6-2.
「なに?元に戻す魔法が…効かない?」
「どういうことだ。」
「わたしの魔法が…こんなことに…ほんとにごめん…」
「魔道具の鏡に当たって、魔法が反射されたんです。おそらく、その時に魔法が変質してしまったんでしょう。」
戦いが終わったら、元の姿に戻れると、たかをくくって王子の胸ポケットの中で呑気に感心している場合じゃなかった。
元の大きさに戻る方法がわからないなんて…
「ソランティア王子、少し残ってくれるか?」
隊長はそう言うと、皆に向き直った。
「みんな、任務お疲れだった。遅くなったな。すぐに宿舎へ戻って休んでくれ。」
「ありがとうございました!」
転移魔法で仲間たちが順に姿を消していく中、隊長は続けた。
「王子、マミーナを今晩、預かってくれないか?」
「彼女の白魔法の発現は、国家機密だ。最近、聖獣の異変も報告されている。彼女は今、小さくなって魔力も不安定だ。守りが必要だろう。」
「……わかりました。私も提案しようと思っていました。一番安全な場所で、休ませます。」
「確かに少し魔法が変わってしまったが、おそらく、小さくなる魔法は数日で解けるだろう。その間、彼女の護衛を頼む。」
「わかりました。また報告します。」
王子は胸ポケットに手を差し入れ、そっと私を包み込むと、ふわりと転移魔法の気流が体を包み込んだ。
「顔を出してはいけないよ。誰がどこで君の隙を狙っているかわからない。」
そうやってわたしの頭を撫でて、私にささやくとポケットの中に座るように促された。
「おかえりなさいませ、ソランティア様」
真夜中にも関わらず、執事や侍女が待っていた。
「ただいま。今日は疲れているから、すぐに寝るよ。夜遅くなのに、お迎えをありがとう」
王子は自分の部屋へ向かってスタスタと王城の中を歩いていく。
部屋に入ると、わたしをポケットから出して、ソファに座らせてくれた。
「この格好でお風呂に入るのは難しいから、魔法で綺麗にしちゃおうか」
そう言って小人のわたしに、身を清める魔法をかけてくれた。
お風呂の後のようなスッキリ感だ。
服も綺麗になっている。
「ありがとう…」
私は一人責任を感じてしまう。
なにやってるんだろう。
もっと強くなりたいと思って、討伐戦に参加したのに、迷惑かけちゃってるし…
落ち込んでしまう…
「大丈夫だよ。君はちゃんと元に戻るから。今は、安心して休んで。」
伏し目がちのわたしに気づいたのか、王子が優しく声をかけてくれた。
「うん…」
「1番安全なところを考えたら、僕の部屋なんだけどいいかな?」
「え…?王子の部屋ですか?」
一気に鼓動が速くなった。
さすがにそれはまずいのでは……?
「何かあったとき、僕がそばにいたほうが安心だから」
王子の真剣な表情に、私は小さくうなずくしかなかった。
「さてと、僕はお風呂に入ってくるから君は先に寝て休んでて」
そう言ってわたしをソファから持ち上げようとした時、私は慌てて声を上げた。
「待って、ソファで寝るから大丈夫」
「ダメ。いつ元に戻るかわからないんだよ。レディをソファで寝かせるなんて、僕にはできないよ」
「でも、この魔法の効き目はおそらく48時間なんでしょ。だから、今晩は戻らないからソファでも大丈夫」
「ダメ。ベットでゆっくり休んで。」
彼は笑顔でそう言いながらも、絶対に譲らない雰囲気だった。
仕方なく頷くと、私はベットへ運ばれた。
大きなベッドの片隅に、私はちょこんと置かれた。
「おやすみ。ゆっくり休んでね」
頭をやさしく撫でた後、王子はバスルームへと消えていった。
天井の高さも、シーツの感触も、すべてが異世界のように感じられた。
私はそのまま、夢の中へと落ちていった。




