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九章 宣戦布告・十

次の日。

私はまたポテチを持ってカイの家——アロイスの部屋に来た。

ちなみにポテチは大袋の塩味だ。


「いらっしゃい、セリー!」 


ドアを開けたら可愛い笑顔のマユキが迎えてくれた。

「ありがとー、マユキー(はぁと)」

私はぎゅっとマユキを抱きしめ、マユキも嬉しそうに抱きついて来た。

「ねぇ、セリ。俺は?」

マユキの後には拗ねた顔のアロイスがいた。

「アロイスにはこれ。はい」

私は右手に持っているスーパーの袋をちょっとだけ上げた。中にはポテチが入っている。

「ええー。ポテチは嬉しいけど俺にもマユキみたいな挨拶してくれないの?」

「えっ……。それは無い、無いから」

私は嫌だなという顔で軽く頭を振る。

「ちぇー、セリの意地悪。でもまあいいよ、今は、ね」

意味深な微笑みをしながらアロイスは引き、長椅子に座った。

めっちゃ気になるけど今はそれどころじゃない。私はマユキにベッドに行く様に促し、その隣に座り、袋からポテチを出して開ける。

テーブルの上に用意されているカップに、ポテチと一緒に持ってきたペットボトルの烏龍茶をいれる。油物にはさっぱりのお茶がいいと思うわけで。アロイスもマユキも烏龍茶は大丈夫だったので今日も持ってきた。


テーブルにおやつの準備も整ったので、早速明日の御前試合の話し合いを始めた。

そう、明日、明日なんだよ! それなのにまだこんな話し合いだなんてもう終わってる……。

だけど! だからこそいい考えがひらめいた。昨日、お風呂に入っているときにひらめいたことを早速二人に話す。


「あのね、明日の試合なんだけど、私、悪役になろうと思うの」


「「悪役?」」


アロイスとマユキがきょとんとした顔になって私を見る。

「うん。昨日までは勝っても穏便に婚約者の座を辞退しようって話したじゃん。これ以上余計な揉め事増やしたくないからね。でもよくよく考えると、私がそんなに気を使う事ないよなって思ってさ。だって散々酷い目にあってるんだから、こっちも酷い目にあわせればいいかなって。元々私、こっちの世界の住人じゃないしね。色々やらかしても別になーって思って。そしたらもうなんか、色々どうでもよくなって。それになんかあったとしても、アロイスやマユキが助けてくれるでしょ?」

私は軽くおねだりする様に言ってみた。

そしたら二人は顔を見合わせて笑い出した。

「ははっ! 当たり前じゃん! セリからのおねだりなんて叶えるに決まってるし」

「うん。僕もセリが言うこと、なんでもするよ!」

「よかったあ」

私はほっと息を吐いた。二人ならそう言ってくれると思っていたけど、もしかしたら嫌だと言われる可能性もあるわけなので。

「で、セリはどうしたいの?」

アロイスが、長椅子から身を乗り出す。

私は持って来た自分専用のペットボトルの緑茶を開けて一口飲んで気を落ち着かせる。

「うん、あのね、まずは皇子達のプライドをへし折りたい。面子を潰すっていうのかな? 私が皇子達が手配した剣士、騎士? より強い剣士を連れてくの。それだけであっちのプライドってキズがつくと思うんだよね。で、私が勝ち上がっても皇子と結婚はしません宣言して、皇子はクロード王女と結婚の約束をしてるからその邪魔はしません、祝福しますって言うの。でも勝ったのは私だから、皇子の結婚相手は私だって言われたら、その場合、私は国民から税金を搾り取れるだけ取って、贅沢三昧で暮らします、だって国民は皇族の言うことを聞くのは当たり前で逆らうなら殺せばいいって皇子達に言われたからって言うの。それでも結婚させられそうになったら逃げればいっかなーって。それだけ言われても国民が皇族の言うこと聞くならもう何言っても無駄だしね。なら私は逃げるだけ。……どうかな?」

