妖精姫はキューピッド 3
二話続けて投稿しましたので、「2」を先に読んでください。
キリがいいところで切ったので今回は短いです。
やると決めたら即行動が私のいいところ。
それから三日後、再びルフタネンを訪れた私は大型商業施設に出店する若手デザイナーの店に行くためにケイトと一緒に精霊車に乗った。
私の精霊車だから無駄に広い。
ネリーやレックスはもちろんケイトの侍女も一緒だけど、いつもの窓際の席に座っているのは私とケイトだけ。
コイバナをするのには絶好のシチュエーションじゃない?
「そういえば最近、あなたを紹介してほしいって話がいくつもきているの。うちの息子にってお話もあるのよ」
ちょっと唐突すぎたかな。
ケイトはお茶を飲もうと伸ばした手を引っ込めて、ハンカチを握りしめながら窓の外を眺めるふりをして目をそらした。
「あ……それは、あの」
今日は明るい色のドレスなので、艶やかな黒髪がとても引き立っている。
ほんのり化粧した顔は可愛らしくて、見た目だけではバリバリ仕事をするタイプとは思えない雰囲気だ。
「父のほうにも……ありがたいことにお話をいただいています。でも私は仕事が楽しくて」
「誤解しないで。まだこれから大型商業施設も温泉ホテルもオープンする大切な時期なんだもの。今すぐどうこうって話じゃないのよ。あなたが仕事をやめてしまったら私が困ってしまうわ」
「そう言っていただけると光栄です。私もまだまだディアドラ様の元で働きたいんです」
戸惑っていた表情が消え、表情が明るくなった。
うーん、もしかしてキースなんてまったく眼中になかったりして?
「将来的にはどうなの? 結婚する気はあるの?」
「はい。私が婿養子をもらって男爵家を継がないといけません」
「そうかな。コンロン男爵はまだまだ元気だし、こういっては悪いけど領地があるわけでもないでしょ? 嫁入りしたっていいじゃない。子供のひとりに男爵家を継がせればいいのよ」
むしろ子供からしたらありがたいはずよ。
次男でも男爵になれるんだから。
「私のところにくる話は、爵位目当ての婿養子の申し込みばかりですよ。ディアドラ様と親しくしているという噂が多少は広がっているみたいで、最近はそれなりの身分の方からもお話がきますけど、社交界デビューもしていない私では……」
「は?」
社交界デビューがまだ?
「なにそれ。初めて聞いたわよ」
「……あ、そうでしたか。うちはお金の問題がありましたし、貴族といっても領地もありませんし」
「そんなことはどうでもいいわ。いやどうでもよくはないけど、そんなのは昔の話でしょ」
「で、でも、この年で今更……」
コンロン男爵は何をしているんだ?
キースは?
そもそも領地を放置していたあいつのせいなんじゃないの?
「社交界デビューは私に任せなさい」
「え?」
「イースディル公爵家の夜会でデビューしてもらうわ。いえ、あなたのために夜会を開くわよ」
「えええ!?」
社交界デビューのための夜会や舞踏会はどの家も力を入れるから、その家の財力も人脈もはっきりとわかってしまう。
だから男爵家や子爵家、伯爵家でも財力のない家は合同で舞踏会を開催するのよ。
それも無理な家は、知り合いや親せき等にお願いして、そちらの家で行われる夜会や舞踏会で社交界デビューをするの。
だったら、上司である私が主催した夜会でケイトが社交界デビューしても問題ないでしょう。
一生に一度、そこでどれだけ注目されるかで今後の人生にも影響があるんだから。
そうやって考えると、帝国が新年の祝いの席で成人したすべての貴族のデビュタントを行うのは、とてもいい習慣だと思うわ。
「あなたが控えめで優しいのは長所だけど、でもね、チャンスと幸せは自分で掴み取るものよ。他の人を犠牲にしたり押しのけたりするのは駄目だけど、遠慮して幸せを自分から逃すのは一番愚かだわ。結婚相手もそうよ。申し込まれた人から選ばなくてはいけないなんて決まりはないの。いいなと思う相手がいるのなら、口説きにいくくらいの気概がなくちゃ」
「それは無理です。く、口説くなんてどうすればいいかわかりません」
だよね。
言ってて自分でも無理だと思ったわ。
私もたぶん出来ないし、口説くというより脅すになっちゃいそう。
「ま、まあそうよね。待っているだけじゃ駄目よって言いたかったのよ」
「はあ」
「いいなと思う人はいないの?」
「それは……」
答えにくいかー。
最近はよく一緒に行動するようになって、冗談も言い合うようになったとはいっても、私は雇い主だからなあ。
身分もだいぶ違うし。
「うーん。例えばカミルみたいなタイプはどうなの?」
「か、考えたこともありません!」
「浮気を疑っているわけじゃないから、そんなに慌てないで。それと身分とかを考慮するとありえなくなるかもしれないんで、純粋に見た目や性格的に、ああいうタイプはどうなのかなって」
「カミル様はディアドラ様以外の女性には冷たいので、怖い印象が強くて」
あの身分と外見なのに、意外とモテないのはそのせいなのよね。
「じゃあキースは?」
「え?」
お、ちょっと顔が赤くなってない?
「家柄的にも年齢的にも釣り合っているし、見た目も悪くはないでしょ。あ、領地を放置していたような男は嫌かな」
「そんなことはありません。でもあちらは由緒ある伯爵家の御子息ですし、イースディル公爵様の側近ですよ」
「あなたは妖精姫の側近でしょ」
「……側近?」
そうか、世間的にもただの使用人と思われているから、あまりいい縁談がきていなかったのか。
「社交界デビューの時に私の側近だということも、温泉旅館で重要な仕事をしているということも発表しましょう」
「ええ。そんな……いいんでしょうか」
「で、キースはどう? 嫌い?」
「嫌いじゃないです」
「見た目的には、ああいうタイプは?」
「す、素敵な方だと……思います」
脈ありなんじゃないの?
いけるでしょ、これは。
「あ、なにも無理にキースとどうこうって話じゃないわよ?」
「え……は、はい。わかっています」
「他にも素敵な人はたくさんいるんだし、紹介してほしい人はいない?」
「いえ、特には」
「キースがいいんだ」
「え!?」
おおお、真っ赤になっている。
ケイトはキースが気になっているって、これで決まりでしょ。




