4. 両想い後編 新しい命の誕生と恋の加速
「マミーナ、君に見せたいものがあるんだ」
いつもそこまで明らかに喜びを見せるタイプではない王子が、ウキウキしているのがわかる。
切れ目の赤い瞳の目じりが下がって、まるで少年のような笑顔を向けてくる。
これは、相当嬉しいことがあったらしい。
王子についていった先に待っていたのは、卵から羽化したばかりの青いドラゴンだった。
青くて真ん丸な瞳でこちらを見ている。
可愛いと思った。
野生のドラゴンとは違い、このドラゴンは王族で飼うことになったらしい。
*
ドラゴンが羽化してから3か月が経ったある日、王子から予想外の提案をされた。
「ドラゴンに乗って、二人で出かけないか?」
わたしと王子がお互いに好きと自覚してからの初めての二人でのお出かけが、まさかのドラゴン周遊になると誰が想像できただろうか?
当日、王城へ行くと、ドラゴンには乗りやすいように手綱がつけられていた。
3か月の間に、可愛いドラゴンの赤ちゃんから、凛々しい姿へと成長していた。
私たちの身長はゆうに越す高さだったが、まだまだ子どもサイズだそうだ。
ドラゴンの手綱を引き、操縦するのは王子。
わたしは後ろに乗せてもらう。
「控えめに飛ぶように指示するけど、君の想像以上の速さだと思うから覚悟しといて。しっかり僕につかまってないと、本当に振り落とされるからね」
と、いたずらっぽい笑みを浮かべる王子。
何度も乗りなれている王子に比べて、わたしは初めてドラゴンに乗るから実際にどうなるのか想像ができない。
ドラゴンに乗るときは、自分に浮遊魔法をかけて王子の後ろに乗った。
王子に後ろから抱きつく体勢がとても恥ずかしい。
彼の引き締まったお腹に、控えめにわたしの腕を回した。
すると、王子はわたしの両手を掴んで、ぐっとよりきつく私の手を王子のお腹に巻き付けてきた。
私の顔は王子の広い背中に当たっている。
王子の体のぬくもりや筋肉の硬さを感じてドキッとする。
こんな風に接触することが今までなかったから、急に男性らしさを感じでドキドキしてしまう。
王子は後ろを振り返り、
「じゃあ、振り落とされないように頑張って」
と言うと、ドラゴンがふわっと空中に上がり、ぐわーんと一気に上昇していく。
わたしは自分のドキドキなんて吹っ飛んで、必死に王子につかまった。
それどころじゃなかった。
速すぎて、意味が分からない。
直角に上昇したと思ったら、次は一直線に猛スピードで進んでいく。
空気が顔にぶつかって、自然と涙が出てきた。
風の音で何も聞こえないし話すこともできない。
なんとか必死にしがみつくことしか私はできなかった。
はっきりいって、これは周遊などではない。
そんな余裕はどこにもなかった。
これは、王子がわざと速く操縦しているのか、それとも、ドラゴンにとってはこれがゆっくりなのか。
あっという間にサーラーン王国の大自然のが広がるエリアまで来てしまった。
それにしても、ドラゴンのエネルギーはすさまじい。
一気にここまで来ることができるなんて。
ドラゴンのスピードが急に遅くなり、大自然のエリアをゆっくり飛んでくれるようになった。
さっきまでドラゴンの振動で王子の体がぐっと力んでいたが、今は体を少し楽にしているように感じた。
王子の筋肉の動きから、男らしさを意識してしまう。
わたしも体の力を抜くことにした。
王子にしがみついていた手も少し緩めて、今なら話せるかもと思い、王子に伝えた。
「ドラゴンって本当に速いんだね。冗談抜きで、振り落とされるかと思った。」
「まだまだ訓練中なんだ。でも、これでもコントロールできている方なんだ。」
王子はドラゴンをトントンとたたいて、ねぎらっているように見えた。
「今の季節は自然がイキイキしていてきれいだね。」
わたしと王子は上空から自然を満喫した。
「マミーナ、あのさ…ちょっと手をもう少し上にもっていってくれないか?」
ん?
わたしはよくわからないけど、彼の声に従う。
「ちょっと…マミーナの手が当たりそうで……俺がハラハラしてしまって…」
この人は何を言っているのか、一瞬理解できなかった。
あっ…
そうゆうことか……
すっごく恥ずかしい。
こんなことを王子に言わせてしまった…
わたしは恥ずかしくて思わず彼をぎゅーっと後ろから抱きしめて、わたしの顔を彼の背中にうずめた。
私が急に強く抱きしめたから、王子もビクッとした。
だって、だって、どうしたらいいかわからないもん。
もう、どうにでもなれ!
「ちょ、マミーナ?」
王子がとまどっているのが伝わる。
「ごめんなさい。…次からはちゃんと…意識するから」
「……うん。俺も、もう少し冷静でいられるように努力する」
意識するからって、わたしは何をどう意識するんだ?と、言っていて自分で恥ずかしくなる。
王子も冷静でいられるようにって言っちゃってるし…
あーもう、頭と心臓がパンクしちゃうよ…
王子が男性なんだと、異性なのだと、思わざるを得ない瞬間だった。
この番外編は構想が頭の中に会って
ずっと書きたくてうずうずしてました(笑)