真剣な顔で話を聞いているアロイスは少し考えている様で、黙ったままだ。なら、ついでに問題があることも言っちゃおう。

「でもね、この案を実行するのは難しいんだよね。だってあと一日もないのに凄腕の剣士なんて見つけられないじゃん。仮に見つけられたとしても雇えるお金もないし。それに、こんな子供に雇われてくれるとも思えない。だからまあ、用意された剣士は倒しちゃってあとは自力でどうにかしようかなーと思ってるんだけど。……アロイス?」

アロイスはまだ少し考えている様だけど、少し下に落としていた視線を私に向けるとキラキラとした笑顔を見せた。

「いいね、セリ。それいいよ! うん、その案にしよう」

「え、でも私お金ないからどうすれば……」

自分で言っておきながらなんだけど、この世界のお金なんて持ってない。

「大丈夫大丈夫、セリはお金なんて気にしなくていいよ。俺が持ってるし、いざとなればマユキの鱗でも売ればいいんだし。なあ、マユキ?」

「うん。セリのためなら鱗でも爪でもあげるよ」

「マ、マユキ!? そんなの駄目駄目! 絶対に駄目だからね!」

私は慌ててそんなことはしないように釘を指す。

「アロイスもっ! そんなことマユキに教えないでよね!」

私は左隣に座るマユキをぎゅっと抱き寄せ、向かいのアロイスを軽く睨む。

「え、ずるい。なんでマユキばっかりセリにぎゅってされるのさ」

「え、アロイスが変なこと言うからじゃない」

「酷い。普通のことを言っただけなのに」

「はいはい。それで、剣士のあてはあるってことでいいの?」

「うん。とびっきりのやつ、連れてくるよ」

拗ねた顔をしながらもアロイスは答えた。

「わかった。じゃあ、よろしくお願いします、アロイス」

私はちゃんとアロイスの顔を見てお願いした。

「うん、わかった。任せてよ」

アロイスは笑顔で答えてくれた。

「でも、本当にタダでいいの? 何かできることがあればするけど……」

アロイスがいいよと言ってくれても、やっぱりタダでお願いするのは私的にはすごく申し訳ないのでお金以外でできることがあれば手伝いたい。

「うん、気にしなくていいよ。あ、じゃあセリの世界のお菓子、こっちに来るとき持って来てよ」

「え、それだけでいいの?」

お菓子でいいなんて、安すぎじゃないの?

「いいんだよ、それで。俺達からしてみれば、異世界のお菓子なんて食べるどころかお目にかかれるようなものじゃないんだ。食べれるだけで、今回かかるだろう費用なんて帳消し以上だよ」

アロイスはにこにこ笑顔で答えた。

まあ確かに言われてみればそうだよねとも思う。こっちの世界じゃ絶対に味わえないようなお菓子なんて山程あるし、食事もそうだろうなあ、と思う。

「わかった。こっちに行くときはなんか持ってくるよ」

なるべく、と心の中でつけたした。無いときは結花ゆいかさんとお菓子作りをしてそれを持ってこよう、うん、そうしよう。だって割けるお小遣いには限度があるのだ。

「よし。じゃあ当日はどうなるかわからないから、大まかな流れだけ決まればいい。流れはセリの言った通りでいい。あとは明日の朝、ここに来てから確認しよう。その方がいいだろう、セリ」

「そうだね。もう今私ができることなんて無いもん」

明日のために、軽く剣の稽古をするぐらいしか思いつかない。それならもうとっとと帰ろう。

私はくっついているマユキの肩を軽く叩いて「じゃあ帰るね」と声をかけて離れるよう促す。

マユキはぎゅっと強く抱きついてから「うん」と言ってしぶしぶながら離れた。あああー可愛い! 上目遣いで拗ねた表情とかっ! 可愛いけど、連れて帰りたいけどぐっと我慢我慢で我慢して立ち上がってドアの方に移動した。

「じゃあまた明日ね、アロイス、マユキ」

「うん、また明日ね」

「またきてね」

「うん」

私は二人に挨拶してドアを開けた。


開けた先は家の玄関だ。

家に入ってリビングの時計を見ると十七時四十分ぐらい。まだお母さんも帰ってきてない。ならおじいちゃんの家に行って軽く稽古してこよう。私は部屋に入って着替えると、おじいちゃんの家に向かった。

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