6-4.
昨日の記憶をだんだん思い出してきた。
そうだ、わたし小さくなってしまって、王子の家で預かってもらったんだ。
ソファで寝かせられないと言って、ベットに運ばれて…
今晩は戻らないから大丈夫って言ってたのに、だからベットで寝ることにしたのに…!
頭の中でぐるぐる考える。
ソランティア王子はというと、ふぅーとゆっくり息を吐き、顔は窓の方を向いて横になり続けている。
婚約者のいない彼と私が何もなかったとはいえ、一夜を共にしたということがバレたら1番大変なのは彼自身だと思うのだけど…
まず、助けてくれた?ことに変わりはないから、感謝を伝えよう。
「昨日は、わたしを安全なところで休ませてくれてありがとう」
「小さくて可愛い君を独り占めできて、僕は楽しかったよ」
そんなこと言われて平気でいられる人いるの?
すっごく恥ずかしいんだけど…
「ね、そろそろ起きていいかな。さすがにこれは良くないんじゃない」
「これって?」
彼は少し顔を上げてニヤッと笑ってわたしに聞いた。
こんな時も余裕かましてるし…
手慣れてるわ。
もしかして、女の子みんなにこんなことしてるの?
とぼける王子にわたしは思っていることを伝えた。
「だって、一国の第二王子が、どこそれの女の子と一夜を共にしましたってまずいでしょ。何もなかったとはいえ。」
「説明をしたらわかってくれるよ。僕がふしだらなことをしないってね」
そう言って顔をこちらに少し向けて、ウインクをする王子。
わたしは緊張で心臓がバクバクしていて、一刻も早く離れたいのに…
調子に乗ってるとしか思えない。
さっき起き上がろうとしたらわたしの腰を抑えていたけれど
「さすがに、もう無理ー!」
そう言うと、彼はすんなりと手を解いてくれたので、わたしは無事に起きることができた。
ソファへ行って、そこに腰掛ける。
とりあえず、離れることができて緊張も少しは和らぐはず…
とバクバクしたわたしの心臓に、早くおさまれ〜!と言い聞かせる。
あらためて見渡すと、本当にすごく広いお部屋。
家具も上質なのが伝わってくる。
豪華すぎない、けれども上質で、センスのいい部屋だと思った。
所々に緑のテイストがあり、緑で統一されてるみたいだ。
ベットに横になり続けるソランティア王子。
王子は朝が弱いのかな?
ベージュ色のシルクのパジャマを着ている。
あの柔らかい手触り…
そして、抱きついてたわたし…
思い出した瞬間、顔が一気に熱くなった。
もうやだ、わたし何してんの…!
とにかく顔を隠したくて、両手で覆ったまま、窓の方へ逃げるように歩き出した。
この赤くなっている顔を何とか隠したい。
後で、もぞもぞ音がした。
王子が起きたみたいだ。
ベットに座り、足は床に下ろした体勢でわたしの方を向いている。
「さっかくだから、朝食を食べていかないか?お腹、空いてるだろ?」
声をかけられて彼の方をみると、ベージュのシルクのパジャマをサラッと着こなしている姿が目に入った。
パジャマの胸元から少し見える鎖骨がまぶしくて、思わず目を逸らす。
本人はきっと何とも思ってないんだろうけど、なんでそんなに自然体で色気を振りまけるの…?
いつもと違うからかな、ドキドキしてしまう。
「わたしが一緒に食べるなんて、迷惑になっちゃうよ。寮に帰ってから食べるから大丈夫。いきなりわたしが現れたら、ご両親もびっくりしちゃうよ」
「全然迷惑にならないから大丈夫。父も母も、君に会ったら喜ぶと思うし。ぼくも一緒に食べられた方が嬉しいよ。あ、父と母のためにね。僕から状況は説明するなら大丈夫だよ。」
食べないか?と優しく提案してくるが、どんな返答をしたとしても、結局は王子のしたいように話が進んでいる気がする。
そして、ちゃんと父と母が喜ぶから僕は嬉しいのだと念押ししてくるところも、さすがである。
彼は部屋の横にあるシャワー室で着替えると、わたしを連れて部屋を出た。
すれ違う執事やメイドたちは、まるでわたしの存在が“予定通り”かのように自然に微笑んで通り過ぎていく。
この家の人たち、ちょっとやそっとじゃ動じないらしい。
さすが王族のプロ集団だ。




