り札になるはずだ。


 カイが次なる獲物を求めて歩みを進めようとした、その時だった。



生存者プレイヤー15名の初期空間への定着、および初回戦闘の突破を確認。 』

『 これより、本世界における【基本ルール】および【クリア条件】を開示します。 』


 脳内に直接、あの冷たい女の声が響き渡り、視界を黄金のテキストウィンドウが埋め尽くした。


生存律ルール

0. 絶対の前提(デスペナルティ)

本世界におけるHPの全損は、生存者の精神(プレイヤーデータ)の『完全なる消滅デリート』を意味する。いかなる手段による死に戻り・蘇生も存在しない。


1. 最終勝利条件

世界各地の「神造迷宮」に隠された『創世のレガリア』を計10個確認。

最初に「3個」のレガリアをインベントリに納めた者を勝者とし、その先の道を開く。


2. PKプレイヤーキルへのペナルティ

他の「プレイヤー」を殺害したプレイヤーには、即座に【大逆の罰(ペナルティ)】が執行される。

ペナルティ:全レベル1へ初期化、および全装備・アイテムの完全ロスト。

※レガリアは殺害によって奪うことはできない。所有者死亡時、レガリアは世界に再配置ランダムリポップされる。


3. レガリアの譲渡

レガリアは、所有者が合意の上でシステム的に「譲渡トレード」した場合のみ、その所有権を移転できる。


「……死に戻りはない。ここで死んだら、本当に終わりってことか」


 突きつけられた『死=完全な消滅』という事実に、カイは低く呟いた。

 それに加えて、他のプレイヤーを直接殺せばすべてを失う重いペナルティ。レガリアを奪うには、相手の『合意』が必要。


 カイは黄金の文字を読み解きながら、唇を噛んだ。

直接殺せないということは、相手に自発的にレガリアを差し出させる状況を作らなければならないということだ。


「……最悪なゲームだな」


 だが、カイの口元には微かな笑みが浮かんでいた。

 他プレイヤーを殺さずに追い詰め、降伏を余儀なくさせる。その一点において、カイの持つ【絶対的隷従ドミネイト・ルール】は、このルールに最も適応した凶悪な権能のひとつだと言える。

 黄金のウィンドウが砕け散り、周囲に再び静寂が戻る。


 耳を澄ませても、聞こえるのは不気味な葉擦れの音と、名も知らぬ怪物の遠吠えだけだ。他の14人のプレイヤーが放つような、強烈な闘気や気配は一切感じられない。

 おそらく、この広大な世界の各地へランダムに転送され、それぞれが完全に隔離された状態で孤独なスタートを切らされているのだろう。


 見えないからこそ、恐ろしい。


 どこか遠く離れた場所で、あの規格外のトッププレイヤーたちが、それぞれの「独裁」と「開拓」を始めているのだ。

 カイはもう一度、鞘から剣を抜き放った。

 来るべき魔物や他プレイヤーとの遭遇戦に備え、戦力を整えなければならない。当面の目標は、コスト上限である『10』を埋め切ること。


「さあ、狩りの時間だ」


 カイは、紫色の森の深部へと、一人足を踏み入れた。



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前の話と主人公の心情が変化しすぎ
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